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捨てられた侯爵令嬢は、筋肉ですべてを凌駕する

作者: 高新豆

「うちの息子を泣かせたらしいな」


鋭い視線をこちらに向けているのは、王宮で絶対的な権力を持つ男、デグ・エミュール公爵。 

私、セレナ・フロウディア侯爵令嬢はこの大広間という人目につく場所で辱められている最中だ。


「いえ、そんなことしてないで――」

「黙れ! 私の子を疑うというのか」

「……」


事の発端は昨日の事件だった。


私は、この王城に隣接する学園に一緒に通っている、婚約者のカイ・ソロウ王太子と一緒に帰ろうと、彼の教室へ向かっていた。 

その道中で、私より一学年下の少女が、三人の上級生から暴行を受けているのを目撃して、すぐさま止めに入った……

その主犯格がこいつの息子であるとは知らずに。


私はすぐに少女を抱えて逃げた。

けど、その息子は邪魔されたのが気に食わなかったようで、父親にチクった、というわけらしい。


「ドラム缶に閉じ込めて転げまわしたと聞いたぞ、なんて野蛮な女だ」


なわけあるか。 


「とにかくお前のような奴を王太子、ましてや王城の近くにすらおいておくことはできん。 ヒンク・クスク辺境伯のところに嫁ぐがいい」

「えっ」


そ、そんな……!

だって、そこってここから一週間はかかる距離だし、なにより……


「では、私と王太子との婚約は……!」

「破棄させていただく」


ショックで視界が明滅する。 

卒業は間近に迫っているというのに、王太子と離れ離れになる……考えただけで手が震える。


「も、申し訳ありませんでした……どうかそれだけは」

「駄目だ」

「っ……」


ふと視線を感じて目を向けると、赤い目を腫らしたカイが立ち止まってこちらを見ていた。

それを遮るように、付添人の案内で、すぐ別室に通されてしまった。

彼もきっと、事情は聞いているんでしょう。 


身内だけを大事に、私の最愛の人を泣かせ――いよいよ、この目の前の男への憎悪が抑えきれなくなってきた。 今も私を虫を見るような目で見下し、ほくそ笑んでいる。

私は必ず戻ってくる、そしてこのクソ野郎をぶっ潰す――そう決心した。



数日後、私は学園を卒業し、王城を出発した。

幸い、同行する数人の護衛の人たちは私の境遇に同情してくれたようで、居心地は良かった。


一週間ほど馬車に揺られ、森の奥深くまで来て、ようやく辺境伯邸に到着した。


「はじめまして、セレナさん」


そういって、辺境伯様が直々にお出迎えしてくださった。

自室へ向かい、色々と身支度を済ませると、一緒にお食事を、と誘われた。


「話は聞いています、さぞお辛かったでしょう」

「ああ、いえ……お気遣いありがとうございます」

「厄介な男に目をつけられてしまいましたな」

「あなたも彼をご存知で?」

「もちろん。 あの人の自己ちゅ……子煩悩っぷりと言ったら王城一ですよ」

 

