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テン

 ドカン、と音が響く。今まさにシェルターの壁を私が蹴り破った音だ。同時に、ギイギイとなんだかよく分からない生物の鳴き声が聞こえてくる。

 今回の依頼はGG地区89番での生物兵器破壊。なんでも、前大戦の時に作られたまま放置されていたプラントから、危険な生物がわらわら溢れてきたらしい。報酬は17000G ちょっと安いけどその分さっさと終わるでしょ。


「おーい眷属君。なんか原因とか分かる?」

「この段階じゃまだ何にも分かりませんよ……多分生物の培養器が壊れて溢れたか、起動のプログラムが何かの原因で作動したかだとは思いますけど……」

「それだけ分かれば凄いじゃん! じゃ、湧いてきた奴らは私が相手するから、眷属君は機械止めといてね」


 メノウは使えないとか言ってたけど、この眷属君……名前何だっけ? ネロ? レオ? レノだっけ? まあ良いや、この子は色々役に立つ。

 壊れてたトレーラーハウスの暖房も修理してくれたし、錆びてた水道も直してくれた。今は何やら廃材を使ってお手伝いロボットなる物を作っている。メノウがトレーラーの中に上げていないのが不思議な位だ。外は色々キツイと思うけど。


「そりゃー!」


 カマキリと狼が合体したみたいな不思議生物の群れを蹴り飛ばす。パワーだけなら万全のメノウより私の方が上だ。まあ私はあいつみたいに傷を治したりはできないけれど。

 まあその辺は適材適所、私は力任せに戦うぜー!


「てりゃー!」


 湧いて出てくる不思議生物達を片っ端から叩き潰す。蹴り飛ばした熊のでかいやつは上半身が捥げて壁に突き刺さった。

 と、曲がり角からいきなり巨大な影が現れた。これは……うーん、何といえば良いのか。

 鯨と蜥蜴を合体させた? 上で人間の手足を何本も生やしたみたいな……有体にいえばめっちゃ気持ち悪い。


「グオオオオオオオオオ!!!」

「わー!」


 思いっきり怪物が吠えた。それだけで、辺りの物がバンバンと破裂する。割と頑丈な筈の私の鼓膜も、バスンといった。一気に辺りの音が聞こえにくくなる。

 うーん困った。私の体は傷を治してくれない。後でアリジエルに頼んでみよう。

 それはともかく、今は目の前の怪物を倒すのが先決だ。殴る蹴るだと面倒そうな体格だが……それなら、別の物を使えば良い。


 バキンと壁に露出していた何かの配管を捥ぎ取った。鋭さ的にも多分行けるでしょ。


「やー!!」


 壁を蹴り、怪物の頭上へ駆け上がる。構えた鉄パイプを思いっきり突き出し──ズシュ、と確かな手ごたえが返ってきた。

 

「ギャオオオオ!?」

「わー!!」


 怪物が悲鳴を上げて暴れまわる。吹っ飛ばされる……事は無いけど、壁に体が何度か叩きつけられた。一応頑丈な体なのでそこまでダメージは無い。けど、何本か骨は折れた気がする。動くのに色々支障がでそうだ。

 そのまま暫く鉄パイプを突き立てていると、ようやく怪物が静かになった。ぴょんと飛び降りて腕を回す。うん、まだ大丈夫。


「眷属君ー、終わったー?」


 出てきた生物を一通り叩き潰して、作業中の眷属君へと話しかける。終わってると良いんだけどー。


「まだ……というか、その、多分無理ですね。見た感じ純粋に設備が破損して培養されてた生物が逃げてるだけなので……止めるなら、生物全部殺さないと」

「そっかー。うーん、報酬に釣り合う仕事じゃなかったかー……しゃーない、眷属君も手伝ってねー」


 吸血鬼になって身体能力も上がってる筈だ。まあ、この辺の生物位なら何とかなるでしょ。

 さー、私は大物をぶっ殺……


「いえ、その……報酬でしたら、多分相当稼げます」

「え?」




「やー!!」


 やや加減して出てきた生物の頭を吹っ飛ばす。今見えるのは十匹程度。あんまり問題になる数じゃないけど……ちょっとした条件が付いたせいで、やや面倒だ。


「そーい!」

「すみませんもう少し注意してください!」

「ごめーん!」


 背後の眷属君から注意される。うーん、戦いにくい。

 と言うのも、今の私は眷属君を庇いながら、出来るだけ施設を傷つけないように戦っているのだ。眷属君曰く、この施設の設備を解体して、内部構造を写せば相当な高額で売れるとか。

