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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 2-3】The Star Lighting

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【86】彼女たちの居場所

 ここで時を少し遡り、対超兵器戦と同時進行で繰り広げられていたレオポール・セダール・サンゴール国際空港包囲戦の様子を見てみよう。



「ファイア! ファイア! ファイアッ!」

「ぐッ……!」


専用長銃身レーザーライフルを二丁持ちで高速連射してくるライガのパルトナ・メガミRM(決戦仕様)の猛攻は凄まじく、ノイの陸戦改造型ツクヨミは防御と回避に徹することしかできない。


とてもじゃないが反撃に転じる余裕は無かった。


「(攻撃速度が高すぎる! 全弾はかわし切れない!)」


しかも、攻撃力重視のライフルとは思えない連射に正確な偏差射撃が加わることで命中率が大きく底上げされており、ノイの操縦技量を以ってしてもバイタルパートへの被弾を避けるだけで精一杯だ。


「(それに火力も普通の光線銃を明らかに上だ! 着弾した箇所の装甲を確実に熔かされている……!)」


そして、攻撃力の高さに関しては言うまでも無い。


対レーザーコーティングを塗布された増加装甲が本体を守っているとはいえ、それでも蒼い光線が掠めた部分はドロドロに熔解していた。


装甲頼りの戦い方では長くは持たないだろう。


「フタバ君! 援護をッ!」

「もう一機を徹底的にマークしろッ! 一対一なら性能差で押し切れる!」


ノイとライガはほぼ同時に自らの僚機に対し指示を飛ばす。


前者が試みる連携を阻止するべく、後者は自分たちに有利な一騎討ちの状況に持ち込むことを狙う。


「了解!」


上司の意図を汲み取ったクローネは動き方を少し変化させ、乗機シン・フルールドゥリスの多銃身拡散レーザーライフルで相手を足止めするような戦法へと切り替える。


ルナサリアン戦争の実戦経験を通して彼女はMF戦における高度な柔軟性を身に付けていた。


「くそッ! 射程外から嫌らしい攻め方を……!」


純白のMFと交戦しているフタバは典型的なインファイター。


堅実なアウトレンジ戦法を取られると距離を詰め切れずどうしても苦戦を強いられてしまう。


「(この機体の乗り方、実戦を通して分かってきた気がする……!)」


その上、急激な成長曲線を描いているクローネは戦いの中で借り物の機体のコツを掴みつつあった。


「ファイア!」


敵機の回避運動と防御姿勢の癖をしっかりと見極め、上司譲りの観察眼から冷静に操縦桿のトリガーを引くクローネ。


「うぐッ……しまった!? 左腕が……!」


その攻撃を避け切れないと判断したフタバの陸戦改造型ツクヨミは反射的に左腕を前に出すが、複数本の蒼いレーザーの直撃を受けたことでシールド諸共左腕を失ってしまうのだった。