やっぱり他の貴族からもよく思われていないのね。 顔からしてそうだもん。


「あなた、もともとの婚約者がいるんでしょう? また王城に戻りたいとは思わないのですか」

「それは……」

「私はあなたの助けになりたい。 できることなら何でもします」


彼の目に嘘の色はなかった。


「でも」

「いいんですよ、正直に」

「……」


カイとの思い出が脳裏にあふれた。

あどけない笑顔。 温かくて、大きな手。 涙が零れそうになる。

本来許されないこと。 だけど、ここはお言葉に甘えさせていただこう。


「私……カイ・ソロウ王太子と……一緒にいたいです……!!」


辺境伯は静かに微笑んだ。 


「それでいい。 私もなにかコンタクトを取ってみます。 婚姻が正式に受理されるまで、時間は十分にあるでしょう」

「……ありがとうございますっ」


私は自室に戻り、考え事をしていた。 ふと窓の外に目をやると、太陽はまだ沈みそうになかった。

ちょっと散策してみようと思い、召使いさんにしばらくしたら戻ることを伝え、館の外に出た。 護衛がひとりついてきてくれた

しばらく木々のアーチを抜けていく。 

空気が美味しい。 昔、家族で行った湖を思い出した。


あら、と思って立ち止まったのは、一軒の小さな店を見かけたからだ。

その立て看板を見てみると、【Berry's Muscle House】と書かれていた。

なぜだか、俄然興味が湧いてきた。 灯りもついてないし、ちょっと怖いけど、入ってみることに決めた。 


「私は玄関前で待っていますので、ごゆっくり」

「ありがとうございます」


護衛さんに見送られ、恐る恐るドアを開ける。


「おじゃましまーす……」


しばらくすると、奥からガサゴソと物音がして、品の良さそうなおばあさんが出迎えてくれた。


「あらあらこんにちは、どこからいらっしゃったの?」

「あ〜えと、ちょっと散歩の途中に見つけて……」


流石に辺境伯邸から、とは言えない。


「そうだったのね、ぜひゆっくりしていって」

「ありがとうございます」


テーブルに座り、出されたお茶に口をつけた。


「あの、ここはどういった場所なんですか?」

「お嬢さん、トレーニングジムって聞いた事はあるかい」

「ああ、筋肉をつけたい人が行く……」

「そうそう! ここも昔は繁盛してたんだけどねえ、森が生い茂っちゃったもんだから。 最近はずっと別の仕事をしているよ」


お婆さんはさみしげに言った。


「そうなんですね……」

「でも久しぶりのお客様だから嬉しいよ、ありがとう」


お婆さんの笑顔は眩しい。


「そうだ、よかったらジム、体験してく?」

「えーーっ、うれしいっ」


私が案内された部屋には、見たことのない機械がたくさんあった。


「じゃ、トレーニングウェアに着替えよう。 服を脱いでくれるかな」

「わかりました」


私はそう言ってドレスの肩のアーチに指を入れ、腰の下までおろした。

これで大丈夫でしょうか――そう言おうとして顔を上げたとき……


(な……何なんだ、この子はッ!! 押しつぶされるような筋肉の波動は!! この子のインナーマッスルは脈打っている、まるで産声を上げるのを今か今かと待つ赤子のように……ッ!!)


おばあさんは顔面蒼白で震えていたのだ。


(こんなものを私が鍛えるとはとても恐れ多い……しかし!)

「ど、どうしたんですか」


私の質問には答えず、おばあさんはおもむろに年季の入った竹刀を取り出し、


(好奇心、そして何よりトレーナー魂には抗えないッ!!!)


ぱしん、と床に叩きつけて叫んだ。


「お嬢ちゃん! 君は最高の肉体を持っている!! ぜひあたしに鍛えさせてくれッ」


その剣幕に押されて、私はうなずくしかできなかった。


……


「はいランニングゥ゙!!」

「エッホ……エッホ……!!」


「はいスクワットォ゙!!」

「フーッ……フーッ……!!」


「はいサンドバッグゥ゙!!」

「ワンツーっ……ワンツーっ……!!」


「はいラットプルダウンッ!!」

「ヨイショ……ヨイショ……!!」


「はいベンチプレスゥ゙!!」

「うおおおおおおおおおおああああ!!!!!!!!!!」



…・・・


鬼のようなトレーニングが終わった。

こんなに爽快な気分になったのは初めてだ。


「ふぅ……ありがとうございました。 生まれ変わったように思えます」

「こちらこそ。 最高に楽しかったよ……! また明日にでも来てよ」


おばあさんは竹刀を片付け、満足そうに笑みを浮かべた。


「あまり帰りが遅くなったら、ご両親が心配するだろう」

「そうですね、そろそろ失礼させていただきます」

「ねえ、もしよかったらさ……」



「……へええ、すっごく面白そう! ぜひとも!」


私は依頼を快諾した。 顔は隠せるらしいし、何より楽しそうだった。

その後、おばあさんと挨拶を交わし、ドアを開けて外へ出た。 空はもう夕暮れ時で、一層きれいに見えた。


おや? でも、護衛さんが見当たらない。

すると、遠くで金属がぶつかりあう音が聞こえた。


その方向を見てみたら……


「あれは!!」


護衛さんが盗賊たちに囲まれている!!

