表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 鳴海

何はともあれ、首は落ちる。

姿勢が悪い。腰を下ろした際に、背中をこれでもかというくらいに丸める癖があるようだ。慢性的な肩こりに悩まされながらも、今更改めようという気概も湧かず。死ぬまでにはどうにかしようとは思っているが、具体的な策はまだ考え中である。

時々思い立って首を上げて後ろに傾けないと、頭が重くて仕方が無い。

特に読み物をしている時は、このまま球体に成り果てるつもりであるかの如く、背筋を丸めている。読書中の私はきっと、どんな時よりも無防備で傷つきやすいのだろう。自然界で体を丸める類の動物たちがそうであるように、この時ばかりは背に腹は変えられぬとばかりに姿勢が崩れる。

日頃姿勢が悪いのも私のセンチメンタルな性分が原因だと言ってしまえば楽なのだが、生憎、運動不足によって脆弱化した体幹が主な理由である。

意識こそすれども、首は落ちる。

授業中や、説教を聞いている間や、病院の待ち時間なんかにはよく、ころりとなる。

姿勢が悪いな、と自分で意識していると、頭の重みで首が、真っ赤に熱された硝子のようにゆっくり、有る程度までは伸びた後に、いよいよ重力に耐えきれず落下するという感覚が訪れたりもする。

もうやたらと頭を支えなくとも良いのはどんなに素晴らしいだろうと思うが、そのような感じがしたらすぐに私は首は後ろに傾けることにしている。こう見えて一応、老後についても多少は考えている私だ。

首が落ちてしまえば肩こりは解消するだろうな、と心の中で呟いて、大きく首を回してみたりもする。その拍子にぐきりと骨が軋むような音が鳴れば、露骨に顔をしかめたりもする。そんな時には決まって私の足元には、もう拾い集められないような硝子の破片と、思い出と面倒事が混合して無数に散らばっているのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