 てな訳で施設を解体、転写する助手君を庇って私は内部に被害が出ないようよく分かんない生物達を倒さないといけない。うーん面倒だ。けど稼ぎのためには頑張るぜー!


「そりゃー! てりゃー! おりゃー!」


 辺りを壊さないよう加減して怪物達を肉片に変える。……今は小さいのしかいないから良いけど、でかいの出てきたらどうしようかなー


「ゴオオオオオオ!!!!」


 出たー!


「眷属君! どの位までなら破壊して良いかな!」

「ええ!? 駄目ですよ!! まだ写してないですし! どこがどう重要になるか分からないんですから!」

「そっかー……頑張ってみるねー」


 多分無理だと思うけど。一応私からは壊さないでおこーっと。


「りゃー!!」


 とりあえず思いっきりぶん殴ってみる。が、やっぱりあんま効いた感じがしない。武器があれば……それか、()()()()()()()

 と、と、と。怪物の攻撃を繰り出してきたので回避する。案の定、私が避けた先にあった壁がぶっ壊れた。


「あー何やってるんですかー!」

「無理だってー眷属君ー! コイツもぶっ壊すんだしー!」


 私が壊さなくてもコイツが壊しちゃう。なら、変に暴れられるよりさっさと仕留めた方が良いだろう。そういう訳で壊しても……武器にしても良い場所を聞いたんだけどー。


「そこを何とか! お願いします!」

「えー! キツイってー!」


 さっきから何度も殴ってるけどあんまり効いてない。パワーは十分だけど、こっちの重さが足りてないのだ。やっぱ武器が欲しい。


「ほらー! 全然効かないしー!」

「……だったら少し待ってください! 急いでこっち写しますんで! 終わったら壊しても構わないんで!」


 そう言って眷属君がすごい速さで手を動かし始めた。辺りのパイプとか線とかよく分かんない奴を片っ端から端末に記してる。

 それじゃーこっちも一頑張りするか!


「分かった、おらー!!」


 噛みついてきた怪物をカチ上げる。ごちゃごちゃ動かれると面倒だ。

 足を蹴り飛ばして体勢を崩し、下がった頭をぶん殴って揺らし、動きを止める。目的は時間稼ぎだ。

 

「うりゃー!」


 振り回した怪物の腕を狙ってぶん殴る。バチンと相手の腕を弾いたが、代わりにこっちの肩も外れた。

 慌てて肩を嵌めなおすが、その間相手はフリーだ。

 ズルズルと巨体が這いずって行く。狙いは私……では無く、作業中の眷属君。一応彼も吸血鬼だ、潰されたり食われたり位で死ぬ事は無いだろうが……あの辺を壊されるのはまずいだろう。


「せい、の、おりゃー!!」


 相手の尾を掴む。力ならこの怪物より私の方が少し上だ。問題は体重差、どれだけ抑え込んでもこいつの方が重い以上、私の方が動かされちゃう。何か体を支える物……


「……眷属君! 地面ならちょっと壊しても良い!?」

「駄目です! 配線も基盤もどこにあるか分からないんですから!」

「でもコイツ止まらないよー!」


 一応踏ん張ってはいるのだが、力では勝ってても重さが足りないせいで引っ張られてる。地面に足を突き刺せば耐えられるんだろうけど……それもどうやら駄目らしい。


「もう少し! もう少し待ってください!」

「それは私じゃ無くてコイツに言ってよー!」


 踏ん張ってしがみついて色々やってみるが怪物の足は止まらない。のしのしと眷属君の所まであっさり進んで──


「グオウ」

「うわ、ちょっ!」


 その爪を振り下ろした。

 眷属君が真っ二つにされたが、幸い壁とか機械に傷は付いて無い。けど、それも時間の問題だ。

 怪物は、再度その腕を振り上げているのだから。


「危なーい!」


 振り下ろされる爪と、眷属君の間に割り込む。二人分盾にすれば床に傷は付かない……と思う。

 出来るだけ頑丈な頭で受けるようにして──直後、ボキン、と首の骨が折れる音が私の体内に響き渡った。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()。傾いた目線で怪物を見据え、腕をつかむ。眷属君を足場にすれば思いっきり力を入れても問題無いだろう。


