第三章 正義の戦士たち
一方、SNS上では【正義の戦士】たちが活動を本格化させていた。
大学生のユウキ(19)は、友人たちとコミュニティチャットで作戦会議を開いていた。
「この企業の過去のポストも全部チェックした?」
「してる。2年前にクリスマスツリーの写真上げてるけど、これって森林伐採の象徴じゃない?」
「マジかよ……追加炎上案件だな」
「あ、社長の画像投稿SNSを見つけた。肉料理の写真めっちゃ上げてる。動物愛護の観点からも問題ありだな」
彼らは自分たちを【環境正義軍】と名乗り、24時間体制で企業の過去を掘り返していた。
別のグループでは、主婦のアキコ(42)が中心となって【企業倫理監視団】を結成していた。
「みなさん、この企業の製品を買わないだけでは不十分です」アキコはライブ配信で熱弁した。「取引先企業にも抗議をしましょう。この企業と関わる全ての会社に、環境意識の重要性を教えなければなりません」
視聴者からのコメントが、滝のような速さで流れる。
『アキコさん正しい!』
『企業は反省しろ!』
『環境を守るのは私たちの使命!』
しかし、誰も気づいていなかった。アキコの背景に映るテーブルの上に、デパートで買った使い捨てのプラスチック容器に入った弁当が置かれていることを。