第5話:5年後の今
あれから…五年程たった。
私はあの事件の二年後にヒロと結婚した。
あの頃…隆意外には考えられなかったのに…。
隆が生きていれば…今ごろ私と隆は結婚していただろう…。
あの日私がコンビニに行かなければ隆は生きていただろう…。
隆が昔…私にくれたコンビニの鮭入りのおにぎりが大好きだった。
あの日はコンビニのおにぎりが食べたかったんじゃなくて…隆を思いだしたかったためなんだろうか…。
私は今病院のベットにいる。
腕には昨日生まれた私とヒロの男の子がいる。
親指をくわえて眠っている。
名前はまだついていない。
「ねぇヒロ。この子の名前…何にする??」
いままで何度もこの質問をしたがヒロはいつも答えてくれない。
「これ…読んでくれ…。」
ヒロは珍しく真剣にヨレヨレになった手紙を差し出してきた。
「えっでもこれ…ヒロ宛って書いてあるよ?えっと…誰から…。」
『華家田隆より』
その文字が目に入った瞬間私に言葉に表せないような複雑な感情がおしよせた。
黙って内容を読んだ。
手紙は隆で溢れていた。
全部わかった…。
「この子の名前…ヒロ…考えてるんでしょ??命名して。」
私は泣いていた。でも笑っていた。あの事件から…初めての正直な笑顔だった。
「隆…大谷隆だ。おせぇぞ…おかえり…。」
ヒロは優しい顔で私の腕の中で眠っている隆に言った。
また…会えたね…。
隆…私…笑って迎えてあげれたよね??
あなたに会えて良かった…。
おかえり…隆。