「りゃー!!」


 全身の力を使って相手を吹っ飛ばす。メキャ、と足場の眷属君が潰れる音が響いたがそこは吸血鬼、無事だろう。

 それよりも今は相手の距離が離れた事の方が重要だ。


「眷属君ー! 作業終わったー!? そろそろコイツ倒したいんだけどー!」

「……この区画ならもう壊して良いですよ。ブロック構造で同じの繰り返してるんで。あ、でも向こうのスペースは管理用で多分違う作りを「でりゃー!!!」」


 地面に手を突っ込んで、よく分からない機械を引っこ抜く。私の体より大きいそれを頭へ向けて思いっきり振り下ろせば、あっさり血の花が咲いた。


「よし!」

「ああ、機械が、技術が……」


 ふう、と汗を拭う……真似事をする。生憎私の体はそういう生理現象とは完全に無縁だ。メノウも心臓が動いてなかったりするらしいが……私はもうそういう次元じゃ無い。肉体的には、完全に死んでいるのだから。

 私は、キョンシーだ。

 別にどっかの術士が作ったとか言う訳じゃない。昔に自然に死体が起き上がって動き出したタイプだ。伝承によれば日光で崩れたりもするらしいが、私はそんな事は無い。固まっていた手足も、時間が経ったら動き出した。

 どちらかというと問題は、完全に停止した代謝だろう。そのせいで傷とか全く治らない。今みたいに大事な部分の骨が折れると面倒なのだ。


「……何か、添え木になりそうなのは……これでいっか」


 ドス、と頭から胴体まで鉄パイプを突き刺す。眷属君がすごい目で見ているが、傷が治らないのだから仕方ない。


「さー、次へ行くぞー!!」



「りゃー!」

「そっちまだ壊しちゃダメです!」


「うりゃー!!」

「その機械はまだ構造が──」


「どりゃー!!」

「その培養器はもう構造把握してますね」



「……うーん、苦労するなあ」

「こっちのセリフですけど……」


 普段と違って壊せるものも壊せない。これじゃあ本領発揮が出来ないぜ。


「まあ、そろそろ終わりだし、我慢するよー」

「構造的に重要区画ですね……本当にこの辺は壊さないでくださいよ」


 廊下を進み、突き当りの扉を開ける。見えたのは……バカでかい培養器? とそれに繋がる無数のパイプに配線。そして、機械の中で漂う巨大な影だった。


「……これは動いてないのかなー」

「重要区画なだけあって、頑丈に作られているんでしょうね。他と違って壊れてません。……今は、ってだけでしばらくしたら壊れるでしょうけど」

「……どうしよっかな」

「放置で良いと思いますよ。依頼はここの生物が外に出なければ良いだけなんで」


 でもここの構造は写しますからね、と眷属君が念を押してくる。別に私は好き好んで壊しているわけじゃ無い、何もいなければ壊しはしないよー。


 眷属君が培養器のモニターに向かって何やら作業をしている間、私はこの部屋を見て回る。大戦当時から使われていた施設は、埃とカビの匂いに包まれていた。私にとって少し心地いい雰囲気だ。

