第3話
「私たちが攻める場所はここから車で2時間半、少し遠いですが湖に住む黒魔術師の場所へ明日にでも向かいましょう」
ん?と疑問を浮かべるようにナイトは顔をしかめた。
「マスター?俺があんたを担いで行けば30〜40分ぐらいで着くんじゃないのか?」
あきれた、物分りはなかなかに良いのだが少し警戒心が足りない。
「そんなのは駄目です。救急箱やら戦闘道具やらを持って行くのですから。車でないと持ってはいけません」
「ふ〜ん、俺1人で十分だと思うけどなあ」
ニヤニヤと自信ありげにこちらを見る。ナイトは1人で一つの本拠地を潰そうとしている。
「ならば十二分の体制で行くまでですよ。安全という保証は多くあるだけで心の支えになりますから」
ふう、と二杯目の紅茶をトポトポと注いで一口飲む。
「今回挑む黒魔術師はそこまで力は強い方ではありません。それでも貴方みたいな魔物は少なからず召喚はされているでしょう」
ニヤリとナイトはわらった。敵は人間だけではないのだと、そう今セルフィは言った。
「こっち(魔界)もさ、あるんだよな法律ってものが。やっぱりこっちも殺し合いは無し。出来るのは他の国との戦争のときだけ」
ソファから起き上がりふぁ〜と大きなあくびをする。
「やっぱさ、暇なんだよ自分の国ってのも。あー、早く戦いたいな〜。どんな奴が相手なんだろうな」
「好戦的なのは良いのですが、殺しなどはなるべく控えて下さいね」
静かにだが少し威圧的に抑制する。
「そんなの俺は知らねーよ、わかりやすく言えば生きるか死ぬかの戦いだ。相手だって覚悟は出来ているはずだ」
「それでもです。やはり自分のせいで死なれるのは直接的でなくても気分がいいものではないのですから」
納得のいかない顔。やはり殺し合いがナイトはしたいのだろうか。
「マスター…俺たちは平和の為に戦うという目的もある。ならば根はきっちり抜いとかないと雑草はまた生えてくるぞ」
「それは確かにそうですが…」
「それ以外は考えなくていいんだよ。殺せばいい、単純かつスムーズに、平和が訪れる最短ルートの方法なのだから」
ナイトは立ち上がり廊下に続くドアに手を掛けた。
「平和というものはな、全ての人が手に入るものでもないんだよ…」
ガチャリとドアを開けてこちらを振り向く。
「爺さんから客室用の空き部屋があるって聞いたからそこで休ませてもらうぜ」
「ええ、ご自由に使って下さいな」
「また明日、な」
「おやすみなさい」
ナイトはリビングを出た。セルフィは静かになったリビングで紅茶を飲む。
何分後からか眠気がやってきた。
「ふぁ〜あ、眠いわね」
セルフィは部屋を出て寝室へと足を運んだ。
ドアを閉めて爺に案内されていた部屋へと足を進めていく。
「死人を出すのはあまり好きではない、か」
マスターは戦いが始まるのに綺麗事を言う。聞いた話では相手は何であれも容赦無く殺しにかかって来る犯罪組織だ。
どう考えても綺麗事を言っている場合ではない。
「はははっ!そんなんだといつか死ぬぞ、マスター」
ナイトは高らかに笑う。
そのとき自分の首の鎖のマークに気づく。首に手を当てふっともう一度笑う。
「これは大切にマスターを守らないとな〜」
そうしないと俺も死ぬ。別にこの世に未練はないが死ぬ義理もない。
「やべ〜な、明日が物凄く楽しみだっ」
理由は単純、暴れたい。体が疼いている。あの時の戦争のように暴れ回りたい。
上機嫌でナイトは夜の廊下を歩いて行った。