第二章 炎上対策コンサルタント
その日の夕方、【炎上対策コンサルタント】の田村マリコ(35)に電話がかかってきた。
彼女はこの業界では有名人で、過去に数々の炎上を鎮火させてきた実績を持つ。
「また環境系ですか」マリコは溜息をついた。「最近多いんですよね、エコ炎上系が……」
翌朝。マリコは佐藤の会社を訪問した。会議室には役員たちが揃い、全員が疲れ切った表情をしていた。
「現状を報告します」マリコはホワイトボードに向かった。「炎上開始から24時間で、関連ポスト数は45000件。ハッシュタグ『#偽善企業』がトレンド入り。動画サイトにも告発動画が12本アップされ、最も再生数の多いものは既に30万回再生」
「で、どうすれば?」社長が震え声で尋ねた。
「まず、謝罪文を出します。そして、環境団体に寄付をして、社員全員に環境教育を受けさせ、今後はペットボトルの使用を全面禁止にします」
「それで終わりますか?」
「いえ」マリコは首を横に振った。「それで新たな炎上が始まります」
「は?」
「謝罪が軽すぎるという炎上、寄付先の団体が過去に問題を起こしていたという炎上、環境教育講師の選定で炎上、ペットボトル禁止が差別に値するという炎上。そうですね……。大体7段階くらいの炎上を経て、3ヶ月後に沈静化する予定です」
役員達は先の長い話に絶句した。