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第七章 当事者たちのその後
元凶の佐藤ケンジは、もはや事態を傍観するしかなかった。
彼は友人のリョウ(30)と居酒屋で愚痴をこぼしていた。
「俺、何したんだっけ?」
「ペットボトル持った女の子の写真を投稿した」
「それだけ?」
「それだけ。世界を恐怖に……とでも思ったか? なんて厚かましい」
「で、今何が起きてるんだっけ?」
「学会が炎上してる。大文字焼きをしてたら、山火事に発展したくらいにな」
「なんで?」
「君の炎上を研究した学者たちが喧嘩してる」
「意味わからん……」
佐藤がやりきれない表情でスマホを眺める隣で、リョウは三分の一ほど残ったビールを一気に飲み干した。
「でもさ、考えてみれば面白いよな。一枚の写真が、最終的に学会を炎上させるなんて」
「なんだっけな……バタフライ効果? ってやつ?」
「そんな大層な名前つけるものか? そうだな……バタフライ効果の下位互換だな。バカが舞い上がるから【バカフライ効果】とでも名付けようか」
馬鹿げた言葉に、佐藤が憑き物が落ちたように笑うと、リョウはそれでいいと空のコップを掲げ、二人は乾杯した。