プロローグ
俺はヒロインは依存心の強いツンデレな幼女がいいと思うんだよ
【俺はヒロインは死んだ目をしたクーデレの崇拝者がいいと思うんだが】
『―――――――――ねぇ。僕らで1人ずつ約束をしようよ』
『約束?』
『なになに? 将来風夢と私が結婚するって約束?』
『そういうたぐいじゃないからね? 簡単に言うとこれからの人生で出来るだけ守らないといけないルールだよ』
『なんでわざわざ自分の人生にルールつけなきゃいけないんだよ。ただでさえ法律にがんじがらめな人生送ってんのによ』
『ゲームも人生も縛りプレイで進んだ方がやりがいあるだろ?』
『しらねぇよ』
『うるっさい心斗! 風夢の提案にケチをつける気か!? 風夢! それはとてもGood ideasだよ!!』
『はぁ…。 ただでさえキツイ人生をさらに難しくしようとするその心理が分からん…』
『別に絶対に無理な時は守らなくていいからさ! 良いじゃんか! 約束しんしゃい!! この臆病者がぁ!』
『何で急にキレてんだよ情緒不安定か!?』
『だってだってさ! たった2人の約束を守ってこれからの人生を生きて行くだけだよ!? しかもどうしてもという時は破っていいんだよ? ねぇいいじゃんかぁ…?』
『がぁぁぁひっつくな艶めかしい声を耳元で囁くな!』
『心斗、guilt!』
『いきなり何叫んでんだ紅美。って何だよお前の後ろにいる奴ら?』
『皆の者、ファイヤー!!』
『待てなんだいきなりおい松明なんて初めて見たぞいやいや俺を中心に丸い陣営を展開するなボソボソと呟きながら大勢で近づいて来るなマジ怖いからぁ!!』
『さぁ紅美! 僕と共に悪を滅ぼそう!!』
『Yes!!』
『Yesじゃねぇんだよ!! てかなんでしれっと風夢そっちの仲間に入ってんだぁぁ!?』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――――――――ッ!!」
…覚めた
目が、覚めた
昔の記憶。昔のやり直せない失敗というか拷問というか、中々にレベルが高い悪夢を見たせいで気分は悪いが、まぁ起きないわけにはいかない
どうやら無理な体勢で寝ていたらしく、身を起こすと身体がバキバキと鳴った
そして俺は初めて周りの環境に気付いた
「ここは…どこだ?」
どうやら俺は部屋で寝かされていた
壁と床は石で出来ており、その床には草の塊が等間隔で置かれている
明りはこの部屋にひとつしかない小さなガラスのはめられていない窓から差し込む太陽の光だけでなんとも薄暗い
匂いは…カビ臭いな。しかも俺が寝かされているのはその床に置かれてる草の塊の上みたいだ
ふと下を見ると茶色いボロ切れのようなものが俺にかかっていた
どうやらこの一枚のボロ切れが俺の身体を温めてくれていたみたいだな
「おいおいなんだこれ? 俺の住んでるアパートが高級ホテルに思えるぞ」
…いや、さすがに高級ホテルは言い過ぎたか?
いやいや俺のアパートの話しは今はどうでもいい
それよりなんだこの状況は?
…落ち着け。こういう時はこうなる前の状況を思い出すべきだ
確か…。風夢と紅美と一緒に登山をして、雨が降ってきたから洞窟に雨宿りして、それから…
…それから? それから俺はどうなった?
「あら? 目が覚めたのですね」
俺が思いだそうとしていると部屋の出入り口らしき所から誰かが入ってきた
この部屋にはドアがついていない
代わりにあるのはカーテンのような布だ
部屋に入ってきた奴が俺に気づき喋りかけてくる
声からすると女みたいだな
こちらを気にしているような口調だが、それで気を許すのはいくらなんでも軽率すぎる
目が覚めたら見知らぬ場所で寝かされていて、そこに見知らぬ人間が話しかけてくるなんて普通じゃない
それに俺にはここで横になり寝た記憶がない
ということは俺はここに『誰かに寝かされた』んだ
何だ? 何が目的なんだ?
「体調の方はどうですか? 何か、痛いところなどは?」
女は草の上に座っている俺のほうに近付きながら体調を聞いてきた
見たところ俺より身長は低いな。つまり167cm以下か
体つきは全体的にスラッとしている
服装は薄着だ。武器を隠してる様子もない
よし。これなら攻撃されても多少俺でも抵抗くらいはできそうだな
…うぁ、こいつ金髪か
女は金髪を肩まで伸ばしていた
染めたような金髪ではなくおそらくは地毛か
となると外国人か? にしても日本語に違和感はないな・・・。
と言うことはハーフか日本生まれの外国人か?
…なんだ日本生まれの外国人って?
そこまで考えて、その女が俺をジッと見ているのに気づいた
しまった
俺は今こいつに話しかけられていたんだったな
「すこぶる良好です。本当にありがとうございました」
とりあえず下手に出ておこう。下手に出ときゃとりあえずは大丈夫だろう
「いやいやお礼なんていらないですよ。私は何もしてないです。ただこの寝床を貸しただですよ」
「いえいえこんな素晴らしい所で寝かせて貰って嬉しい限りですよ」
今この草置き場を寝床といったかこの女は?
「そう言ってくれると嬉しいですね」
女はそう言って人当たりが良い笑顔を見せる
…どうやら今のところ敵意はないようだな
『パチンッ』
いや違う
笑顔を見せると言うことはこちらを安心させようとしてるってことだ
もしかして俺が安心した瞬間何かを仕掛けてくるかもしれない…!!
