第6話
ズバリと体に線が入る。深くは無いが血が大げさに流れていく。
ヴァムピーラの速さは止まらない。瞬時に右手からナイフを召喚させて振り下ろす。
ギィンと音が鳴り響きナイフの軌道がナイトから離れる。振り下ろしたスピードを緩めずに地面まで突撃して地面をえぐった。
ナイトはすかさず剣を振り下ろすも瞬時にヴァムピーラは後ろへバックして避けた。
「二刀使いかよ…」
短い刃の二刀流は中々に手強い。速さに加えての追撃が受けずらい。
お互いにまだ武器の召喚しか魔力を使っておらず、何を隠しているのかはまだわからない。
ナイトはフッと笑い剣を手放す。ガシャリと音を立てて黒光りする剣は白い光へと変わっていった。
何も持たない両手に黒光りする短剣を出現させる。
「俺も二刀は得意なんだよ」
「…だから?」
楽しい。
体が疼くのがわかる。
体が求めいていたのがわかる。
ナイトは笑みを隠し切れなかった。
ナイトはニヤリと笑い。短剣を構える。
平然とした態度を取りたかったがもう無理だ。
「…気持ち悪い」
喋らずともナイトを見ればわかる。楽しんでいる、この殺し合いを。
ヴァムピーラはしゃがみ走りでナイトに一瞬で近づく。
ナイトの腹にめがけてナイフを横切る。ナイトは猫背の姿勢で剣をかわして上段から剣を振り下ろした。
ヴァムピーラはもう片方の剣で上段からの攻撃を弾き、空振った右手を後ろから前に突き出した。
ナイトはするりと体の向きを変え、ナイトの前をヴァムピーラが横切る形になった。
ナイトは思いっきり剣を振るう。ヴァムピーラの右手は突き出したまま、動く左手を動かして剣でナイトの攻撃を受ける。
ドンッ!!!とヴァムピーラは叩き落とされ地面に激突する。クレーターが作り出される程の威力がヴァムピーラに襲いかかる。
「がっ!!っっはぁ!!」
肺から少ない酸素が吐き出される。
ナイトは欠かさず追撃をする。
ヴァムピーラはナイトと逆の方へ転がり立ち上がろうとするが、片膝を付いてナイトを睨む。
ナイトはヴァムピーラに近づき剣を振った。ヴァムピーラも剣を振ってナイトの剣を弾く。ナイトはもう片方の剣で追撃する。それもヴァムピーラは弾いた。
力の差であろうか、ヴァムピーラの弾いた自分の剣は大きく外に、ナイトの始めの剣は構えられていた。
両手を開いているヴァムピーラには避けることは出来ない。
ナイトは剣を上か下へ思いっきり振り下ろした。
「終わりだ」
「時速倍、設定倍数…1.5」
「?」
両頬には樹形図の様な赤い紋章が現れた。
刹那、ヴァムピーラの腕は素早く構え、そしてナイトの剣を弾いた。
「なっ!?」
ヴァムピーラは2回ナイトを切りつける。胸の部分に切り刻まれブシャアアと血が溢れる。
「あ…ヤべ」
ナイトは脱力して膝から崩れ落ちる。
ヴァムピーラは2本の短剣を捨て、両手剣を出現させる。
ガチャリと音を立て、ズンっと両手に収まった。
ナイトはそれを呆然と身送るしかなかった。両膝をついて前に倒れて行く。そこにグサリと腹に剣が突き刺さる。
倒れる動きは止まる。腹からは血が大量に流れる、足元は血溜まりができていた。
「…下衆め」
剣を抜き剣は光となって消えていく。ブシャアアと血は吹き出し、そして蛇口を閉めるかのように勢いは減っていった。
頬の紋章は消え安堵の息をついた。
返り血を真っ当に受けたヴァムピーラは髪も服も血に染まっている。
ペロリと頬を伝う血を舐める。
「早く我がマスターを助けに行かなければ、あの3人はどれも強い。マスターだけでは絶望的だ…」
まあナイトが死んだのだからあの中のマスターも死ぬだろう。
「だが油断は出来ない」
ヴァムピーラは思いっきり地を蹴りジャンプした。我がマスターの場所へ急がなければ…
辺りはシンと静まり返っている。
「…………ふ、はははっ!!」
ナイトはやはり楽しみの笑みは隠せなかった。