表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋を知る  作者: 亜莉
2/11

亜矢子の過去話

亜矢子の仕事は流通業の営業補佐だ。


もともとは事務採用だったのだが、2年前、一人の営業補佐が結婚退社したため、事務員の中では中堅にあたる亜矢子が新しい営業補佐に任命されたのだ。


この会社では営業と補佐がパートナーになって仕事をする。


内向的な彼女を知る人からすれば、「営業!?」と首を傾げられそうだが、あくまで営業の補佐であるため、取引先に出向き、商品を売り込む担当者ではない。


しかし、売り込むための店舗調査、書類作成や売り込んだ後のフォローなどを亜矢子たち補佐が行うため営業同様、忙しいのだ。


当時のパートナーは河合と言い、とても成績のいい男性だった。

根っからの営業気質で皆を楽しませる能力に優れ、分からないことを何度聞いても優しく接してくれる河合に、亜矢子もほのかな恋心を抱くようになった。


河合の事をもっと知りたくて営業部の飲み会に参加したり、友人とショッピングなどもするようになったのは、余裕ができた事はもちろんだったが、少しでもきれいでありたいと願い、自分を磨きたいと思うようになったからだ。





そんな彼女に暗い影を落とす出来事が起こる・・・。






取引先の店舗調査に行こうとして、書類を置き忘れたことを思い出し、もう一度部署に戻ろうとした時のことだった。


「いやー、お前の手腕もすごいけどさー、補佐の中村さんのおかげでもあるよな」


角をまがろうとした時、少しだけドアの空いていた部屋から河合と誰か数人の声が聞こえてきた。砕けた口調から、たぶん同期か、仲の良い先輩、後輩たちと話しているようだ。




補佐の中村、と言えば自分しかいない。何の話だろう?




亜矢子は立ち聞きは良くないと思いながらも、好奇心の方が勝ってしまい、足を止め聞き耳を立てた。・・・少しでも河合が自分に興味を持っていて欲しいと願いながら。





「あぁ。彼女、真面目だからな。」


という、河合の言葉に、誰かが色めかせた声色で提案した。



「どうよ河合、お前中村と公私ともにパートナーになるっていうのはさ~?」



「多分お前に気があると思うんだけどなぁ」



多分私がここで聞いているとは誰も思っていないのだろうな。

秘かに想っていたつもりだったのに、こんなにも周りにはバレバレだったんだ。



恥ずかしさから、いてもたってもいられず亜矢子は足早にその場を立ち去ろうとした。


その後河合が何と言ったのかは分からないが、誰かの声が亜矢子の背中を深く、強く抉る。



「俺はやっぱり庶務の高田とか、受付の柳井が良いな。やっぱり女は華がないとな」



何気ない一言だったのだろうが、亜矢子の心を凍らせるには充分だった。


庶務の高田、受付の柳井とは美人女子社員として有名な2人だ。

元気がよく、面倒見の良い高田は花で言うならと大輪のひまわりのようで、また豊満な肉体とあでやかな雰囲気をもつ柳井は赤い薔薇が似合いそうだ。


勢いよく更衣室のドアを開け、ロッカー前の椅子に音を立てて座ると、我慢していた涙がボロボロこぼれはじめた。


悔しさや、悲しさ、恥ずかしさなどが一気に押し寄せて、泣いてしまった亜矢子が、気を落ち着かせ、メイクをし直して何とか会社から出ることができたのは、それから30分も後の事だった。

















少し寄り道をしておりますが、もうしばらくお付き合いください…。


お気に入り小説にして下さった方、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