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嘘つきの異世界魔王譚  作者: 紅葉 咲
異世界 1日目
8/33

自己紹介

 うっそだろおい・・・・!!


 なんでよりによってあの一つ目ガチムチ巨人が俺と同じ『班』なんだよぉぉおお!!


 「まざがおめ゛ーど同じ班になるどはな゛ぁ!! いやぁ嬉しいな゛ぁ!!」


 こっちは全然嬉しくねぇよ!! なんで!? なんでこいつさも友人のように俺に絡んでくるの!? 気持ち悪い通り越して恐怖なんだけど!!


 大体俺はいつこいつの好感度上げたんだ!? 初対面の時なんかおまえ俺に殺気だしてたじゃん!


 ていうか俺の横に立つな! 圧迫感あっぱくかんが凄いんだよガチムチがぁ!! 


 「そうだな! まさに奇縁ってやつだ! 【これから仲良くして行こうぜ】!! あととりあえず離れてくれないか?」


 「あ、あのさ? なんかあんたらが盛り上がってるとこに水差すようで悪いんだけどさ? とりあえず自己紹介しないか?」


 フルウが助け船を出してくれた。いい奴だなこいつ! ここは全力でのっかろう!


 「おっ。そうだな! んじゃとりあえずみんな座ろうぜ?」


 とりあえずガ席に俺はいそいそと座る


 すると他の奴らも俺に習い近くにある椅子に座った


 なぜかガチムチが俺の横に座る


 ふっざけるなぁ!!!


 「・・・・よしじゃぁ、サチュから自己紹介な!」


 「え!? この流れで私!?」


 とりあえずサチュに話を振る


 ガチムチは無視だ無視!! 


 「俺は気配りできる奴だからな。一人でどうすればいいかわからずにキョロキョロしてる奴にも積極的せっきょくてきに発言できる場を作ってやるのさ!」


 「なるほど、有難迷惑ありがためいわくってこういうことを言うのね!!」


 サチュが3つある目で俺を睨む


 未だになれなくて少しビビる俺がいる・・・


 「あのさぁ・・・。あんたらが仲いいの分かったからとりあえず初めてくれないかしら?」


 赤い髪を腰まで伸ばした女があきれたように言う


 「あ、すみません。私は『サチュ』という名前です。ご存じのとおり【アイズ族:三つ眼】の魔物です。えー、よく面倒見がいいねと褒められます。これから皆さん、宜しくお願い致しますね」


 存じてねぇよ。てか、それ俺に初めて自己紹介じこしょうかいした時と同じ文じゃね? なに自分の自己紹介を手抜きしてんだよ


 そしてサチュが自己紹介を終えると、その隣に座っていたフルウが立ち上がる


 「俺の名前は『フルウ・ストービー』。【人狼じんろう族】だが、戦闘経験せんとうけいけんはないから戦力として期待しないでくれ」


 そう言ってすぐにフルウは座った


 安心しろ。誰も初めからお前に期待なんかしてねぇから


 次に厚着女が立ち上がる


 「私は『カナ・ナイグ』誇り高き【龍族】の民だ。槍の扱いならそこらの奴に負ける気はない。体術もそこそこ覚えがある、手合わせがしたいならいつでも言ってくれ」


 すげぇ・・・。誇り高きとかいうやつ初めて見た。恥ずかしくねぇの?


 てか名前『カナ』って言うのか。やっと名前が分かって良かったぜ


 カナの次は先ほど発言した赤い髪の女が立ち上がる


 うわ胸元スゲーあいてる服着てんな。しかも巨乳か

 

 まったく・・・・。貧乳派の俺からしたら整っている容姿のぶん残念でならないな


「『アミュル・ベアー』。あたしは【淫魔族】よ。淫魔っていっても誰にでも抱かれる女ってわけじゃないから、そこのところはよろしくね。因みにこの中ならあなたとあなたにならギリギリ抱かれてあげてもいいわよ?」


 そう言って赤い髪・・・『アミュル』はガチムチ以外の男、つまり俺とフルウを見る


 こいつ頭大丈夫か?


 俺がどん引きしているとアミュルはいってやったと言わんばかりにドヤ顔しながら座る


 次に背中からちっこい羽を生やした少女が音もなく立ち上がる


 「・・・・わた・・し・・・・・名前・・・・『スズネ』・・・・。【鳥人・・・・・族:夜鳥】・・・・・。よろ・・・・し・・・・・く・・・・・」


 なに? 死にそうなの君?


