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恋を知る  作者: 亜莉
4/11

その後河合とは別段何もない。


いつも通り仕事をやり、周りも何も言わない。


よくよく考えればもうみんな大人なのだ。たかが華のない普通の社員が誰を好きであっても、気にすることなど何もないのだ。そう思うとほっとしたこともあったが、所詮お前はその程度と言われているようで、さみしくもあった。


けれど河合に負担のかかることが無いように、仕事はこれまで以上に丁寧にやり、化粧やファッションもどうでもよいかとも思ったが、華がない自分は化粧でもしないともっと枯れてしまいそうだと最低限気を使うことにした。


ただやっぱり・・・飲み会やお誘いはまた遠のいてしまった。



そんなある日、河合が書類を持って亜矢子に話しかけてきた。


「中村さん、午後空いてるかな?今度神谷グループの店舗に出店することになったから、図面と見積もりを持って行くんだけど、一緒に行ける?」


亜矢子は河合から書類を受け取りながら、スケジュールを確認した。


普段取引先の本社に行く予定はほとんどないのだが、新規参入だといろいろ事務手続きが必要だ。

また店舗をメンテナンスに伺うのは亜矢子の方が多い。そのため、一応顔合わせをさせておきたいという事なのだろう。


本当は午後から店舗に行く予定だったが、これは日にちを動かすことができるだろう。


「はい、大丈夫です」


「それじゃあ、会社を11時に出ようか。近くで昼食を食べてからバイヤーに会いに行こう」


「え・・・あぁ・・・・」


ぎこちない亜矢子の返事に河合は首をかしげた。


「あれ?午前何か用事があった?」


「いえ、大丈夫です。・・・では11時に玄関で」


無理に笑顔を作りながら、自分の机に戻る。

ほんの少し前なら、きっと舞い上がってしまうほど嬉しかっただろう。


・・・しかし、今は嬉しさより気後れが勝っている。


ちょっと溜息が出てしまったが、ふと先日の姿勢のいい誘導員の姿が頭をよぎった。

この頃なぜか、危険な目に合わせたにも関わらず、亜矢子に対して真摯に対応してくれたあの誘導員のことを思い出す。


あの後数回見かけたが、相手は仕事をしているし、トラックや重機が良く出入りする工事現場付近にわざわざ車を止めてまで謝りに行くのもなんだかおかしい気がした。だから一度謝る機会が見つからず、そのままになってしまっている。


いつ見ても姿勢を正し丁寧に誘導する彼に、亜矢子はいつも軽くお辞儀をして通っていた。


彼を見ていると、自分もしっかりしなくては、と思うのだ。


朝の通勤で工事現場付近が渋滞を起こしていても、彼の誘導だと何となく渋滞が少ない気がした。そう思うのは自分だけではなさそうで、いつも同じような時間に通っている通勤車もイライラした感じがないのだ。やはり彼の機敏で真摯な態度が良いのだろうと、亜矢子は思っていた。


姿勢を正さなくては。

どんなことがあっても誠実でいようと決めたではないか。


亜矢子は背筋を伸ばして今もらった書類を見ながらスケジュールを組み直していた。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「ではよろしくお願いいたします。失礼いたします」

玄関でバイヤーに見送られた後、河合と亜矢子は息を吐いた。


「中村さん、お疲れ様でした」


「河合さんこそお疲れ様でした」


ここ2、3日残業続きだった河合はこれでやっと休みが取れるようになるはずだ。少しネクタイを緩め、肩を回す河合に亜矢子は笑みを浮かべた。


「河合さん、これから会社に帰りますか?それともどこかと商談ですか?」

「ああ、あとは17時に1件だね。でも会社に帰ると二度手間になるから近くで時間をつぶすよ」

「そうですか、それじゃあ私は・・・」

会社に帰ります、と言葉を続けたかったのだが、河合の言葉がかぶさった。


「中村さん・・・これから少し時間があるかな?ちょっとお茶飲んでいこうよ」


相手に決定権を与えているのに有無を言わさず従える・・・。

流石営業のエースだな、と亜矢子はぼんやり考えていた。





ああ・・・。いつになったらお見合い会場にたどりつけるのでしょうか・・・・?

もう少し過去話にお付き合いください…。


たくさんの方に読んでもらってありがとうございます!

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