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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 2-4】その扉の向こうに待ち人あり

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【95】突入(中編)

 昆虫――より正確には6本脚の蜘蛛のようなフォルムの多脚戦車たちは赤いカメラアイを一斉に光らせる。


「ッ! 撃ってくるぞッ!?」


イノセンス能力でただならぬ雰囲気を感じ取ったリリカが叫んだその直後、多脚戦車の"口"が赤く輝く。


「ッ……くそッ!」


赤い光の正体は対空兵器などに採用されるパルスレーザーだった。


地上、壁面、天井から鬼のようにバラ撒かれる赤い光弾をライガのパルトナ・メガミRMは実体シールドで咄嗟に防ぐ。


「ポッドを俺たちの後ろに回せ!」


腰部に装備された可変速レーザーキャノンによる反撃で密集陣形を取る敵機を一網打尽にしつつ、護衛対象の全領域作業ポッドを自分たちの背後に移動させるライガ。


敵の多脚戦車は装甲が薄いのか、MFの攻撃でも容易に撃破することができた。


これがテレビゲームだったらどれほど楽しくて爽快だったことか……。


「ライガ、幸いにも敵機の火力はかなり低そうだ。こちらの装甲をく手段は無いと見た」

「ええ……しかし、あの虫共は数が多すぎます。迅速に駆除しないと包囲される」


シールドを構えながら専用レーザーライフルで反撃しているリリカの分析に同意しつつも、ライガは虫嫌いが発狂しそうな密度で進路を阻む敵機の物量に懸念を示す。


物量作戦で押し込まれたら後退するしかなくなってしまう。


「それに俺たちの機体はともかく、ポッドに装備されているのは防弾プレートぐらいです」


また、ライガが指摘しているように白兵戦要員が乗るポッドはMFよりも防御力が低い。


最低限の防弾装備が施されているとはいえ、集中攻撃に晒されたらとてもじゃないが耐えられないだろう。


「ポッドを狙われたらゲームオーバーだな……」


護衛対象の姿を横目に見ながら険しい表情を浮かべるリリカ。


「レカミエ、前衛に入れ! 3機で敵を一掃し、進路を確保してから突破を図る!」

「シューフィッター、了解!」


敵陣を突破するためにはとにかく火力と手数が必要だ。


ライガは中間に配置していたレカミエのν(ニュー)ベーゼンドルファー(Vスペック)を前衛に移し、スリートップの攻撃的なフォーメーションに切り替えるのであった。



「こいつら、見た目だけじゃなくて数の多さも虫かよ! 倒しても倒してもキリが無い!」


リリカのνベーゼンドルファー――専用フルアーマーシステムを装着していない状態は俗に"強化型νベーゼンドルファー"と呼ぶが、この機体は対多数を相手取ることが可能なオールレンジ攻撃端末を6基装備している。


ただし、射出して自機の周囲に展開しないと使用できない性質上、トンネルのような閉所では封印せざるを得なかった。


「一網打尽にして数を減らした隙に強行突破するしかない! レカミエ、"グラン・アルブル"で薙ぎ払えるか?」


また、ライガのパルトナも今回は小回りを重視しウェポンモジュール未装着の状態で作戦に臨んでいる。


手数不足が露わになる中、彼はレカミエのベーゼンドルファーの専用武装"グラン・アルブル"に活路を見出す。


「いいのですか? 閉所での砲撃は慎重になるべきかと……」


"グラン・アルブル"――フランス語で大木という意味の名前を与えられたその装備は、白地に赤と青のラインが目立つMFの全高を僅かに上回るほどの砲身長を持つ大型レーザーキャノン。


