始まりは最悪で
また1つ、新しい物語を始めよう
【第三者視点で書けるようにはなったのか?】
「ねぇねぇ。いきなりで悪いんだけど質問するよー? 『毒島 心斗』君。君は雨が嫌いですか?」
俺の目の前でくるくると回りながら器用に山道を進む親友がその綺麗な声で歌うように俺の名前をご丁寧に名字までいれて呼び、問う
「【俺は雨が嫌いです】」
その問いに俺は【嘘】をついた
俺はそんなに雨は嫌いじゃない
雨の音はなんだか落ち着くし、雨が降れば眩しくて暑い太陽はなくなり人は外出を控える
俺はそんな薄暗く人がまばらな町並みをゆっくり散歩するのが好きだ
…だったら何故今、【俺は雨が嫌いです】なんて【嘘】をついたのかと言うと話しは簡単だ
今雨に降られたら非常に困るからだ
何故困るのかと言うと、俺は今友人2人と一緒に登山に来ていてしかも傘を持っていないからだ
ただでさえ足場の悪い山道だ
雨が降ろうものなら足場はさらに悪くなり水で滑ってしまう
その状態で冷たい雨に身体を濡らすのだから体力の消耗は尋常でないだろう
最悪の場合なんやかんやあって死ぬ可能性だってある
だから俺は願かけの意味も合わせて【俺は雨が嫌いです】なんてしょうもない【嘘】をついたんだ
なのに
「はい残念! 君が【嘘】をついたので天から罰として雨が降り出しました! まさに天罰ってやつ?」
親友はとてつもなくいい笑顔でいまだに回りながら折り畳み傘をさしつつ言いやがった
そして、その声を合図にしたかのようにぽつぽつと雨粒が俺を攻撃し始めた
「あぁぁぁクッソついに雨降ってきたじゃんかよぉぉ! ふっざけんなよ風夢ぇぇぇぇ・・・・!!」
俺はいらだちを隠さず相変わらず折り畳み傘を差しながらも回り続ける白いパーカーを着た馬鹿の『出会 風夢』を睨む
「えー? 僕はなんにも悪いことしてないよ? ただ質問しただけだよ? 君に睨まれる筋合い無いんだけどなぁ…? ねぇ君もそう思うだろ『紅美』?」
風夢は俺の睨みつける攻撃をのらりくらりとかわすと自分の隣を歩く上下を赤で統一させたスーツのような服を着た長身のシルクハットを被った女、『早乙女 紅美』に同意を求める
「あぁ風夢は濡れてもやっぱり可愛いよぉ…!」
同意を求められた紅美は話しを無視し風夢にすり寄りながら両手を頬にあてくねくねと奇怪な動きを見せのたまう
「うわぁ引くわぁ…」
こいつぁもう駄目だ
あれだ、頭がいかれてやがるんだ
俺はジト目で紅美を見る
一応外見だけは認めたくないが美人だ
腰あたりまで伸ばされた艶の有る黒髪
痩せすぎとは言わないがほっそりとしたスマートな体型
意思の強さを感じるツリ気味な目
貧乳
そう、恐ろしいくらいの美人ではある
だが言動・行動が気持ち悪い
どれだけ美人であっても、気持ち悪いものは気持ち悪いのだ
「う~ん。とりあえず紅美が平常運転であることは置いとくとして、この雨がひどくなる前に山を下らないとねぇ…」
風夢が空を仰ぎながら言う
パーカーを深く被ってるからその表情は良く見えないが、声からして何故か嬉しそうな色がうかがえた
「そんなこと言いながら1時間以上歩いてるこの現状は何なんでしょうかねぇ?」
俺はそれに腹が立ち、皮肉交じりに言う
だが風夢はクスッと笑っただけでなにも言ってはこなかった
「仕方ないじゃない。迷ったんだから」
変わりに紅美が俺を睨みながら言葉に応じた
「簡単に言ってくれるよな。・・・・ホントによ」
ここで俺はいまこの状況に至るまでの流れを整理した
ただいまこの俺、『毒島 心斗』と不快な親友2人は休日が3人とも珍しく被ったので山に登山をしに来ていた
因みに俺は9連勤開けで2時間しか寝れていない状態で紅美に叩き起こされ、風夢に無理やり車に押し込められた
そして3時間くらいどこに向かっているのかすら教えられずに車に揺られてこの山の麓につき、風夢の『さぁ登るよ!』という謎の宣言を聞かされ無理やり山を歩かされ、今現在何故か迷っている状態だ
もちろん俺は今登山用の服ではなく部屋着のジャージを身にまとっている
…俺はこの2人を殴っても許されるんじゃないか?
