10
大家さんに異世界との縁がそろそろ切れると教えてもらってから数か月が経過し、完全に縁が切れたと知らされた。
私より前から住んでいたハナちゃんより早く切れたのは驚いたけれども、ハナちゃんは自分のことのように喜んでくれた。
引っ越し当日を迎え、ハナちゃんは隣人でなくなることを嘆いていたが、これからも二人でお喋りやお出掛けを楽しみたいと伝えたら涙目になりながら「私も!」と力強く返事をしてくれて私も泣いてしまった。
知らない世界に転生して、理不尽な目に遭って、何で自分がこんな目に合わないといけないのだろうと思ったが、奇跡的に現世に帰ることが出来て、ハナちゃんという最高の友達ができた。
確かに現世でも生きづらさを感じたり、生活するうえで悲しいことも苦しいことも沢山ある。
でも、些細なことでも幸せだと感じることが存在するのは事実で、私はその幸せを大切にして生きていきたい。
あとは新居に移動するだけになり、アパートの外に出るとハナちゃんと大家さんが私のことを待っていた。
「アキちゃん、また予定を合わせてどこかに行こうね!」
「もちろん!」
「アキさん、お元気で」
「大家さん、お世話になりました」
二人に手を振り、アパートを去って行く。
異世界では生きられなかったけれど、私は現世で、この世界で生きていく。
【完】