これは非常に高い火力を誇るため、レカミエは無礼を承知で使用の是非を問うが……。


「出力を絞って発射しろ!」

「……分かりました」


トンネルを崩壊させないよう、最低限の火力で攻撃せよ――。


ライガの指示に納得したレカミエはリリカ機と同型のレーザーライフルを収め、片膝立ちの姿勢で"グラン・アルブル"の発射態勢に入る。


レーザー兵器なので反動は極めて小さいが、装備自体のサイズや重量バランスの問題で地上では機体を安定させる必要があった。


「私たちの間にポジショニングして攻撃するんだ」

「エネルギーチャージ60! チャージ完了、いつでもいけます!」


リリカ機が横に退いたことで射線が確保される。


レカミエのベーゼンドルファーは最低限のチャージ率を維持しつつ照準の微調整を行う。


重心を下げるように姿勢を低く構え、多関節フレキシブルアームを介して接続された"グラン・アルブル"を正面に向ける。


「よし、攻撃タイミングはお前に任せる。害虫共を消し飛ばしてやれ!」

「……ファイアッ!」


果敢にレーザーライフルで反撃を続けるライガからタイミングを一任された3秒後、レカミエは右操縦桿のトリガーを引くのだった。



 次の瞬間、蒼い極太レーザーがトンネル内を蒼白く照らす……!


「凄い……射線上にいた敵機が消滅した……!」


暗闇に慣れた目を直撃する閃光が収まり、クローネが恐る恐る目を開けると敵部隊の機影は殆ど消え失せていた。


厳密には射線に入っていなかった敵機が少し生き残っているが、それでも先程の一撃だけで7~8割は撃破されただろうか。


「行け行けッ! 今のうちに――塞がれる前に突っ切るぞ!」


実体シールドで閃光を遮ったことで早めに行動可能となったライガのパルトナは右手で前進を促す。


そして、合図を出し終えると同時に専用ビームソードを抜刀。


メインスラスターを噴射し敵部隊に突撃を仕掛ける。


「レカ! 格闘戦……やれるな!」

「はい! もう動けます!」


ライガ機をカバーするためリリカとレカミエも格闘戦での援護に回る。


後者のベーゼンドルファーはエネルギー消費が激しい攻撃を行った直後だが、チャージ率を抑えていたおかげですぐにエネルギーが回復し行動可能となっていた。


「アタック!」


まずはライガのパルトナが多脚戦車の群れに飛び込む。


白と蒼のMFはシールド先端部のシザークローで敵機の赤いカメラアイを砕くと、勢いそのままに持ち上げて別の敵機を巻き込むようにフルパワーで投げ捨てる。


その後隙を突こうとする賢い敵機にはビームソードを振り抜いてカウンターを仕掛ける。


「ええいッ!」


彼の手が回らない敵機にはリリカのベーゼンドルファーが対処する。


イタリアンレッドのMFは柄の両端から刀身を発生させるツインビームソードを振り回し、群がってくる多脚戦車を次々と切り伏せていく。


「ダッチマンは前進してくれ!」

「推力最大! 一気に抜けるぞ!」


同じく格闘戦を繰り広げているレカミエから合図を受け、ポッドの操縦担当者ステファニーはスロットルレバーを前に倒して船体を加速させる。


「クローネ、ポッドを突出させるな! 君も直掩だろう!」

「分かってます! 進路上の邪魔な敵だけを叩きます!」


繰り返すがポッドは非武装且つ装甲も必要最低限しか施されていない。


この貧弱な護衛対象を孤立させないように直掩のルナールとクローネは動く必要があった。


「こいつらの相手をするだけ時間の無駄だ! リリカさん、レカミエ! 俺たちも追い付くぞ!」


ポッドの敵陣突破を確認したライガは再びレーザーライフルに持ち替え、自ら殿しんがりを務めながら護衛対象との合流を急ぐのだった。

【シューフィッター(SHOEFITTER)】

レカミエ個人のTACネーム(MFドライバー個人に割り当てられるコールサイン)。

本来シューフィッターとは顧客に合った靴を提案する専門家のことだが、そこから転じて航空機のOSに"経験値"を蓄積させるテストパイロットもこう呼ばれる。

レカミエはスターライガ移籍以前はMFメーカーでテストドライバーとして働いていた。

ちなみに、作戦中は機体名で呼び合うスターライガチームでレカミエだけ例外なのは、彼女の乗機νベーゼンドルファーのみ同名機体が2機存在する(もう1機はリリカの搭乗機)ためである。

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