「大体、なんで迷うんだよ…。おかしいだろ常識的に考えて…。ちゃんと登山コースに沿ってたぞ俺たちは…」
「あっ」
俺が今の状態に頭を抱えていると、紅美がアホみたいな声を上げた
「どうしたの紅美?」
風夢は無駄にすり寄ってくる紅美からスッと離れながら聞いた
「あそこに洞窟があるよ!」
紅美はいいものを見つけたと言わんばかりに声を明るくして指をさす
紅美が指をさす方向には確かに洞窟があった
洞窟の入り口は妙に大きく、その周りには木や花などの植物は生えておらず代わりに茶色い地面が絨毯のように広がっている
その光景に俺はこの洞窟はこの山のものじゃないような印象を受けた
「うわ怖っ」
まぁ簡単に言えば怖い印象を持ったんだ
「Rainも酷くなってきそうだし、すこし雨宿りしない?」
紅美が独特な喋り方で提案する
こいつは何故か昔から一部の単語を英単語にわざわざ変えて話す癖のようなものがあった
初対面の奴らは大体引くが、俺と風夢は昔からのつきあいだ。もう慣れてしまった
「お前さぁ…。熊とかの巣とかだったらどうすんだよ?」
俺は呆れながらも紅美の発言に応じてやる
「てめぇには聞いてねぇよ心斗。消えされ」
「お前相変わらず俺の事嫌いなんですね!?」
「あたりまえでしょ」
紅美は右手の中指を立てながら声を低くして言う
こいつ本気でブン殴りたい
返り打ちにされたうえに泣くまで殴られるから殴らないがな…
「まぁ俺もお前が大嫌いだがな」
だが手は出さない代わりに口は出す
攻撃ならぬ口撃だ
「は? 牛乳飲ませるぞ!」
おぉぅこの美人め…
俺が牛乳嫌いなことを知って言うか
「あん? トカゲ投げつけるぞ?」
「あんた私が爬虫類嫌いなの知っててTalkしてるでしょ!?」
当たり前だろクソ美女が
お前の嫌いなものは全て把握しているんだ。ざまぁみやがれ!
って、あれ?
こんな話ししてるとそろそろ風夢が止めに来るはずなんだがな…
周りを見回すと風夢はいなくなっていた
「風夢? おいどこ行った!?」
俺は直ぐに風夢の名前を叫ぶ
あいつは眼を離すと良くも悪くもトラブルを起こす
そうなる前に見つけねば…!!
「お~いこっちだよ~! 速く来なよ~!」
声がした方を反射的に見ると、風夢が洞窟の中から手を振っていた
「風夢さん何してはるんすか!?」
俺は急いで風夢に走りよる
そんな俺を颯爽と追い抜き紅美が風夢に抱きつきと言う名のタックルをかます
だが風夢はその眼にもとまらぬタックルを華麗にかわした
「もう! 黙っておいてくなんてひどいじゃないか風夢! そしてかわすのも酷い!!」
「いやぁごめんごめん。紅美のタックルは背骨を中心的に破壊してくるからさ? いくら僕でも背骨を破壊されるのはきついかなぁって思ってねぇ。それに心斗と仲良く話してたから声かけづらくてさ」
風夢はおどけながら言う
「はぁ…はぁ…。お前よぉ…。…はぁ。お前ここが何かの巣とか考えたり警戒とかしないのかよ!?」
俺は走ったせいで若干疲れながらも2人に追いつき洞窟の中を見回す
洞窟の中は暗く、外よりも空気がずいぶんと冷たかった
「なんで君この距離走っただけで疲れてんのさ…」
「体力がねぇんだよ…! あとここ山の中だから普通より走るの疲れんだよ…! あと熊…!!」
俺は洞窟の壁に背中を預けて息を整えながら不安を訴える
「熊は大丈夫さ。熊にとって理想的な穴の入口はごく狭く、人間の子供でも入ることが難しいものだからこんな大きな入口の洞窟を巣になんかしないさ。こんな大きな入口の洞窟を巣にしちゃったら外部の敵にどうぞお入りくださいって言ってるようなもんだろ? それじゃぁ巣を、安全な拠点を作る意味がないじゃんか。それに、地味に心斗は変な野生動物とかいないかずっと周りを警戒してたから気づいてるでしょ? 周りに『生き物』がいない事をさ」
風夢は俺の耳に口を近づかせて囁くように言う
なんでだよ。何できづいたら横にいて色っぽい声で説明するんだよ
「…確かに周りの木とかには爪痕・噛み跡・野生動物の廃棄物とかのマーキングの痕は無かったし、ここまで来るのに鳴き声や足音も気配もなかったが、…もしもっていうのがあるだろ」
俺はすぐに風夢から距離をとりながら言う
「ふーん? 心斗はよくThinkてるんだね。まぁ弱いしそれくらいしかとりえないし仕方ないか」
紅美は俺を褒める
褒めた後すぐにけなしてきたが照れ隠しだと思うことにしておこう
あと何故か刃物的なもの向けて睨んでるけどそれは無視しとこう
その方が俺の精神安定に役立つ
「そりゃ俺はお前らみたいな化け物じゃないんでね」
「はぁ? MonsterだっていろいろThinkてるんだよ?」
「確かにそうだねぇ。…いや君は弱すぎるよ? そんなことよりも、この洞窟奥深いみたいだけどせっかくだから行ってみる?」
風夢は真っ暗な洞窟の奥を見ながら楽しげに言う
「行くかよバカ。 なにがせっかくだからだよ脳みそ足りねぇんじゃねぇのか? 何で冒険心くすぐられてんだよガキか? 暗いから何が起こるかわかんねぇんだぞカス? 急に上から岩が落ちてきたり、歩いてたらいきなり地面がなくなってたり、俺らみたいに雨宿りしてる野生動物だっているかもしんねぇとか考えらんねぇのかよゴミクズが…。…おい俺怖くなってきちゃったんだけどどうしたらいい?」
「なんで自分の想像に怯えてるんだよだっさいなぁ…。てか君ホント口悪いよね?」
「やーい臆病者。泥におぼれて死ね」
2人が俺をバカにする
「うるせぇ。最低な場合を考えて損は無いだろ」
「損は無いけど気は滅入るよねぇ」
「その滅入るのが良いんだろ?」
俺と風夢は親友になってから何度も繰り返したやり取りをする
「Fa!?」
そんな時に紅美が大声を上げた
「ぎゃゃぁっぁああビックリしたぁぁぁああ!!?」
「紅美? どうしたの?」
「い、いま、奥からなにかSoundがした!」
Sound?
