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鎌倉殿と十三人狼  作者: AI中毒
一章 呪いと遊戯の始まり
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三偽 未来に向いし 苦渋の正着

三周目の終わり、犠牲が出たのちに、生き残り組が苦渋の決断をしたらどうなったか、IFストーリーとなります。

 三周目。多くの血を流した末に、人が勝利を手にした。それは二周目よりも明らかに多くの犠牲を払い、誰にとっても成功とは言い難い結末であった。


 ゴーン、ゴーン、ゴーン


人狼 生存なし。狂人も死亡

民 四人生存。近衛は死亡も勝利。

勝者、民。


 ゴーン、ゴーン、ゴーン


「おめでとウ、と言っていいのかな。今回民の勝ちカ。でも皆、浮かない顔だネ」


 無論、勝者の四人は立腹である。


「あなた、話と違うじゃない!?」


「いうただロ。いつどこで強制力が働くかハ、我も分からんト。それが、一日だっただけの事ヨ」


「……」


「しかたないか……だとしたら、次の周回で、役に関係なく、私たち三人で話をするしかないね」


「そうですね姉上。遊戯一つ一つに、ある程度の大事さはあれど、もうその域を超えてきています」


「そいや、俺にとっても二度目だったが、ふたりは何度目だ?」


「わからないけれど、点数からして最低でも三度目ね。人が連勝するのはあまりなさそうだから、おそらく三回であっている」


 ここで、もう一人、少し長き眠りから起き上がった。


「んん、義姉上? それに、義時と、三浦か。巴殿も」


「え? 九郎殿? あなた生きていたのですか?」


「あア、近衛って役があるだロ? それの条件をよく見てミ。ついでに狂人もナ」


『近衛 一 人狼に狙われし者を当てたとき、その死を免れる。自ら死せども勝てば、呪いは解け、未来へ道は開く。


狂者 一 人の身にて人狼に味方をなす。人狼が勝てば、その記憶を二つ持ち越してやり直せる。負ければ二つ消える』


「なるほど、つまり、九郎殿が近衛だったのですね」


「はい義姉上。そして、おそらく人狼であった兄上と、共倒れといったところでしょうか」


「おそらくそうね。ちなみに崇徳様、今回、誰がどんな役回りであったか、見ることは可能ですか?」


「そうだナ、それも含めて、特典を紹介しよウ。今回は、民として勝利したから、一点ずつダ。民の勝ち負けは一点の増減、狂人は二点、人狼は三点の増減だヨ。そして、特典はこれサ。


 呪いの仕組み、規則の記憶 一点

 役割の記憶 一点

 推移、人の歴史の記憶 二点

 推移、役の歴史の記憶 二点 ただし、一点のどちらかは必須。実質三点必要

 全ての記憶 五点

 

 前回より前のが欲しけれバ、同じ点を払うがいイ。ちなみに、点の引き継ぎは、勝敗だけで決まルから、今残しておいても今はないヨ」


 ここで、姉の政子は、弟の小四郎、すなわち義時に、話を持ちかける。


「この、役の歴史、ってやつですね。三点は少し大きいけれど……小四郎、分け取りでいいよね? 私が歴史、あなたが役割、でいい?」


「わかりました姉上」


「ン? ここで終わりにしてもいいんだゾ?」




――ここで、ある秤が、少しだけ逆側に傾く。そして、歴史の分水嶺は、異なる方向に水を導く――




「え、あ、そうか。でも……」


「姉上! ここは是非もありません。積み上げた犠牲の上に、より良き先の世を作り上げてゆくは武門のならい。兄上や、一門の皆の遺志は、自らが生き抜くことにあらず。この呪いを解き放ち、崇徳様を鎮めあそばし、まだ見ぬ先の世に進むことこそ、彼らの思いを遂げられるのです!」


「……わかりました。それでは、特典は受け取らず、呪いの解放を願います。崇徳様、いざ、お鎮まりあそばされるよう、切に願い、切に祈り申し上げます」


「仕方ないネ。自ら決めた呪いだヨ。では現世の残りの生涯、強く生き抜くのだヨ!」


「「「「「ははっ!」」」」」



――そうして、呪いを解かれた五人は、未来へと歩を進める――




 兄に代わり生き残った源義経は、政事の才なきを自覚していたため、鎌倉を中心とした政事を北条政子、北条義時、三浦義村にまかせる。代々続く鎌倉殿の子孫を主にたてつつ、北条家、三浦家が協力して政を推し進めていく。鎌倉の世は少しばかり長く続く。