 何が書かれているのかさっぱり分からない紙の書類に、何なのかもよく分からない機械類。多分あの中央の生物を作ろうとしていたんだろうけど……

 と、ズンと振動が辺りに響き渡った。振り返れば、中央の培養器? が開いている。内部の生物が、ゆっくりと動き出していた。


「眷属君ー?」

「ふ、ふふふふふふふ」


 眷属君の様子がおかしい。怪物を前にしておかしくでもなった? けど、今の彼は吸血鬼だ。滅多な事では死なないけど。


「あー、はははははは! あー……よくも俺をこき使ってくれたねえ」

「んー? 眷属君?」


 ドシン、ドシンと怪物が動く。それは眷属君へと近づき──彼を守るように、立ちはだかった。


「コントロールパネルが生きていて助かったよ。コイツの行動を制御する事が出来た。

 俺を守る事を優先に……敵を排除するように」


 物凄い速さで怪物が動く。大体人を巨大化させたような姿のそれは……私へ向けて、拳を振るった。


「ゴルオオオオオオオオオオオ!!!」


 速い。おまけにとんでもない力だ。私が完全にパワー負けしている。おまけに相当頑丈そうだ、殴ったり蹴ったりしただけじゃダメージを与えられそうにない。武器も無理そうかな? 見た感じ地形ごと粉砕してるしー。


「散々人をこき使って、ひどい扱いをして……これだから生身の女は嫌なんだ。ああ、君は死体だっけ? ……まあ、あいつ諸共サイボーグの素体にでもしてやるさ」


 怪物の蹴りが私を吹き飛ばす。メキャ、と骨の折れる音が響いた。


「……眷属君、裏切るのー?」

「裏切る? 最初から俺は君達の味方になんてなっちゃいない。あいつに無理矢理従わされてただけさ」


 砲撃みたいな拳が私の体を打ち抜く。吹っ飛ばされ──た先に、既に怪物が回り込んでいた。


「ゴアアアアアアアアアア!!!」


 怪物が私を踏みつける。一撃ごとにクレーターの出来そうな威力が、何発も何発も。確かに私は頑丈だけど、こんな状況で喰らったら全身の骨が直ぐに粉々になるだろう。


「そっかー……じゃあまあ、加減は要らないね」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……は?」

「いやまあ、ねー。メノウの物だからどのくらいまでなら痛めつけて良いか考えてたんだけどさー……まあその様子なら加減なしで良いだろー、って」


 怪物が唸る。片足だけになって……いや、なんか足生えてる。メノウ程じゃ無いけどすごい再生速度だ。

 まあ、十分押し切れる範疇だ。


「はッ!!!!!」


 地面を踏みしめ、膝から胴、肩、腕へと力を伝える。距離は最短、力は最大──それは、あっさりと怪物の拳を粉砕した。


「ば、馬鹿な! 君の出力でそんな威力が──」

「功夫!!」


 震脚から繰り出した正拳が怪物を吹き飛ばす。威力高すぎて辺りをぶっ壊しかねないから使わなかったけど……もう良いでしょ、これは。

 蹴りが怪物の足をへし折り、掌底が肉を抉る。その度に余波だけで地面やら壁やらがぶち壊れた。まだ、無駄が多い。

 打ち、貫き、削る。理合いが体を支え、矛となる。私の膂力で振るえばそれこそ正規軍の戦車でも一撃でぶっ壊せるだろう。


「せいッッッ!!!!」


 肘鉄。怪物の右足をへし折る。


「やッッッッ!!!!!!」


 正拳。左足を粉砕する。


「はいィィィィィィ!!!!!」


 跳び蹴り。怪物の顔面を──


「──させるか!」


 私の体を、弾丸が貫いた。

 眷属君が銃を構えている。吸血鬼としての力じゃ無くて。当然、それじゃ私は死なないけど──体勢が崩れた。蹴りが、外れる。

 直後、怪物の拳が私を吹き飛ばした。





「……流石に、死んだかな。あの威力だ、骨なんて粉々に──」

「なってないんだよねー」


 ぴょこんと私が飛び上がる。まともに喰らえばまあ全身粉々だけど……それなら、まともに喰らわなければ良い。そもそもあれで死ぬなら最初で死んでるし。いやまあ、最悪バラバラなっても死なないけど。


