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嘘つきの異世界魔王譚  作者: 紅葉 咲
異世界 1日目
11/33

魔力

「眠い」


俺は見張り番で暇すぎて赤く(かがや)く月をボーッと見ていた


すると犬耳(いぬみみ)をピコピコ動かしながらフルウが近寄ってきて、開口(かいこう)一番そう言った


確かに見張りというのは存外退屈でとても怖い仕事だ


来るかもわからない、どちらかと言えば来ない事が多い敵を見つけるためにそこらを歩き回ったり


暗がりに隠れてないかと何がいるかわからない怪しい所を念入りに調べたりするのがダルイのは勿論(もちろん)のこと


少しでも何か異変を感じたら走って確かめなけらばならないのも面倒(めんどう)


これで(ただ)の風とか小動物だったらいいが、もし危険な野生動物だったら泣いて逃げるしかない


そんな中、今のような何もなく異常もない時間帯はただただ暇だ


フルウが眠くなるのも分かるが、こうして気を抜いてる時に敵が現れたら死ぬんだろうなぁ


そう思うとやはり見張りというのは嫌な仕事だ


てか嫌じゃない仕事なんてないな…


「・・・まぁ気持ちは分からなくもねぇがよ、もう少し気合いだせや」


「俺は完全なる朝型なんだよ」


「あん? <人狼(じんろう)族>って夜行性じゃねぇのか?」


人狼って民話とかじゃ月を見て狼っぽくなるからてっきり夜行性だと思ったんだが・・・


あぁだめだだめだ。こういう固定概念(こていがいねん)視野(しや)を狭くしてしまうのだ


「人狼全てが夜行性だと思うなよ? まぁ俺以外朝型の人狼に出会った事は無いが・・・」


「やっぱりお前だけじゃねぇか」


「うるせぇ。仕方ねぇだろ、眠気には誰も勝てねぇ」


「でも今見張り中だろ? カナじゃねぇが、もっとちゃんとしろよ」


「つってもそんないきなり攻めてくるかぁ?」


「おいおいそういう考え方は危険だぞ? 常に色々な事態を考えてないといざという時に反応が遅れていろいろあって死ぬものだ」


「んなこと言われなくても分かってる。俺だって寝ないように頑張ってんだよ。だが夜は『魔力(まりょく)』が満たされてるって満足感のせいで眠気が・・・」


「『魔力』? 今『魔力』っつったか?」


「ん? あぁ確かに今言ったがそれが」


マジかよこの世界魔物だけじゃなく魔力も完備してんのかよやべーな


「詳しく聞かせろ」


「はぁ? おまえいきなり」


「いいから。 お願いだ」


俺はフルウに頭を下げる


魔力と言えばゲームで火を出したり地面を砕いたり水を操ったりとでたらめなことをする力だ


もし現実でそんなこといきなりされたら俺は漏らす


漏らしたくないから俺は魔力を知って対抗策(たいこうさく)を考えないといけない…



「お。おぉ。分かったよ。だから頭上げてくれ。・・・・何なんだよほんとに」


「助かる」


「教える前に言っとくが、俺は魔力の全て知ってるってわけじゃねぇからな? 普段から使ってるってだけだからな?」


フルウ普段から魔力使ってんのかよ怖ぇ…


「それでもいい。とりあえず知ってる事だけでも俺に教えてくれ」


「なんだよいきなり真面目になりやがって・・・・」


こうして俺とフルウは見張りをほっぽって魔力の話しをしだした






****『主人公勉強中』*****






フルウから1時間くらいずっと魔力について話を聞いた


聞いたことを整理する


だがここにはノートも鉛筆もないから全部頭で覚えるしかなかったから曖昧(あいまい)な部分も多々ある


己の馬鹿さ加減に悲しくなってくるなぁ…


とりあえず




1、魔力は不可視だがどこにでもある。そこらの草にも微弱(びじゃく)だがある。空気にも含まれてる


2、魔力には上限があり、1日に無限に使う事が出来ない


3、魔力は寝たり休んだりしたら回復する


4、魔力をすべて使うか、一回に沢山の魔力を消費すると一定時間まったく魔力を使えない


5、上限は身体が魔力に慣れてくるごとに上がる。要は魔力を使えば使うほど上限は上がる


6、上限以上は自然には溜まらないが、何らかの要因で上限以上の魔力を持つと暴走するか身体が壊れる