 政子や義時よりもやや長く生きる三浦義村が、頼朝の血筋と義経の血筋の間で生じうる争いを、常に未然に防ぐ形で対応する。その手腕は、義時の子である泰時と合わせて、鎌倉中興の祖と称される。


 巴はひたすら木曽義仲や頼朝らの菩提を弔いつつ、わずかに身に残る感覚を頼りに、国内に残る呪いの残滓や、その他の呪いの種を見つけ出しては調伏してゆく。


 そして義経自らは、平清盛が宋と結んだ貿易協定をさらに発展させる。僧から聞いた「世界は丸いかもしれない」という説に加え、自らと年代を同じうする、チンギス・ハーンなる者が、次々に西進する活躍を聞く。そして、宋の船を買い取って改造し、東の海に進み出でる。


 その先いかなる試練、そしていかなる波乱がこの国を、また、少しだけ変わったこの国の様相や、呪いの残滓が、どう作用するのか。その未来は、誰にもわからない。


――この未来は、まだまだこれからである――


 〜仮想輪廻 三 完〜






「ってなれバいいんだけどサ、彼らが本当に満足して抜け出セル可能性っテ、どれくらいなんだろうネ?」


「ん? 八人いる身内のなかで、六人以上が生き残るだけなら、ゼロではないんだろう?」


「まず、八人の中二、人狼と狂人が合わせて二人以下ってのハ、大体百に五十一だそうダヨ」


「どうやったんだ?」


「暇だったから、サイコロいろいろ作って試してみたヨ」


「便利な呪いだな」


「そしテ、絶対に生き残らないといけない三人二、人狼や狂人がいない可能性ハ、三割くらいだナ」


「てことは、そもそもあやつらが未来へ進む道筋がありうるのが、二割に満たんってことでいいのか」


「だネ。それニ、遊戯の中でもやられちゃならんかラ、近衛や役持ちがそっちいた方が良かったリ、共者も二人ともそっちにいるベキだヨ。特に、やたら死にやすい奴もいるシ。あのイキのイイ、若いヤツとカ」


「義経か。頼朝もかなりのものだな。そうなると、どんどん可能性は減るのではないか? それも、掛け算だ」


「そうなんだヨ。結局あの条件は、百のうちの四だけだったヨ。そこに、敵する五人を完封出来るってのを加えたラ、もう半分以下何じゃないカナ? そっちに貴様もいることダシ」


「それは難しすぎるな。五十かかるってことではないか。それが出るのを待ち続けていたら、誰かしら輪廻の輪に飲まれて、次のやつが入ってきてしまったり、最悪誰かが贄に取り込まれてしまうだろう」


「そだネ。だから、大人数が確実に抜け出す、なんてのハ、そうできるもんじゃないのサ」


「よしんばそれに辿り着いたとして、もっと良い選択が思いつかないような最良の状況、ってことはほぼない。特に、なかなか良い状況に辿り着けばつくほど、もっといい状況っていうのを想像しやすくしてしまうからな」


「そうなんだヨ。あの結果発表の場ってのは特殊でネ、勝利に安堵して気を抜いた人の集まりだからそこ、そこで余計な反省会が始まってしまうのサ」


「貴様の呪いって奴は、とんでもないおぞましさだな」


「そこまでは考えてなかったヨ。まあしゃあないヨネ。始まってしまったものハ」

お読みいただきありがとうございます。


 生き残った(近衛として果てたが、規則上勝利した)義経であるからこそ、だいぶ破天荒な未来が紡がれます。


 そして……この選択をしなかった、できなかった彼らの運命は、まだまだ続きます。


 *後半に、崇徳と、謎の男の会話がありますが、あのあたりは、最新の、計算できるAIを使うと、いい感じに答えを出してくれます。ただし、回数にすごい制限があるので、途中からは雰囲気だけになりました。ですが、この話数の中で、パーフェクトな結末を迎えられる可能性の低さは、彼らの会話がおおよそ教えてくれていそうです。

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