リリスの過去ー前半
私は人間の母と魔族の父によってこの世に生を受けた。
母は私を産んだ後、父によって殺された。
父は人間と魔族の間に出来た子供に興味があったらしく、私は日々実験体にされていた。
そしてどうやら私の魔力は魔王にも匹敵することがわかったらしい。
父は危険を感じて私を殺すことにしたらしい。
だから私は逃げ出すことにした。
私は父の配下の一人であるアブゾルの助けによって逃げ出すことに成功した。
行く当てもなく森をさまよっていたらある男に出会った。
「小娘、この森で何をしている?」
「……だ……れ?」
「私はレオル。四天王カリオント様の側近だ。」
「……四天王?」
私の父も四天王だった。
私は死を覚悟した。
「しかしその魔力量……なかなかに興味深いな……」
「……え?」
どうやらレオルは私が四天王『ディアボロ』の娘ということを知らなかったらしい。
私は素性を話してよいものか迷った。
「どうした?」
「……」
前にアブゾルに聞いた話によると父『ディアボロ』と『カリオント』は仲が悪いようだった。
私がディアボロの娘と知ったらどうなってしまうか……
「何か隠していることでもあるのか?そうであれば……」
私は殺されると思い覚悟を決め素性を話すことにした。
「……あの……私は……四天王ディアボロの娘です……」
「ディアボロ様に娘はいなかったはずだが?なぜそのような嘘をつく?」
「……本当です……」
「……たしかディアボロ様にはお気に入りの人間がいると聞いたことがあるな、もしかしたら……わかった、お前がディアボロ様の娘だと信じよう。」
レオルは何かを納得したようにそう告げた。
「それでお前はなぜこの森にいる?」
私は父から逃げ出すことにした一部始終をレオルに話した。
「……なるほど、であれば私の元に来るといい」
「え?」
「お前はディアボロ様のことを恨んでいるか?」
「……はい」
「なら私がお前に力を貸してやる。その膨大な魔力の使い方を私の元で学ぶといい。」
「……いいんですか?私は四天王ディアボロの娘ですよ?」
「いいと言っている。……だがお前が万が一にも裏切らないように契約を結んでもらう。」
「……契約ですか?」
「私に逆らったらお前には死んでもらう。」
「……」
「嫌か?ならお前にはここで死んでもらう。」
「……わかりました」
そうして私はレオルと契約を結んだ。
――レオルの元に来てから10年の時が経った。
この10年の間で私はレオルに様々なことを教わり一流の魔女へと成長していた。
レオルの話によると人間と魔族の間で子供を作ることは禁止されているそうだ。
私のような存在は半魔と呼ばれ、生まれてすぐ処分されるらしい。
私は自分の名をリリスと名乗ることにした。
レオルの紹介で私は四天王カリオント直属の配下となった。
カリオントは父と違って人望があり人間と魔族の両方から慕われていた。
カリオントの領土では殺人や人身売買などを禁止し、決められたルールの中で沢山の人間と魔族が暮らしていた。
「ここでは人間も悪魔も笑顔で平和に暮らしている。父であるディアボロの領土とは大違いね――」
私はカリオントもこの地もとても好きだった。
ただそれをよく思ってない者もいた……レオルだ。
この地の魔族の中で唯一人間をゴミを見るような目で見ていた。
その目を見るたびに私は不安になった。
レオルの目が父と同じもののように感じたからだ。
そんなある日だった。元気のない私にカリオントが話しかけてきた。
「どうした?そんな暗い顔して。」
「カリオント様……」
私はこれまでのことを全て話すことにした。
父のこと、レオルのこと。
「……なるほど。それは大変だったな。」
「……はい」
「だがレオルは良い奴だぞ?お前の父親とは違う。」
「……そうですよね」
レオルのことは私の勘違いかもしれない、そう思うことにした。
「……あの」
「なんだ?」
「半魔である私をどう思われますか?」
私は他の魔族と決定的に違う点がある。
元々魔族は体のどこかに魔族としての証を宿して産まれてくる。
それは魔族によってまちまちで角が生えていたり尻尾が生えていたり化け物のような見た目をしていたりする。
だけど私には何もない。
人間の姿で魔力を持って生まれてきた異質な存在。
私は半魔であることを知ったカリオントが私のことをどう思うのかが怖かった。
「……人間と魔族の間で子供を作ることは魔王様が禁止したことだからな。正直君の存在は異質だ。」
「……」
「まあでもいいんじゃないか?」
「え?」
「君は君だろ、リリス。君のしたいようにするのがいいんじゃないかな?」
「……私は父に復讐したい!あの男を殺したい!」
「よし!わかった!」
「え?」
「父親を倒し君が新たな四天王になるんだ!」
「……え?」
「そうと決まればディアボロの元へと進軍せねばな!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「なぜだ?」
「どうして私に協力してくれるんですか?」
「俺がディアボロを嫌いだからだ!」
「……そんなことで」
「いやまあ流石にそれだけではないが……君はこの地をどう思う?」
「……好きです。」
「それが理由だ」
「……でも私が四天王だなんて……そんなの誰も認めないと思いますが……」
「そこは俺が何とかしよう!それに魔王様による決まりで四天王になるには四天王を倒すこととなっている!君がディアボロを倒せば納得せざるをえないだろう。」
「……そういうことなら……よろしくお願いします。」