表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

1.出会いと始まり

ほっこりできる家族のお話を書きました☘

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

「――あれ?」


 厳しい寒さは通り過ぎたが、まだ少しだけ寒さを感じる早朝の森。毎朝通うこの場所に、見慣れない“何か”がある。


「これは……」


 近付いてみるとそこには白い毛玉のような子犬がいて、無防備に尻を向け、丸くなった体勢を崩さないまま、こちらを窺っている。

 そして、その子犬が守るように寄り添っている布。……その中には、木漏れ日に照らされながらスヤスヤと眠る赤ん坊がいた。


 そっと手を伸ばすと、子犬が小さく唸る。


「大丈夫、痛いことはしないよ」


 安心させるように声を掛け、ふっくらとした頬に優しく指先で触れる。


「やわらかい……」


 今まで触れたことのないような柔らかさと滑らかさに、思わず息を呑んだそのとき、寝ていた赤ん坊の目がゆっくりと開いた。


「あー」


 新緑のような薄い緑色の瞳と目が合う。――なんて、綺麗な瞳をしているのだろう。

 子犬がペロッと赤ん坊の顔を舐めると、キャッキャッと笑い声をあげた。


「君は、どこから来たの?」


 問いかけても、返答があるわけもない。その代わり、頬に触れていた指をギュッと握られる。

 小さく柔らかい、可愛い手。だけど僕の手を握る力は、意外なほどに強い。


「……うちに来るかい?」


 そう、声を掛けて、赤ん坊を包む布ごと抱き上げる。


「もちろん、君も一緒にね」


 子犬にも声を掛けると、スクッと立ち上がりこちらを仰ぎ見た。――まるで言葉がわかっているみたいだ。

 

 家に帰ったらまずはミルクをあげて。この子が着られる服も必要だし、落ち着ける寝場所も作らないと。


「おじいさまもおばあさまも、ビックリするだろうな」


 でもきっと、優しく受け入れてくれる。

 変わらない平穏な日常に、突然舞い降りた変化。これからのことに心を弾ませながら、家路を急いだ。



――――――――――――――

 

「ルカ、そろそろお昼ごはんだからお兄ちゃんを呼んできてもらえる?」


「はぁーい。ニクシュ、レオにぃのとこまでのしぇてって」


「承知。しっかり捕まってろよ」


 そう言ってぼくを乗せてくれるのは、大きくて、白くって、ふわふわなぼくの相棒。――5年前、ぼくは森の中でこのニクスと一緒に拾われたらしい。覚えていないけれど。

 いつだってやさしく抱っこしてくれていたレオにぃの笑顔と。やさしいけどたまにこわいばぁば、元気で声が大きいじぃじ。何をするときもどこに行くときも、隣にいるニクス。僕の記憶には、ずっとだいすきな家族がいる。


「レオにぃ!」


「あ、ルゥ。迎えに来てくれたの?」


「うん!ごはんだよーって」


「もうそんな時間なんだね。いつもありがとう」


「へへ。どういたしまして」


 頭を撫でてくれるレオにぃの手は、今日もやさしい。レオにぃに頭を撫でてもらえると、「だいすきだよ」って言われているみたいでうれしいんだ。

 ――“拾われた子”なんだ、って教えられたとき。だいすきな家族とは本当の家族じゃないんだって思ってかなしかった。だけど、レオにぃがぎゅってしてくれたから。「ルカは僕たちの大切な家族だよ」って、頭を撫でてくれたから。もうさみしくなくなった。


「じゃあ、帰ろうか。今日はルゥの大好きなレプスが獲れたから、夜はお祖母様にソテーにしてもらおうね」


「やっちゃあ!ぼく、ありぇだいすき!」


「ふふ。ルゥが喜んでくれて、俺もうれしいよ」


 ぼくはニクスに乗って、レオにぃは歩いて。ゆっくりお家に向かいながら今日の“せいか”を教えてくれる。

 レオにぃは、じぃじみたいにゴツゴツしていないけれど、とってもつよい。魔法と弓を使ってあっという間にやっつけちゃうの。スパーンッて。

 

「ぼくもレオにぃみたいに狩りがしたいなぁ」


「ルゥにはまだ早いんじゃないかな?それよりも今はだいすきなご本を読んで言葉を覚えたり、ニクスと追いかけっこしたり、ルゥの好きなことをいっぱい楽しんでほしいな。それで、ごはんの時間になったらまた俺を迎えに来てくれたらうれしい」


「レオにぃ、うれしい?」


「うん、うれしいよ。俺は、ルゥが笑顔でいることが何よりもうれしいんだ。8歳の秋には魔法適性を調べることになるから、それが済んでからゆっくり、ルゥのできることややりたいことを探していこうね」


「うん!魔法つかえるようになるの、たのしみ!」


「……魔法が使えても使えなくても、ルゥは大切な子だからね」


「ふふふ、うれしい。ぼくもね、レオにぃがたいせつなのよ」


「……うん。ありがとう、ルゥ」


 笑っているのに、ちょっとだけ泣いちゃいそうなレオにぃのお顔。何でかはわからないけれど、たまにこの顔をするレオにぃを見るとぼくのおむねがギュッてなる。――やだな、レオにぃのさみしいお顔。

 だから、ぼくはわざと大きい声で。


「レオにぃ!おいしそうなにおいがすりゅよ!今日のお昼ごはんはなんだろうねぇ」


「ふふ、何だろうね。お腹空いたの?」


「ペコペコよー」


 笑顔が戻ったレオにぃ。

 ずっとずっと、わらっていてほしいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