第2話
儀式が終わり扉を開けると繭が廊下でちょこんと座って待っていた。
廊下は灯火が距離をとって置いてあるが不気味には変わりのない場所だ。
「あ、セルフィ!!」
たかたかとセルフィに駆け寄る繭だが目の前に黒い壁が現れドンっとぶつかり尻餅をついた。
「きゃう!いてて…」
「なんだこのチビ?」
物不思議そうに繭を見下ろす。
「チビじゃないもん!もう14歳だよ!コーヒーもお砂糖14個で飲めるもん!!」
「マユ…その計算だと来年は15個砂糖が必要になるわ…」
呆れながらも繭にセルフィは手を差し伸べる。
「なんだ、ガキでチビな奴か」
「チビでもガキでもないもん!」
むすっと魔物の方を見上げる。
「セルフィ、これが儀式で召喚した魔物?」
「そうよ、これが私のしもべよ」
にっこりと繭に魔物をしもべと断言した。
「うわ〜、完全にしもべ宣言しちゃってるよ」
セルフィと繭のやり取りを見て魔物は露骨に嫌そうな顔をした。
「魔物殿、頑張って下され」
いつの間にか魔物の横には老人が立っていた。
「あんたは良いやつそうだな」
「はっはっは、奥様に手を出したらミンチにしてどぶねずみの餌にしてやりますからな」
威圧感丸出しの爺さんの笑いは明らかに敵視しているようだった。
「俺、ここ嫌い…」
周りを見回して改めてそう思った。
「そういえばあなた、名前はありますか?」
セルフィが広いリビングでお茶をしている。その間ソファで魔物は寝っ転がっていた。
「んー、前の魔術師は死神って呼んでたよ」
「死神…」
「そう、死神。俺は殺しが仕事みたいなものだったから。魔界ではナイトって名前で通ってる」
「こちらの世界では死神で貴方の世界では騎士ですか、おかしいですね」
クスクスとカップを置いて笑う。
「そうでもねえよ、俺は魔界では姫様守ってんだから」
魔物は天上を眺めているが何処か遠くを見ているようだった。
「それでしたら今回もお姫さまを守って貰いましょうか」
「あんたも姫様だったな。いいぜ、それが基本俺の仕事だからな」
ニヤリと何処か不気味に魔物は笑う。
「では、名前はナイトでよろしいですよね」
「その方が嬉しい。やっぱ呼び慣れた名がいい」
カチャリとカップをとって紅茶を飲み干す。
「それではナイト、今後の方針について話します」
「あいよ、お姫さま」
「今回の目的は同じ魔術師と手を組んで黒魔術師との対戦により、制圧をすることです」
「黒魔術師ねえ…」
黒魔術師とは犯罪を犯してまでも魔術の研究をする犯罪組織であるのだが。
セルフィは眉をひそめる。
「何か言いたいことがあるのならば言って下さい」
「あんた、俺を召喚したのって黒魔術だぞ、まさか知りませんでしたとは言わないよな」
ピクリとセルフィは反応する。だが、無反応であるように装いカップに紅茶を注いで行く。
「俺を召喚するにはあんたみたいな才能だけで召喚なんて出来ねえ。魔力が圧倒的に少ねえんだわ。」
「あんたさあ…何人殺した?」
そう、セルフィの体内魔力では魔物の召喚なんて完全に不可能である。
「私は人などは殺めたりはしません。私は何年もかけて少しずつですが魔力を溜めて来ましたのですから」
おーう、と驚いた顔でセルフィを見る。
「大体の奴らはそんなことしねえな、魔力が足りないなら一般人から殺して取ればいい。そう考えるんだけどな」
「不服ですね、私はそんな下卑た真似はしません」
「ははっ、あんたには善人のオーラが漂ってるように見えるよ」