「パルトナよりワルキューレCIC、ふねを前進させろ! 艦砲射撃で空港を一気に制圧する!」


ライガのスターライガチームにおけるもう一つの役割は"前線指揮官"。


MF部隊の隊長として最前線に立つ彼は戦場を広く見渡し、自分たちの母艦スカーレット・ワルキューレに前進及び艦砲射撃による援護を命じる。


母艦に命令を下せるのは組織の指揮系統で最上位に位置するライガだけだ。


「ただし、狙うのは滑走路だけだ! 空港ビルには人がいるかもしれないからな!」


そのライガはワルキューレが460mm4連装砲の発射態勢に入る直前、超弩級戦艦ならではの強力な艦砲射撃を建物に当てないよう厳命しておく。


彼らの作戦目標はあくまでも《空港の無力化》。


そこに敵構成員の大量虐殺は含まれていない。


「(しかし……総力戦にしては人の意志が少ないように感じられる。大多数は戦闘開始前に脱出したのか?)」


また、優れたイノセンス能力を持つライガは戦闘の規模に反して感知できるモノが少ないことを指摘する。


戦場という極限状況では人間の生々しい感情がもっと流れ込んでくるはずなのだが……。


「(敵戦艦が動き出した……? もはや瓦解しつつある我々の防衛線を押し潰すつもりか……!)」


一方、不明瞭ながら通信を傍受したノイは遥か遠方に見える黒い粒を睨みながら唇を嚙み締める。


今のアフリカ・ルナサリアンには東西から同時に攻めてくる敵を退ける戦力はもはや残されていない。


「キェェェェェサァ!」

「遅いよッ!」


数少ない戦力であるフタバは損傷した機体で奮闘しているものの、万全のコンディションで空中に陣取るクローネのフルールドゥリスには大苦戦を強いられていた。


「ぐぅッ……!」

「フタバ君ッ!」


すれ違いざまの一閃に負けて右腕を斬り落とされたフタバ機を見たノイはすかさず援護に入るが、白と蒼のMFの執拗なマークにより思うような支援ができない。


「(私も敵機に狙われている以上、これが精一杯か……)」


無理をすれば逆にノイ自身が危機的状況に陥ることになる。


そうなった時、損傷が激しいフタバ機から援護を受けるのは難しいだろう。


「(せめてフタバ君だけでも生き残る道を作ってやらなければ……!)」


敗北が決定的となりつつある中、ノイが真っ先に懸念したのはダカールに残った将兵たちの安全であった。



「サクヅキ司令……先に言わせて下さい。今までありがとうございました」

「……!」


フタバが突如言い放った何気無い感謝の一言――。


しかし、ノイはそれを文字通り"最期の言葉"だと本能的に解釈する。


「貴女はここで死ぬべき人ではありません……そして、ヨツバのことを頼みます」


彼女の懸念は的中してしまう。


尊敬する上官に後事を託したフタバはスロットルペダルを踏み込み、両腕を欠いた乗機を加速させる。


「フタバ君ッ! 待ちたまえッ!!」

「たとえカタナを失おうとも……月の民の最期の意地を見せてやるわ!」


ノイの制止を振り切ったフタバの陸戦改造型ツクヨミは固定式機関砲を発射しながら跳躍。


純白のMF――フルールドゥリスに対して体当たり攻撃を仕掛ける。


「くッ……!」

「あなただけでも――ぐぅッ、刺し違えてでもッ!」


反応が僅かに遅れたクローネはビームシールドを展開しながら固定式機関砲とワイヤーアンカーで迎撃を試みるが、不可視の"オーラ"を纏った砂色のサキモリは怯むこと無く突っ込んで来る。


「くそッ! この……バカ野郎がッ!」


このままでは部下が危険に晒されると判断したライガは即座に自身の戦闘を中止。


愛機パルトナ専用の攻防一体型実体シールドでチャージを繰り出し、敵機の勢いを止めたうえで逆に弾き飛ばしてみせる。


「ライガさんッ!?」

「ぬうぅッ……!?」


いとも簡単に行われる卓越した戦闘技術にクローネが驚く中、白と蒼のMFはシールド先端部の格闘戦用シザークローでフタバのツクヨミの胴体を捕らえて地面に叩きつける。


「これ以上の抵抗はできまい! 投降しろ! さもなくば……!」


投降を要求しながらも少しずつシザークローを閉じていくライガのパルトナ。


「ッ……!」


特攻精神によりアドレナリンが分泌されているフタバは恐怖こそ感じていなかったが、それでもコックピットブロックが徐々に潰れて狭くなっていく様子は見えていた。


「(フタバ君……本当に……本当に申し訳ない……)」


信頼する部下の自己犠牲に心を痛めながらもノイは空港西側の市街地に向けて移動を開始する。


「! 敵前逃亡――いや、"カミカゼ"を仕掛けるつもりか!? だが、逃がすものかよッ!」


もう一機の意図を察知したライガは目の前の敵にはトドメを刺さず、"カミカゼ"への対処を優先すべく動くのだった。



「はぁ……はぁ……はぁ……」


潰れかけのコックピットから軽傷で這い出たフタバは幸運であった。


上官のノイが突如動いたことで敵の注目が全てそちらに向いたため、あわやというところでトドメを刺されずに済んだ。


少しでもタイミングが遅かったらコックピット諸共ぺしゃんこか、あるいは脚を挟まれるなど重傷を負っていたかもしれない。


「(東の方で爆発……!? ここからでも視認できる規模だとすると、まさかバクリュウが……!?)」


遥か遠くから聞こえた爆発音の方を振り向くと、山火事などで見られる火災積雲が発生していた。


その規模と当該地域に展開している自軍戦力の布陣から、フタバは雲の発生源が陸上戦艦バクリュウの轟沈であると確信する。


「サクヅキ司令……なぜ私を庇ったのです……!?」


搭乗機を失ったフタバには戦う力も意欲も残されていない。


スターライガチームのMFから銃口を向けられた彼女は両手を上げて降伏の意を示すしかなかった。

【火災積雲】

火災の熱の影響で発生する積雲。

核爆発の際に生じるキノコ雲も原理的にはほぼ同じである。

英語では""flammagenitus cloud"と呼ばれるが、これの正式な日本語訳は現実世界ではまだ定まっていない。

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