 「おでは【アイズ族:1つ眼】で『ンダミス・マッシュ』どいうだ! 力仕事なら任せてけろ!! 皆ぁ!! ごれがらよろ゛じぐな゛ぁ!!」


 うるせぇ。突然立ち上がるな。少女まだ座ってねぇだろ


 こうして皆の自己紹介が終わった


 すると6人が一斉に俺を見る


 「? どうした?」


 「どうしたじゃないだろ。次、お前の番だぞ?」


 「そうよ。あなた見た所目立つような特徴ないんだからどんな種族か分からないのよね」


 フルウとアミュルが俺を急かすように言う


 サチュは2人に急かされる俺を心配そうに見ている


 ・・・・・・・・・・・・・さて。このサチュを抜いた5人をどう騙すか


 「・・・・わかったよ」


 俺はけだるそうに立ち上がる


 「まず俺の名前は『シント・ブスジマ』だ。【俺はこう見えて特殊な魔物で、特徴がないのが特徴の魔物なんだ】」


 とりあえずいつも通りの【嘘】を吐く


 「特徴がないのが特徴? そんな魔物見た事も聞いた事もないぞ?」


 ここで最初に食い付いたのは厚着女ことカナだった


 「それはただお前が見ても聞いてもいないだけだ。現にサチュとそこのガチム・・・『ンダミス』? は俺の事を知っている」


 ここで俺はこの【嘘】であらかじめ騙されている『ンダミス』と事情を知っている『サチュ』に話しを振る


 「お゛ぉ? 確かにおではおめーが特徴がないのが特徴の゛魔物だとはしっでるが?」


 「は、はい。シントさんは特徴がないのが特徴の、それはそれは珍しい魔物何です!!」


 これで俺は少なくとも[一人でなんか変なこといってる奴]から[何人かはそれを事実として認識にんしきしている奴]になれた


 【嘘】も1人より多くで付く方が信じ込まれやすいんだ


 ま、ンダミスは【嘘】を《真実》と誤認ごにんして言ってるから悪気はないんだがな


 「へー。シントって案外スゴイ奴なんだな」


 ここでフルウもその【嘘】を信じ込んだ


 「あぁ。【因みに俺と同じ種族の魔物はこの世界にごく少数しかいない。だからたぶんお前らの知り合いには俺みたいな魔物はいないだろうし、この戦争にも俺しか参加してないだろう】」


 質問される前にその質問の回答を言っておく


 後でとやかく言われてボロが出るよりここで自分から言った方が効率が良いし怪しまれにくい


 「確かにお前のような特殊な種族は私の知り合いにいないし、この拠点で見かけた事もない。だが今は人間との戦争中だぞ? 魔物達が人間と戦う為一致団結しているのになぜお前の種族はお前しかいないんだ?」


 カナはなおも俺に疑問をぶつける


 なるほど。確かに魔物全員が力を合わせてるのに俺の種族だけ参戦してないのはおかしな話か


 「【俺の種族は基本戦いを好まないし、そもそも強くない。だからたぶん、俺の種族は戦争が始まるや否や逃げたんだろうな】」


 「なんだと? この戦争は私たち魔物全種族の未来に関係ある事なのだぞ!?」


 カナはテーブルに手をつき立ち上がる


 怖い


 「それは分かっている。だが、【俺の種族は少数だと言う事を思い出してほしい。例えばお前の種族・・・えーっと】」


 「【龍族】だ」


 「【龍族】がこの世界に10000いたとしよう。でだ、一部の地域で戦争が起きた。そこではその地域に住んでいた100人お前の【龍族】が全滅したとしよう」


 「私たちはそんなにやわじゃない!!」


 叫ばないで下さいとても怖いです


 「例えばの話だ。で、その地域は全滅して【龍族】が100消えたとしても世界で考えれば10000いたのだから100消えてもおまえらの種族は全体の100分の1しか消えてない。これは簡単に言えばこの戦争でお前ら地域の【龍族】が全滅したとしても、世界で考えれば100人中1人しか死んでないということだ」


 「・・・つまり、ここにいる【龍族】が全滅したとしてもこの世界にはまだ沢山の【龍族】がいるとお前は言いたいのだな?」


 「そうだ」


 「その話と今話してることとで何か関係があるのか!?」


 だから叫ぶなって。皆怖がってるだろ?


