第五章 専門家も感染
マリコは事態の推移を冷静に分析していた。
しかし、彼女自身も気づかないうちに”感染”していた。
「この炎上を解決するには、根本的な社会意識の改革が必要です」
マリコは新しいコンサルティング手法を開発した。
【集団ヒステリー根絶プログラム】だ。SNSユーザーの心理分析、炎上パターンの予測、そして【正しい正義感】の教育。
彼女は業界のセミナーで講演した。
「私たちはネット上の集団ヒステリーと戦わなければなりません。一人一人が正しい判断力を身につけ、感情的な反応ではなく、論理的な思考で問題に対処する必要があります」
マリ子の言葉に聴衆は感動した。
拍手が鳴り響いた。それはやまびこのように途切れることはなかった。
『田村さんの言う通りです!』
『集団ヒステリーを撲滅しましょう!』
『#ヒステリー撲滅運動』
新しいハッシュタグがトレンド入りした。
そして【集団ヒステリー撲滅運動】の信者たちが、今度は【間違った正義感】を持つ人々を攻撃し始めた。
『あいつらは感情的すぎる』
『論理的思考ができない人間は発言するな』
『科学的根拠も示さずに批判するな』
マリコは気づいていなかった。自分が新たな集団ヒステリーの教祖になっていることを。