どうしよう……怖いけど助けなきゃ……でも、今の私なら……!!


「あなた達、おどきなさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!」


全速力で走る。 盗賊の一人に狙いを定めた。

あと五メートル。 四、三。


「でやぁっ!!!」


足蹴りをお見舞いしようとした瞬間。

私の頭上の木にぶら下がっていたサルが、バナナの皮を落とした。

ちょうどそれが私の蹴りの軸足の下に落ち、思い切りふんづけてしまった。


「あっ」


狙いが大きくブレる。

もう修正はできない。 私の右足はみるみる護衛さんへ向かってゆく。

より詳しく言えば、護衛さんの股間に。 


「あ゜お゛っ っ」


私のつま先は鎧を突き破り、彼の睾丸に直撃した。 彼は修羅のような顔になった。

盗賊たちはそれを見て、ひええっ、と恐れをなして退散していった。


「ごめんなさい! だ、大丈夫ですか、色々……」


私はすぐさま、倒れ込む護衛さんに駆け寄った。


「ぁ……ぅん……私は大丈夫でございま――えっ誰ぇ!?」

「えっ! いや、セレナです……」

「……何があったんですか??」


わたしたちは帰路についた。 どうやら別人のような体になってしまったらしい。


「ただいま帰りました〜」


ロビーでは辺境伯様が召使いさんと立ち話をしているところだった。


「おお、おかえりなさ――えっ誰ぇ!?」


やっぱり。



その頃、王城では。

『さあ〜〜いよいよ開幕! ベリー氏主催、アズラン帝国一・ボディビル大会ッ!!』


わあーーっっ、とモニター前で歓声が上がる。


「今年も皆釘付けだな」


デグ公爵は大広間にいた。

毎年行われる帝国のボディビルの祭典。 奇妙なことに、貴族たちはこの大会の観戦を心待ちにしているのだ。


『早速始めましょう!!  エントリーナンバーワン! 初出場かつ運動未経験ながら圧倒的な肉体美! 期待のルーキー、プリンセス・Sだっ!!!』


ざわめきが広がった。


「おい、初心者でこのカラダか?」

「どこが肩だか分かんねえよ……」

「腹筋の奥底が影になって見えないぞ」

「足ふっっっと」



「おお、これは見事な肉体――なっ!?」

デグの脳内に電流が走った。

顔こそ隠れているが、あの絹のような金髪……プリンセス・【S】……そして彼女の生まれ持った体質……


「セレナなのか……?」


その時、部下が慌ててこちらへ走ってきた。


「公爵、このような便りが……!」

「見せてみろ」


そこには、セレナ・フロウディアのカイ・ソロウとの婚姻回復を求める文章が書いてあった。 その具体的な条件は、決闘。

双方の陣営の戦に優れる者を一対一で戦わせ、勝利した側の要求を聞き入れる、由緒正しき決定手段。

つまり、今回の場合、こちらの手下の誰かとセレナが戦うことになる。


「辺境伯……あの女と手を組んだか!」



ときは十数年遡る。

セレナが生まれたときの検査で、異常な筋繊維の成長予測が指摘された。

これを野放しにすれば、王城がひっくり返るほど強大な力となる――医者はそう言った。

私達はすぐに手を回し、彼女に一切の運動を禁じた。

それが今になって……


「いかがなさいますか……?」

「……辺境伯の頼みだ、無視はできん……受け入れろ。 すぐに準備に取りかかれ、抜かりなくな」

「……承知いたしました」



侯爵令嬢が戻って来る――噂はすぐに広まった。 もちろん王太子のところにも。


「よかったですね! 戻ってきますよ、あなたの最愛のお方」


はつらつとカイに話しかけるのは、新たに王太子の婚約者になる、はずであったニュー・フェリア。


「ああ、本当に嬉しいよ、もう二度と会えないと思っていたから……君には申し訳ないけど」


「だから〜、謝らないでいいと言ったではありませんか。 私のことはどうでもよいのです。 私もセレナさんを応援します。 真実の愛に勝るものは、何もありませんっ!」


「……ありがとう」


カイが二ューに笑いかけたとき、王城の外が突然騒がしくなった。


