表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つきの異世界魔王譚  作者: 紅葉 咲
異世界 1日目
4/33

緊急事態

緊急事態ってワクワクしない?

【緊急事態とかもう不安しかねぇよ】

「はぁ…結局この部屋に逆戻りかよ…」


最初に目覚めた部屋に戻され、ため息をつきながら枯れ草の上で寝転がる


もうやってらんねぇよって感じだな


だって俺はただ風夢(かざめ)紅美(くみ)という数少ない親友と共に山で登山してただけだぜ?


それが何で3M近い巨人に追いかけまわされにゃぁならんのだ


もう人生が呪われているとしか思えねぇよ


「…今度は出ていかないで下さいね?」


俺をこの部屋に連れ戻した張本人である金髪3つ目女は部屋の出口に陣取り腕を組みながら寝転がる俺を見降ろす


なんでちょっと怒ってんだよこいつ


怒りたいのは俺の方だよ


自分の運命うんめい激怒(げきど)だよこんちくしょう


「心配しなくてももう出ていかねぇよ。お前の言う通りにしてやるさ。…俺だって、別に死にたいって訳じゃねぇしな」


少し投げやりに答えてしまったかもしれないが仕方ない。いきなり魔物とかいう訳のわからない生命体を目の前にして、他人に、『魔物』に気を使えるほど俺は出来た人間でも狂った人間でもない


「お前って私は・・・。あぁそう言えば名前を言ってませんでしたね。私は『サチュ』と言います。見てのとおり≪アイズ族:三つ目≫の魔物です。えー、よく面倒見がいいねと褒められます」


見てのとおりとか言われても見てわかんねぇよ


しかも面倒見がいいとかすんげーどうでもいい。そんなこと言われても知ったことじゃねぇんだよ


そう思っていると女…『サチュ』が3つある目で俺をじっと見つめてきた


「…なんだよ」


無視してやろうと思ったがさすがに1人から3つの眼で見られると精神的に来るものがあるので2秒で音をあげる


「『なんだよ』じゃないですよ。私は自己紹介じこしょうかいしたんですから次はあなたの番ですよ?」


サチュは当然のように言う


「あぁ!? なんで赤の他人に俺の大切な名前を教えなきゃいけないんだよ!」


「はぁ? 別に名前を教えるくらいいいじゃないですか?」


「おま、名前の重要性を知らないの!? 名前ってのはそいつを指し示す記号だぞ!? もし他人が俺の名前を自分の名前であるといつわり悪事を働いたらどうすんだよ!!」


「なんですかその気持ち悪い発想!? 考え過ぎですよ! もしくは自意識過剰(じいしきかじょう)です!!」


「あぁ!? 自意識過剰だと!? その通りだなんか文句あっか!?」


「なに認めてるんですかバカなんですか!?」


「バカではねぇよ!」


「じゃぁなんですか!?」


そこで1度俺は黙り、良く考えてみる


まず俺はバカではない。これは自他ともに認められている。なら俺はバカから正反対の位置に存在する者であると言っても過言ではないそしてバカの正反対の位置にいる者。それは…


「…天才?」


「やっぱりバカじゃないですか!!」


「んだとこの野郎!!」


ちょっと真面目に答えたらこれだよ!


「あぁもう! とにかく名前教えて下さいよ!!」


サチュは俺の胸倉をを掴み勢いよく揺らす


「あばばばばばばば!! 揺らすな揺らすな!! 吐く! 何か吐くから!! おま、なんでそんなに俺の名前知りたいんだよ!! ファンか? 俺のファンなのか!?」


「なんか私が名乗ったのにあなたが名乗らないのって不公平ふこうへいじゃないですか!!」


「ハッハー! 笑わせんなよバーカ!! 勝手に自分で名乗っておいてなぁにが不公平だ!!」


「自己紹介されたら自己紹介し返すのが普通なんじゃないんですか!?」


「お前が勝手に普通だと思いこんでる概念がいねんが俺にとっても普通だと思うな! なんだ? お前はあれか? 『自分が楽しいと感じたものは他のみんなも同じように楽しいと感じるよね』とかいう自分中心の考えの持ち主か!? 消え失せろ!!」