山の天然っぽい洞窟の奥から聞こえる謎の音→大自然で響く音→野生動物のファンタジー皆無の弱肉強食の戦闘音→大自然にとっての弱肉→武器を持たない弱い人間→それは俺
=俺は死ぬ
「死にたくねぇよぉ!!」
俺は地面にひざと手をつき泣き叫ぶ
「心斗うるさい。紅美、いったいどんな音がしたの?」
俺の必死の叫びを風夢は『うるさい』の一言で無残に切り捨てた
なんなのこの親友? ほんとに親友なのか?
俺は今更ながらこの親友を親友として認めていいのか疑問に思った
そういやこの白いパーカー着た親友の性別がいまだに男なのか女なのか知らねぇわ
「電子レンジの『チンッ!!』みたいなSound!!」
紅美は一人でテンションをあげて言っている
「…はぁ? なんで大自然の洞窟から電子レンジの音がすんだよ」
俺は直ぐに『否定』した
「面白いね。見に行こうか」
だが風夢の好奇心は強く刺激されたらしく奥に進みだそうとする
「あ、ちょっと待てよ!」
なんでこいつはいつも即決即断即行動なの!?
俺は歩き出した風夢をすぐさま止めるために一歩踏み出した
バギンッ!!!!
「・・・・『バギン』?」
俺は足元で聞こえた音を思わずそのまま復唱した
「ん? どうしたの?」
俺の復唱を聞き風夢が止まる
「いや、今大きな音しなかったか? こう、何かが壊れるような…」
「…僕は聞こえなかったよ?」
「私も今度は何も聞こえなかったよ?」
2人はきょとんと首をかしげる
「あっれ? 気のせい…のはずはないんだが…」
あんな大きな音、気のせいや聞き間違いではねぇよなぁ…
でも、だったらなんでこの2人には聞こえなかったんだ?
…そうかなるほど。この2人は難聴なのか
「なぁ、やっぱり出ねぇか? 嫌な予感しかしねぇよ、ここ」
俺はもうなんていうか泣きたい
泣きたいくらいこの気味悪い洞窟から出たい
だって本当に怖いもん
「・・・・・・・・」
なのに風夢は無視する
もうやだこの親友…
「どうしたの風夢」
紅美は急に俺を無視した風夢に違和感を覚えたのか風夢に近寄る
ついでに尻を触ろうともしていたが、風夢は見もせずにその手を叩き落とした
何してんだよ紅美…
「…今度は僕だけみたいだね」
俺が紅美に呆れていると風夢がいつもとはまた違った笑顔で言った
大体俺が風夢のこの笑顔をみていい思いをしたことは無い
「何が?」
紅美は風夢が何を言ってるのか分からないようだ
「音が聞こえたんだろ?」
だが俺は確信を持って聞く
この流れだと『音』だとしか考えらんないしなぁ…
「うん。僕には今『扉が開く音』がしたよ」
今度は扉か…
「全く。いったいどういう」ことだよ
俺は、言葉を最後まで紡げなかった
チンッ!!!!
バギンッ!!!!
ガチャッ!!!!
「んなぁっぷっ!!?」
およそ天然の洞窟内では聞かないような音が一斉になったと思った瞬間、俺が立ってた地面がバギンと壊れた
下には暗く黒く底が見えない穴が広がっており、俺は重力に従いそのい不気味な穴に落ちる
急いで俺は2人に助けて貰うべく手を伸ばすが、2人は2人でおかしな状態に陥っていた
紅美はなんか紅く光ってた。眩しかった
風夢は何故か白い扉が目の前にありその扉が開くところだった。風夢いまこっち見て笑いやがったな
こうして俺は謎の穴に吸い込まれていった
とりあえず主人公には不幸になってもらおうかな?
【ところで第三者視点って誰目線なんだ?】