俺は座ってる状態をすぐに動けるような態勢に変える
初対面の人間にはこれくらいの心構えはしておくべきだ
「いやぁでも、何で俺はここで寝かされていたんですかね?」
とりあえずやるべきことは状況確認だ
この金髪に仲間がいる可能性も考えすぐに本題に入る
出来ればここに俺がいるいきさつ、今はいつでここがどこで、俺はこれからどうなるか…
これを知るためにはなるべく女と会話をしなくてはいけない
「あれ? 覚えてないんですか? あなた戦場の真っただ中で倒れていたんですよ?」
「戦場?」
なんだ戦場って? 何かの隠語か?
「はい。それで撤退するときに『カナン』さんがあなたを回収…。というより拾ってきてくれたんですよ」
「…はぁ。それはまた、起こして下さればよかったのに」
「それがあなた、落とされたり蹴られたり切られたりしても起きなかったらしいですよ?」
「落とされたり蹴られたり切られたり!?」
扱い酷くないかそれ!?
いや酷いどころじゃぁねぇなぁ!!
なんだよ切られたりって!? どこを!? どこを切ったのさ!?
すっごく怖いんだけども!!
「えぇ。凄いですね」
「凄いなんて言葉で片付けていい問題じゃないですよね!? 寝てる奴になにしてくれてるんですか!?」
「そんなこと言われましてもきっと戦場だったんですから色々大変だったんですよ」
「色々大変って雑じゃないですか!?」
…って、だから『戦場』ってなんだ?
「あの…。さっきから『戦場』って言ってますが、どういう意味なんでしょうか?」
「…? 何を言っているんですか? 意味なんてそのままですよ?」
金髪の女はきょとんとした表情で言葉を吐く
「人間と『私たち魔物』の、生死をかけた戦いの場のことですよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・ふむ
こりゃまいったぞ?
この女、頭がヤベーみたいだぞ?
初対面の男に電波発信してくるなんてまったく恐れ入る勇気だぜ
「あ~、とりあえずそんな所で倒れてた奴は放っておいてもよかったと思いますよ?」
「何を言ってるんですか!? カナンさんが拾ってくれていなければ死んでいたんですよ!」
ヤベー。ヤベーよこの女
声が本気だよ。何をどう間違えたらこんな風に育つんだよ可哀想だよ
「いやはや、魔物ですか。いやはや…魔物ねぇ…」
「えぇはい。魔物です。まっ、戦争って言ってももう『私たち魔物』の勝ちは難しいと…いえ何でもないです」
というかなんで俺しらねぇ内に『魔物』側につかされてんの? 何で急にそんな感じにされてるの俺?
てか今勝ちが難しいって言わなかったか? もっと頑張れよ魔物。 根性見せろ根性
「はぁ。ヤバいですね」
主にお前の頭が
「でも私たちは諦めません!」
勝ち目ないのに諦めないのか。なんか漫画の主人公みたいですねースゴイネー
「そうですか。では私も影ながら応援しますね。ではこれで」
俺は草から腰をあげる
「? どこに行くんですか?」
「ちょっとそこまでですよ」
こんな妄想女と一緒にいられるか! 俺は家に帰らせてもらうぜ!!
「そうですか…。…あれ? …!!?」
俺は先程金髪が入ってきた出入口らしき所に向かうため歩き出そうとしたが、数歩歩いたところで転倒した
別に俺が死ぬほど運動音痴だからだとか、何かに躓いたからだとかって訳ではない
さっきまで仲良く話していた女があろうことか歩き出した俺の足をいきなり引っ張ったからだ
俺は顔から地面に倒れる
当然のごとく、受け身はとれなかった
「いってぇぇぇぇぇええ!!? 顔が! 鼻あたりがツンとする! 鼻血出たんじゃねぇかこれ!?」
俺はたまらず叫ぶ
クッソ! ただの電波女だと思って油断した!! せめて目を離さず後退しながら出入り口に向かうべきだった!! 俺のバカ!! もう知らない!!
俺は急いで女の方に転んだ状態で向き直る
女はすぐ後ろにいた
そしてジロジロと俺の事を見て来たと思ったら、急に押し倒してきた
「な、なに!? 急になに!? この展開は予想できなかったなぁ俺!」
嘘だがな!
予想は出来たんだが身体が反応できなかっただけだがな!
いきなり知らない金髪女にマウントポジションをとられとりみだす俺を無視して女は俺の顔に自分の顔を近付かせる
「…やはり! 一体どういうことですかっ!!」
・・・・・・・いや何が!!?
何でさっきまで普通に?話していた女に怒鳴られてんだよ俺!!
あれか!? 心変わりか!? 思春期特有の心変わりか!?
急に親に敬語とか使っちゃう年頃か!?
それか体育とかの授業で本気を出さなくなる年頃か!?
それとも『私には感情がないのさ。ふっ。悲しいな』とか言い出す年頃か!?
いやぁ俺もあったなぁ…
うわぁ、死にたくなってきたなぁ…
俺が俺自身に精神攻撃をしている事を知らずに女は顔を近づけて怒鳴る
「あなた、人間ですね!!?」
「そりゃ人間ですけど、何か!!?」
とりあえず俺は、間髪いれずに理不尽な問いに答えた
それでさ、他の女の子と喋ってると可愛くやきもちやいてくれればいいよね
【そんでな、仲間にはお姉さん的な存在だが敵には容赦ない冷徹女なら合格だ】