「何なんですかあなたは!? 殴りますよ!?」


「ほぉらすぐそうやって暴力に頼るから脳みその小さい奴は【嘘ですごめんなさいもうバカにしません】痛いのは嫌ですごめんなさい言い過ぎましただからその振り上げたこぶしをおさめください!!」


俺は先ほどサチュに殴られた個所を抑えながらサチュの手の届く範囲はんいから急いで逃げて頭を下げる


「…名前教えてくれたら殴りません」


「『毒島(ぶすじま) 心斗(しんと)』と申しますですはい!」


俺は高らかに名前を叫ぶ


痛いのは嫌だ。あと不味いものと苦しいもの、気持ち悪いのと疲れること、悲しいこといらつくこと、待つことめんどくさいこととかも嫌いだ


「『ブスジマ・シント』? 長いですね」


「普通に『心斗さん』でいいぞ」


「さんづけは強要(きょうよう)するんですね…」


「おうよ」


「まぁいいです。あぁそれからシントさん、これからのことなんですが」






『ピィィィィィィィィ・・・・・・・・・!!』






サチュが言葉を言い終わる前に、決して大きくはないが耳に残る高い音が部屋全体、いやこの建物全体に響いた


「…おい。なんだ今の音?」


今の音は一体何の音なのか、どういう意味を持つ音なのかを聞く


なんの音なのかはわからんが、なんか凄く嫌な予感がする


その嫌な予感はサチュの言葉ですぐさま肯定こうていされた


「そんな!? 緊急事態用きんきゅうじたいようの笛!?」


サチュはすぐさま部屋の出口に走り出す


「おい! 説明もなしにどこに行く気だ!?」


せめて今何が起きているのか教えてくれ!! 何もわからない状態で1人にさせないで!! 不安になるから!


「シントさん!! 私が戻ってくるまでこの部屋から絶対に出ないで下さい!! いいですね!!」


「よくないぜ!! って、え? マジでどこ行くの!?」


サチュは俺の返事を待たずどこかに走り去って行った


「…えぇ? 【嘘】だろおい…?」


どうやら俺は完全に置いてかれたらしい


…仕方ない。部屋から出るなって言われたしやる事もないから枯れ草でも集めて身を隠しておくかな


ここは魔物の拠点だ。いつ俺に害をなそうとする奴が出てくるかわからん


そうだな。とりあえず部屋の隅にでも移動して


「おぉぉぉおおやってられるかってんだ!! 俺はせっかくだからこの部屋に隠れさせて貰うぜぇ!!」


いきなりそう叫びながら何かがこの部屋に飛び込んできた


「ぴゃぁぁっぁぁああ誰ぇぇぇぇええ!!?」


当然俺は叫ぶ


「うぉぉぉぉぉぉぉおおなんだぁぁぁ!?」


するとその叫びに反応してその何かも叫ぶ


だがその何かは俺の姿を確認するとすぐに叫ぶのをやめて話しだした


「な、なんだよ先客せんきゃくがいたのか…。驚かせたみたいだな。悪かった」


「きゅ、急に叫びながら部屋に入ってくるとか常識は無いのかお前は!!」


俺は部屋に侵入してきた奴に指をつきつけ言う


「んなこといったってよぉ。俺だって必死だったんだぜ? だいたい、あの笛を聞いてもこの部屋にいるお前もどうせ俺と同じように逃げて来たんだろ? 同じ臆病者同士仲良くしようぜ? な?」


そいつはあくまで冷静に言う


「逃げてきただぁ? 俺は別に逃げてここに…」


俺は言葉を途中で切る


こいつはさっきの巨人みたいな恐ろしい外見はしてないが、この『魔物の拠点』にいるって事はこいつは『魔物』であるのだろう


ここで俺が素直に言っても怪しまれるだけか…


「あん? なんだって?」


「【いんや。なんでもねぇよ。 ただちょっと今考え事を】…へ?」


「? どした?」


俺が今会話をしている奴はさっきの巨人と違い昔の狩人が着るような服を着ていた


声は若いし、身長も俺より少し高いくらいだからたぶん俺と同い年か年下かと思う


ここまでは普通にそこらにいる『人間』と変わらないが


1箇所、いや2箇所だけ人間と明らかに違う部位があった


おいおいマジかよ


なんでこいつの頭に


男の頭に




犬耳がついてんだよぉぉぉぉぉおお!!?




