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恋を知る  作者: 亜莉
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亜矢子は大きなため息をついた。



隣では母親が仲人でもある叔母にいろいろ話しかけている。

綺麗に着飾っている母は、いつもとは別人のようだ。


緊張した面持ちで話している内容は今日の段取りだろうか・・・?



亜矢子に縁談の話がやってきたのは、今より3週間も前の話だった。



27歳にもなって、いまだ男性の気配もない亜矢子にやきもきした母が、母と仲がよい叔母に誰かいい人がいないかと泣きついたらしい。


そして頼られると俄然張り切る叔母が早速誰かを見つけ出し、亜矢子ちゃんの為なのよ!と、気乗りのしない亜矢子を説得し・・・その結果、綺麗な着物を着て、車に押し込められて今に至る。


亜矢子にとってありがたい話ではあるのだが、お見合いには少し抵抗があった。

仕事は優秀とまではいかなくても、ある程度大きな仕事を任せてもらえるようになって、丁度面白くなってきたところなのだ。そんな矢先に結婚を前提にお付き合い・・・とは、まだ考えられなかったのだ。


着なれない着物を着ているせいか、少し疲れを感じ、背持たれにもたれかかろうとしたら、「帯が潰れる!!」という二人の声が同時に聞こえた。


その声に驚き、また姿勢を正す。


「・・・着物なんて着なくてもいいのに」


本当に小さくつぶやいたつもりだったが、狭い車内ではその声も拾ったらしい。亜矢子の母が少し亜矢子を睨んで言った。


「まあっ!この子は!せっかっくおばさんが設けてくださった席なんだから、盛装で行くに決まっているでしょう!本当なら振袖を着せたかったぐらいよ?!」



この歳で振袖・・・。

それはちょっと嫌だな。


亜矢子は自分が振袖を着ているところを想像して、げんなりした。

だがここでまた口を開けば、数倍になって言い返してくることが分かっているので、これ以上何も言うことなく、窓に流れる景色を眺めていた。










※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

     




どれくらい走っただろうか。

車はちょうど工事現場の近くに差し掛かった。



「あら、ここの工事現場、まだやっていたのね。・・・。もうかれこれ2年くらいかしら?」


地面を劈く音に顔をしかめながら、叔母が母に話しかけた。


「確かそれくらいだったかしら?長いわよねえ。でも道路の感じとしては大分出来上がっているからもうすぐ終わるのかしらね。」


二人の会話を遠くで聞きながら、今までぼんやりと景色を見つめていた亜矢子が現場近くに視線を彷徨わせた。



「ねえ、亜矢子。あなたいつもここ通るから、よく知っているんじゃないの?」



母の言葉に何も答えず、一点を見つめる亜矢子。




・・・見つめた先には、工事現場の交通整備員が立っていた。

ほんの少し口元を緩めじっと見つめた亜矢子だったが・・・すぐに視線を落とした。




そこで旗を振っていた人は、やる気のなさそうに旗を振る若い整備員だった。




亜矢子はまたため息をついた。





残念だな・・・。

・・・今日はあなたの姿を見たかったのにな・・・。




窓から見上げた空は亜矢子の心情を表すかのように、どんよりとした曇り空だった。





初めての作品です。つたない文章ですが、読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。


誤字訂正いたしました。

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