「……そんな、馬鹿な!」


 眷属君の叫びに反応するように、怪物が拳を振りかぶる。巨躯に見合わない速度で相手は動き、豪速の拳が──逸れる。


「化勁!」


 拳を逸らし、弾き、衝撃を逃がして受け止める。接地していた両の足近くの地面が爆発したようにめくれ上がった。

 私は特に特殊能力とかは無いし、別段得意な事が多い訳でも無い。……けど、ギルドで殴り合ったら私が最強だ。


「そしてこれがああああああ……発勁!!!」


 ぶち当てた両の手から衝撃が貫き、怪物の全身を駆け巡る。一瞬遅れて、ドパンと破裂音が響き渡った。辺り一帯に怪物の中身がばらまかれる。動き出す様子は……無い。それを確認して、私は眷属君へと振り向いた。


「……さーて、裏切った人にはそれ相応の物が必要だねー」

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ」






「たっだいまー! メノウ、眷属君返すねー!」

「別にここに入れる必要は無い……おい待て、何をやった」


 ボロボロにした眷属君をメノウに返す。まあ、ちょっと体積が()()()になっちゃったけど、良いでしょ。


「ちょっと裏切ってきたからさー、お仕置きした!」

「……はあ。コイツ、まだそんな下らん事を考えていたとはな」


 渡した眷属君をメノウが摘み上げ、トレーラーの外に放り出した。外は色々厳しいから中に入れてあげたらいいのになー。


「それとメノウー。今回私めっちゃ稼いだからさー、ちょっとお休みするねー」

「別に構わんが……幾らだ?」

「3000000G!! すごいでしょ」

「はあ!? 一体何をしてそこまで稼いだ!?」

「行った施設の作りを眷属君が調べてねー。設計図逆算して『酒場』に売ったのー」


 ボロボロにした眷属君から聞きだした情報は、予想以上に高額で売れた。この金額なら暫く稼ぎに行かなくても良い。私らのギルドに入れる分を除いても、半年以上は遊んで暮らせる。


「あいつそんなに……おい! 私も行くぞ! 準備しろ、眷属!」

「今半殺しになってるから無理じゃない?」

「貴様……それを見越して奴を動けなくしたのか! 自分だけが抜け駆けする為に!」

「誤解だよー。それにメノウも一月は動かなくていーじゃん! こないだ稼いだんだからさー」


 ズルいぞ、と喚くメノウを振り切って私は私のスペースに戻る。あの調子で騒いでいるとアリジエルが起きるよ。またボコボコにされちゃう……あ、起きた。でメノウが吹っ飛ばされた。


「……酒のせいで頭いてえんだよ……安いのは駄目だ、糞」

「飲みすぎじゃない? あの二人も文句言ってたよ」

「うるせえ、俺の稼いだ金だ」

「別に良いけどさー。あ、そだ、首折れて鼓膜破れたから治してよー」

「酒は?」

「はーい」


 酒を投げ渡すと、渋々といった様子でアリジエルが私の傷を治して来た。あっという間に折れていた首が引っ付き、破れていた鼓膜が元に戻る。

 ありがとー、とお礼を言ったら言う暇が有ったら酒を寄こせと言ってきた。即物的な。

 渡した酒を迎え酒だと言って速攻でアリジエルは飲み始めた。おまけに追加で危なそうなオクスリを打っている。……錯乱して暴れださないと良いけど。

 まあ良いや、スペースに入ってきたならルール違反、叩きだせば良い。私は自分のスペースに置いてある布団に寝っ転がって、本を読み始めるのだった。

テン

格闘キョンシー娘。死体から蘇って以降、二千年以上も放浪を繰り返している……のだが、精神年齢が死亡時の十六歳前後でほぼ止まっており、活動してきた年月に見合わない言動が多い。

武術に関しては生前から学んでいたもので、復活してからも毎日鍛錬を続けている。戦闘は基本打撃メインだが、状況や相手次第では締め技寝技等を使う事も。


AX-45 ゴリアテ

プラントにて製造されていた巨大人型生物。

高火力火器の使用が困難な屋内戦を想定して製造されており、歩兵の携行兵器程度では傷一つ付かない耐久性と人間なら十分に叩き潰せる出力を有する。

また、当生物を量産し、通常人間では積載不可能な装備類を搭載した強襲部隊として運用する案も存在した。が、大戦当時では採用されず、結果として一部秘匿拠点に配備されるに留まった。

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