 「そう怒るなよ。今から説明してやる。まず俺は少ない種族だと何回か言っただろう。世界で見ても100いるかどうかだ。で、今まさにその少数の種族がここに1人いる。俺だ」


 「お、おう。お前そんなすくねぇ種族なのか?」


 フルウが発言する


 「黙って聞いとけ。でだ、もし俺がこの戦争で死ぬとしよう。すると100人から1人消えて99人になる」


 「だからなによ。単純な引き算じゃない」


 『アミュル』が俺を不思議そうな顔をしてみる


 「ばかやろう。この1という数字がどれだけでかいのかわかんねぇのか?」


 「はぁ?」


 「さっきの【龍族】は100人消えてやっと全体の1がいなくなったようなもんだが、俺の種族は俺が一人消えるだけで全体の1が消える。俺1人消えるだけで【龍族】100人消えたダメージがおれの種族に入ってしまうんだ」


 「・・・・?」


 カナが首をかしげる


 ついでにガチムチも首をかしげる


 ガチムチがやっても可愛くねぇんだよとキレそうな気持ちを抑える

 

 「・・・簡単に言えば、【俺はお前の種族100人分の命と同じってことだ】」


 「!? ほ、本当か!?」


 ここで初めてカナの驚く声を聞く


 「【あぁ。だから俺だけでもこの戦争に参加するのは俺の種族にとっては結構な痛手になるんだよ。ましてや10も20も俺の種族がこの戦争に出てしまい運悪く全滅してしまうと、それは俺の種族の終わりを意味してしまうんだ。こんな一つの戦争で種族が一つなくなるのも魔物側にとっても大損だろ?】」


 「確かに」


 「【だから俺と同じ種族は俺以外、種族を次の世代に繋ぐために逃げてるんだよ】」


 「なるほど。すくないとそれだけで1つ1つの命の重みが違ってくるのだな」


 「【そのとおりだ。だからこの戦争には残念なころに俺しか参加ができなかったんだ】」


 「そうだったのか。そんなお前の種族の事情も知らずに責めるようなことを言ってすまなかった」


 カナは思っていたよりも素直に頭を下げた


 「いやなに。こんな状況だ。お前の怒りももっともだと思う。だがわかってほしい、【俺の種族も生き残ることに必死なんだ】」


 「あぁ心得こころえたさ。そんな状態でお前が来てくれただけでも敬意けいいを見せるには充分だ。お前の種族はちゃんと他の魔物たち同様戦争に力を貸してくれている」


 「【そう言ってくれるととても嬉しいよ】」


 そして俺はもう話は終わりだと言うかのように椅子に座る


 ・・・・・こうして、全員の自己紹介が終わった


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・え? このあとどうすんの?


 皆黙ってるけどなに? もしかしてこの後ノープラン?


 ・・・・・・・・この沈黙きついって!!


 「・・・・・あんのよ゛」


 そうして1分か2分たった後、以外にもガチムチの『ンダミス』が声を上げた


 「ん!? どうした!?」


 俺はこの沈黙に耐えるのが嫌すぎるので全力で応じる


 「腹減ったがら皆で食堂いがねが?」


 マイペースすぎるだろこいつ!?


 もしかしてこいつ空気読めないのか!?


 だが、この沈黙の空気でその提案は悪くない!!


 「お。いいな。【俺もちょうど腹が減ってたんだ。】皆もいいか?」


 俺は皆に同意を得るように聞く


 「いいぜ」


 「あぁ。いいぞ」


 「はい!」


 「わかったわ」


 「・・・・・・・うん」


 皆もこの空気を変えたいのかこの意見に快く乗ってきた


 こうして俺らは部屋を後にして、食堂とやらに向かった








―――――――――――――――――――――――――――――――ー






 ・・・・・・・俺は、最悪だな


 【嘘】をつくのも最悪だが、人を数字で説明するなんてな


 1人が100人分の命?






 ふざけるな






 命は、平等だ。これは絶対だ


 赤ん坊も、少女も、少年も、大人も、歳よりも、病人も、聖人も、悪人も、皆命は1つだ


 たった一つしかないんだ。それに優劣をつけるなんて最低だ


 なのに数が少ないから特別? ふざけてやがるな。どれもこれも1つの命だ


 どの命だって可能性を秘めてるんだ。どの命だって尊いんだ


 ほかの誰かが異論を唱えようとも、俺はこの考え方を変える気はさらさらない


 綺麗事でもいいさ。こんな汚ねぇ世の中、綺麗事でも綺麗なものを持ってる奴の方が上等だ


 『1つ1つの命の重みが違ってくるのだな』だと?


 頭がいかれてるんじゃぁねぇのか?


【俺はお前の種族100人分の命と同じってことだ】


 笑っちまうな


 あぁくそ


 やっぱり俺は





 






 ≪敗北者≫だ


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