「男の犬耳とか誰得だよ!」


「急にどうしたお前?」


「男が犬耳生やすなよ気持ち悪ぃ!」


「いきなりなにを理不尽なこと言ってんだお前!?」


「うわよく見たら尻尾もついてる! なにそれどこら辺から生えてんの? てかどうやって服の、ズボンから外に尻尾出してんの? て言うか君ズボンちゃんといてる?」


「履いてるに決まってんだろ!! てか今そんなことどうでもいいだろ! すこし静かにしろよな! こんな所誰かに見つかったら…」


犬耳男は急に口を(つぐ)


なんだ? その嫌なものを見たというような顔は?


「見つかったら、何だって?」


瞬間、俺の耳元で声がした


「ふぁぁぁぁあ!?」


俺は前に転がり、急いで後ろを確認する


そこには2人目のこの部屋に対する侵入者しんにゅうしゃがいた


そいつはやけに厚着をしていて、槍を持っていた


あきらかにヤバい奴ですねぇわかります


パーカーのようなものとマフラーのようなもので顔を隠しているからどんな表情をしてるか分からないが、声色からして女のようだ


「な、なんだよお前。その服装からして≪龍族(りゅうぞく)≫か?」


犬耳男が厚着の女に警戒(けいかい)しながら何者であるかを尋ねる


まぁ確かに槍持ってたら犬耳あってもさすがに警戒はするよな


それよりなんだ【龍族】って? あの巨人が言っていた『魔物』の1つの『種族』のことか?


「あぁそうだ。緊急集会きんきゅうしゅかいの音を聞いて広間に行く途中この部屋から大きな声が聞こえたから入った」


厚着はもごもごしながらも言う


喋りにくいならマフラーとればいいのに…


「そうかよ。じゃぁはやく集会に行けよ」


犬耳はそんな女に冷たく言い放つ


「何を言ってる? 緊急集会だと言っているだろう? おまえら2人も早く行くぞ」


厚着は槍を地面に打ちならしながら言う


超怖い


「…わぁったよ」


犬耳男は難しい顔をしていたが、最後には諦めたかのように部屋の出口に向かう


だが、そのまま出て行かずに俺を見る


「? なんだよ?」


「なんだよじゃねぇよ。お前も早く来いよ」


「え!? 俺も!?」


まさか巻き込まれるとは思っていなかったので驚く


「当たり前だ。魔王様がわざわざ緊急の笛を鳴らして集会を開いてるんだ。俺達魔物が行かない理由は無い」


犬耳男の代わりに厚着の奴が喋る


「ほらさっさと行くぞ!」


「あ、でも俺この部屋から出ちゃいけないんだ」


「何言ってんだ? …そういえばお前みたところ怪我もしてねぇし元気だよな? なんでこの『医務室いむしつ』にいるんだ?」


衝撃の事実


ここ医務室だったの!? 周りに枯れ草しか見当たりませんがそれは!?


「・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・」


うわヤバい怪しまれてる! 犬耳男と厚着女が無言で俺を見てくる!! やめろようったえるぞ!


「やっぱり、お前も俺と同じこと考えて隠れてたんだな。でももう諦めろよ。【龍族】に見つかっちまったんだから大人しく集会に行った方が利口だぜ。あいつらはほとんど頭が固いからな」


な、なんか勝手に納得してるぞこの犬耳野郎


「…ちっ。まぁそうだな。サッサと集会に行くか」


仕方ない。とりあえずあっちが勝手に納得してんのなら俺ものっかっといた方がいいな


すまんサチュ


お前との約束は果たせそうにない。許せ


怪しまれて調べられて、人間ってバレたら何されるか分からねぇしな


こうして俺は半場はんば流されて出てはいけないと言われた部屋、『医務室』を後にした














「そういやお前一体何の魔物だ? 特徴が見当たらねぇが…」


「【特徴がないのが特徴の魔物】なんだよ!! あんまそういう細かいこと気にするとモテないぞ!!」






…大丈夫かなぁ俺

あの、現実感のなさが好き

【一番死が現実味帯びるのが嫌いだ】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