「「来た!」」


二人は顔を見合わせ、窓から身を乗り出した。

門の前に到着した馬車は、間違いなく、三週間前見送ったものだった。

ゆっくりとその扉が開く。 

彼女の丸太のような足が地につき、全身がさらされた。


「か……かっこいい!!」


一見すると別人のように見えるが、節々に彼女の面影がある。

表情は以前より遥かに凛々しくなっていた。

彼女は学園生の一人の少女に花束を渡され、にこやかに返事をした。


「生で見てもすごい……あれなら決闘も、きっと楽勝ですわ」

「よし、一足先に中央闘技場に向かおう」

「はいっ」



私、セレナは控室に通された。

椅子に座り、あの子に言われた通りすぐに花束の中の手紙に目を通し、紅茶を口に含む。


「それでは入場のときになったらお知らせします」


それを見てから、係員は一切表情を変えず、部屋から去った。

今日が運命の日。相手が誰だろうと、叩きのめすのみ。 デグの思惑通りにはさせない……



『両の義の元、ここに集いし者』


アナウンス。 アリーナが歓声に包まれる。

二人の戦士がステージの対角線の石扉から現れた。


「上手くやれよ……ソリド」


デグも固唾をのんで見守る。

ソリド・スクアド。 デグの直属の部下であり、刀術の使い手。


決闘では、それぞれに一本の剣が配布される。 ソリドはプロフェッショナルなのだ。 普通に考えて、彼が負けるはずがない。  

しかし今回の相手は普通ではない。 万が一があるやもしれぬ。



ソリドは剣を握り直し、眼前に構えた。

(この女……構えでわかる。 素人だ、なのに……)


セレナは両手で柄を握り込み、仁王立ちのまま微動だにしない。


『決闘……』


曇り空の下、両者、睨み合う。

ソリドは姿勢を低く取った。


『開始』


ひときわの熱狂が会場を包み込む。

ソリドは大きく地を蹴り、怪物とも思える巨体へ一飛び。

狙うは首。


「セイッッ」


射程圏内で、剣を振り抜く。

しかし、響いたのは金属音だった。

受け止められている。 あっちの鍔に。


「なっ、ま、まだだ!」


連撃を切りこむ。 普段の相手であればすでにミンチになっているところだが、こちらの剣はすべて阻まれる。


(こいつ、肉体の動作が速い! だから剣術の知識がなくとも、見てから防御が可能……!)


重い一撃を決めようと、刃に体重をかけた。

その時。


「あっ……」


刀身が、ガッチリとつままれた。 セレナの二本の指に。


「うおおっ」


ソリドの剣はぶんっ、といなされ、前方ががら空きになる。

セレナは、その目の前の隙を逃さず、大きく振りかぶる。


(まずいっ……だが、がら空きなのはそっちだ!)


ソリドはすかさず手首を返し、空いた胸を一文字に斬りつけてやろう、と試みた。

剣先はアーチを描き、セレナの左脇腹を直撃。

――やった、このまま引き裂いてやる!

勝利を確信し、顔を上げた。


「……ッ!!!!!」

「……」


この女、怯んでいない! こちらを睨んで、表情一つ変えず……! 時間がない。 頭がかち割られる!

まずいっ、本当に、死ぬ……!


必死で剣を引き抜き、両手で横に持ち、防御。

直後、双方の刃と刃が垂直にぶつかり合う。 頭上から轟音が鳴り響く。

あたりに砂の粉塵が舞い上がった。


「ぐあっっ」


感じたことのない衝撃が手を伝う。 こちらの刀身にヒビが入る。 もうもたない。


しかたなしに、ソリドは手を放し、後方へ跳んだ。

息が荒くなっている。 これまでのどんな厳しい修行の時よりも。


(あれは……あれはもう効き始めているはずだ……時間を稼がないと……)


ソリドはゆっくり後ずさりをする。 セレナも、それを追い詰めるように歩みを寄る。


(クソ、まだなのか……)


真後ろは冷たい壁。 完全に逃げ場がなくなった。

ソリドは壁にへばりついた。


「たのむ、君の勝ちでいい……命だけは――ごふっ」


セレナはソリドの首根っこを掴み、顔を引き寄せた。

そして……!!


