第1話
木製の部屋には暖かな温度がセルフィの芯から冷えた体を温める。
「これが…術式」
床には円形や正六角形などが重ねて古代の文字が血で書かれている。先ほどまでさっきの三人が準備してくれたのだ。今は爺と私以外はいない。
術式の中心には自分が何年も貯めて来た魔力が水に溶かされてグラスに注がれていた。
「では、儀式を始めます。奥様、契約もしますのでそちらの準備を」
セルフィは首に鎖のマークをインクで書いていく。
そのあと、セルフィは術式の前に出て地面に手を当てた。
「始めるわ…」
術式がジワリと赤く光る。
「我が分身となる者よ、魔の力を繋ぎとめここにある力を受け止めよ。我が死は貴方の死に、貴方の死は我が死に…魔を共存し、汝と汝に共鳴を!現れよ我が分身よ!」
グラスが強く光だし周りにある赤い光までもが強くなる。辺り一面光覆い尽くされた後には光が消えていた。
グラスがあった場所には1人の男が立っている。黒髪が目まで伸び、黒いコートを羽織っている。首にはセルフィと同じ鎖のマークが印され、黒く輝く。
同じくセルフィの首のマークは黒く輝いている。
「あんたが俺のマスターか、なんかこう、召喚する方法って恥ずかしいな」
「あなたが私の魔物…」
驚いた、魔物だというからゲギャギャとか言いそうな奴かと思っていた。
「魔物といっても人間なのですね。正直驚きました」
「まあな、一応あんたの分身だからな。にしてもこの鎖のマーク…」
異様に力が込められている。しかもそれが自分のマスターにも付いている。
「これは共存するためのものです」
「共存?」
首を傾げる。そりゃ共存はするだろうがなんのために。
「これがある限り私には逆らえない、しかも私が死ねばあなた死ぬ。逆も同じく、あなたが死ねば私も死ぬ」
言ってることは本当だろう。それぐらいしそうな程の力なのだから。
「ふーん、何でそんなことするか聞いていい?」
「あなたが私を殺そうとすれば私は抵抗なんてほぼできないまま殺されるでしょう。それ程あなたは強い」
「まあな」
さぞ当たり前のように言う。これでもセルフィは魔術師の中で特別力が強い方だ。
「ですから、あなたは私を殺せば自由になる。それだけは絶対に避けたい」
こんな化け物が野放しにされたら世界が終わるだろう。
「なーるほど。じゃあさ、マスターが死ぬデメリットは?」
「それは、この鎖のデメリットですからどうしようにもありません」
「あ、そう。そういうことね」
魔物は手に黒く染まった片手剣を出現させた。
そのまま自分の首に剣を当て、ニヤリとこちらを見る。
背筋がぞくりと疼く。身の危険を察知したセルフィは叫んだ。
「動きを止めなさい!」
ガチリ、と剣は微妙に動いて止まった。魔物の首には少し血が出てきている。
「あー、本当に止まるんだ。ははっこりゃ分身の身でありながらも奴隷ってとこだな」
「あなた…今後一切自害はしないように」
ジットーとセルフィは魔物を睨みつける。
「りょーかい、マスター。ははっ」