7、魔力は自分が持つ『体内魔力』と、それ以外の『体外魔力』に大まかに分けられる


8、『体内魔力』は自由に使える。回復にも使えるし、手足などに魔力を流すことによって強化できる。慣れれば魔力を火に変えることで火を纏ったりできる


9、『体外魔力』に干渉したい場合は『体内魔力』と結合させないといけない


10、魔力には『火』や『水』の属性がある


11、『体内魔力』の属性が『火』だった場合、『体外魔力』に火を付加させやすくなる(つまり空気中にいきなり火を出すことが『体内属性』が『水』のやつより簡単ということ)


12、属性はフルウが知る限り『火』『水』『土』『風』『光』『闇』『氷』『空間』『精神』『生命』がある。他にもたくさんあるそうだ




あとは・・・・なんかあったか? 記憶能力の乏しさであまり覚えれてないぞ?


『9』もよくわからなかったし…


因みに魔力の使い方を教えて貰おうと聞いてみたら


『気づけば簡単に使えるぞ』


という言葉で終わった


それ気づかなかったら使えないって意味だよな?


「まぁ。こんな感じかな?」


「ん。役に立てたならまぁいいし、俺も眠気を紛らわすことができたし良かったぜ。だがシント、お前結構魔力の事を事前に知ってたんじゃねぇのか?」


「いや、お前から聞くまで何も知らなかったが?」


「にしては呑み込み早かったし、応用も簡単にできたじゃんか」


「応用って・・・。俺結局魔法使えなかったじゃねぇか」


「まぁ確かに、理解できても使えなきゃいみねぇしなぁ・・・。俺の教え方が悪かったのか?」


「そんなことはねぇよ。たとえ自分自身で使えなかろうが、知ることに意味はある。例えば敵が魔法を使ってきてもどの属性の魔力をどのように組み込んで魔法を発動しているのかが分かれば魔法の弱点や隙に付け込んでなんとか逃げる事は出来るだろ?」


「やっぱり逃げるんだな」


「当たり前だ。まぁ、教えてくれてありがとな」


「・・・・・おお」


「どした」


「お前がこのくらいで礼を言うとは思わなかった」


「俺を何だと思ってるのか問いただしたくなる言葉だな」


「へらへらした笑顔で相手によって態度を変える奴」


「その通りだからなんもいえねぇ」


「まぁでも、そんな改めて礼を言うようなことか? しかも目上じゃなくて俺に対して」


「いや、親しき仲にも礼儀ありって言うだろ?」


「何だその言葉? 聞いたことねぇぞ」


「ようするに、礼儀(れいぎ)(おも)んじろことだってことだ」


「なんだよそれ」


フルウはまったく意味が分からんぞという顔をした後、あっ。と何かに気づいたように言葉をつづけた


「てか、魔力なら『サチュ』に聞きゃぁよかったじゃんか」


「あぁ? なんでサチュに?」


「だってあいつ<アイズ族>だから『魔力をみることできる』し、俺より魔力の事詳しいんじゃねぇのか?」


「・・・・はぁ!? おま、『魔力は不可視』って!」


「そりゃ俺らはな。でも<アイズ族>は見る能力にたけた奴らだろ? 知らないのか?」


フルウは怪訝な顔で俺を見る


やばい不信感(ふしんかん)を与えてしまったか!? 


魔力を知らないって事だけでもアレなのに、仲間の特徴すら知らないのはさすがに怪しすぎたか!?


「いいいいいやいやいや!? 【知っておりましたぜ!?】」


「お、おう?」


「【でもさすがにそのほら、魔力なんて知ってて当たり前みたいなもんだろ? それをその当たり前みたいに見える奴? みたいなやつに聞くなんてほら! なんだ? プロに初歩の初歩教えて貰うわけにはいかないじゃん? 常識的に? たか恥ずかしいじゃん? だから俺はお前に聞いたんだよ!】」


「いやでもおまえ魔力事態知らなかったんじゃ?」


「それはおま」









『ボォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!』





突如、魔物の拠点から大きな音が響きだした


一瞬地面が揺れたような錯覚に陥るほどの大きな音だ


その音は、俺にはとても不吉なものなのだと思えた






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