「おえええええええ」

「……っ!? うぷ、う、ごふ」


彼女は口からなにかを吐き出し、ソリドに口移しで飲ませた。


「あ、あ、これ、ま……さか……どく……」


ソリドは泡を吹いて倒れた。


静寂が会場を包んだ。

しかし程なくして、セレナは叫んだ。


「さあ! デグ公爵!! これをどう説明するのですか!! 今のは、控室で飲まされた毒入りの紅茶です!! 喉の筋肉で、飲み込まないようずっとせき止めておいたのです」


オーディエンスが大いにざわつく。


デグは強烈なめまいに襲われていた。


「こ、公爵、大丈夫ですか……?」

「大丈夫なワケがないだろう!! クソ……なぜ気づかれた……」


「勇気ある告発のおかげで、私は生きています。 ありがとう!」


セレナは高らかに叫ぶ。



(礼には及びません……ただの恩返しです)


あの時の少女は、ロビー観戦モニターの前で微笑んだ。

今日、王城内はセキュリティのため、貴族のほかは、学園生にのみ開放されていた。

卑怯で有名な公爵のことだ、必ず細工をする……そう考えた彼女は、隙をついてキッチンに忍び込み、紅茶に粉が入れられるのを見た。 すぐに手紙に書き記した。


それを仕込んだのが、到着直後に渡した花束。 まさか、そんな純粋無垢に見える贈り物を検査しようとするものはいない。 情報は確実に、安全に流せた。



「ちいっっ」


デグは隣の部下から有線マイクを奪い取った。


「ええい! 全員、あの女をひっ捕らえろ! 今すぐに……!」


罵声が場内のスピーカーから発せられる。

しかし、誰も彼の言う通りにはしない。 それどころか……


「公爵。 あなたを逮捕する」


デグを取り囲んだのは多数の黒い鎧を着た警備兵。 観覧席の一角が黒い塊となった。


「何をいうか……! 目上の者に向かって何たる無礼――」

「これは国王からの命令です」

「……国王……?」


デグは膝から崩れ落ちた。 


「ご同行願います」


「い、いやだ! そ、そうだ、ニュー・フェリア!! 貴様、なぜ反対しなかった!! 王太子の妻という立場が惜しくはないのか!!」


「ありません」


ニューは言い切った。


「あなたのような、神聖な決闘を、そして真実の愛を侮辱した者の命乞いなど聞きたくありません」


「そのとおりだ」


カイも口を挟んだ。


「私、カイ・ソロウの正式な婚約者はセレナ・フロウディアである! 皆の者、異論はないな」


どっと空気が震えるほどの、祝福の声が飛び交った。

セレナの視界の隅では、デグが抵抗虚しく連行されているのが見えた。


『勝者、セレナ・フロウディア』


決闘終了のアナウンス。

石扉が解放された。

そこから真っ先に飛び出してきたのは例の二人だった。


「セレナぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」

「セレナさーーーん!!」


セレナは、フィアンセから強く抱きしめられた。

そのまま泣き崩れるカイと、またそれを見て、静かに涙をこぼすニュー。


「よかったあ……もう一生会えないかと……」


「うふふ。 ねえ、今日はたくさん美味しいものを食べたいわ。  たまにはチートデイも大事だから」


「ああ、ああ!! もちろんだよ!今夜はパーティだっ」


セレナはカイを抱きしめ、幸せに満ちて青空の下に立っていた。


「これからよろしくね、あなた」

これにておしまいです。

もし、面白かったなどと思ってもらえたなら、

★5をつけてくれたり、ブックマークしてくれると泣いて喜びます。

また次の作品でお会いしましょう。

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