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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 2-2】砂まみれの死闘

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【75】ダカール奪還作戦Ⅺ:龍が咆える時、王座は砕ける

 多国籍艦隊旗艦キング・ジョージ6世(KGVI)の最期は指揮下に入っていたアドミラル・エイトケンからもハッキリと見えていた。


「き、キング・ジョージ6世の識別信号消失……!」


呆然とするCIC(戦闘指揮所)の沈黙を破ったのはメインオペレーターであるエミールの声。


「……それは見れば分かる! 攻撃の解析急げ!」


同じく呆然としていたシギノ副長は唇を噛み締め、オペレーターたちに攻撃の解析を急ぐよう指示を飛ばす。


「(あれが例のレールガンなら連射は利かないと思うけど……!)」

「解析完了しました! 先の戦闘で本艦を狙った超長距離攻撃と完全に一致しています!」


KGVIを一撃で轟沈せしめた攻撃に心当たりがあるメルト艦長が冷静に待っていると、程無くしてエミールが解析結果を報告する。


彼女が艦長用のタブレット端末に送信した解析結果は先の戦闘のデータと完全に一致していた。


つまり、KGVIを沈めたのは大型レールガンによる超長距離攻撃だ。


「艦長! 7時方向110キロメートル地点に敵艦影出現!」


それを証明するようにレーダー管制官のエーラ=サニアが敵増援の出現を知らせる。


110キロという距離は一般的な大型レールガンの有効射程と概ね一致する。


「敵艦だとッ!? 話と違うじゃないかッ!」

「艦種は特定できる?」


NATOから提供されていた事前情報との不一致に苛立ちを隠さないシギノを手振りで窘めつつ、自分たちが観測している情報の方が正しいという前提で敵艦の分析を急がせるメルト。


「データ照合を行います――いえ、この距離では特定は困難です。もっと接近できればデータの信頼性が上がるのですが……」


それを受けたエミールは艦内のデータベースにアクセスして検索を掛けるが、現時点では絞り込みは難しいと首を横に振る。


逆に言えば"近似値"自体は既にデータベース内に存在していた。





 ブレーズ・ジャーニュ国際空港付近から東北東に100km以上離れた、内陸部の砂漠地帯――。


「(さらばだ……ジョージ・ノリス大将。貴官とキング・ジョージ6世の戦歴はここで終わりだが、その名は必ずや後世に伝わることになるだろう)」


光学迷彩的な効果を発揮する特殊装備"光学迷彩羽衣オプティカルクローク"をパージし、その威容を砂漠に現す陸上戦艦バクリュウ。


同艦のCICから戦果を確認した"将軍"レーヴェンタールはそっと目を閉じる。


3年前のルナサリアン戦争の最中、祖国ドイツを離反した彼もイギリスが誇る名将のことはよく知っていた。


……同じ軍人として尊敬の念さえ抱いていた。


「将軍! 敵艦隊の一部が転進しこちらへ接近しています!」

「艦種識別――アドミラル・エイトケン級巡洋艦1、ジェネラル・ビアンキ級駆逐艦4!」

「やはり来るか……"蒼い悪魔"!」


副長と通信士の報告を聞いたレーヴェンタールは力強く目を開く。


同型艦が存在しないとされるアドミラル・エイトケン級を運用する艦隊は世界に一つだけ。


"蒼い悪魔"ことゲイル隊の出向先であるオリエント国防海軍第13独立艦隊――またの名を短距離戦術打撃群だ。


超電磁砲ズーパーシーネンカノーネ、第二射準備急げ!」

「砲身の強制冷却開始!」


レーヴェンタールの指示を受けた火器管制官は第二射に備えた発射シークエンスを開始する。


バクリュウの甲板上に搭載されている砲塔型超電磁砲は驚異的な弾速と攻撃力を誇るが、それに比例するように莫大な電力を要求し排熱量も大きい。


そのため、超電磁砲の長大な砲身には一部分を開放して熱を放出する機構が用意されていた。


「(冷却完了までは180秒ほど掛かる。そして、敵艦隊との接触も同じくらいの時間になるか)」


手元のタブレット端末に表示されている超電磁砲のパラメータを眺めながら頭の中で計算するレーヴェンタール。


超電磁砲は冷却能力などとの兼ね合いから連射が利かず、実用的な発射間隔は約180秒+αとなっている。


一方、速力300km/h程度と思われる敵艦隊が最短ルートで接近してきた場合、180秒以内に交戦距離に入る可能性が高い。


「敵艦隊、速力を上げます!」

「回避運動で時間を稼げ! 引き付けてから敵旗艦を叩いて勝負を決める!」


しかも、電探操作員(レーダー管制官)によると敵艦隊はクールタイムを突くように速度を上げているという。


待ち伏せ砲撃は困難と判断したレーヴェンタールは早めにふねを動かし、接近時に狙い撃つ作戦を立てる。


「ただし引き付け過ぎるなよ! 超電磁砲ズーパーシーネンカノーネは近距離では使えないからな」


彼がブリッジクルーたちに忠告している通り、取り回しが悪い超電磁砲は有効射程がピーキーで間合いの取り方が難しい。


無論、それに的確な指揮で対応するのがレーヴェンタールの本領ではあるが……。





 同じ頃、こちらはダカール市内中心部に位置するレオポール・セダール・サンゴール国際空港。


市域東側のブレーズ・ジャーニュ国際空港が壊滅したことを受け、同飛行場を拠点としていた部隊の航空機が引っ切り無しに着陸していた。


サンゴール空港は地上も空中も渋滞気味だ。


「ブレーズ・ジャーニュ空港が落とされたってのは本当か?」

「ああ……ルナサリアン様たちが慌ただしくしている」


戦況の混乱は救急車に乗り込んだ状態で待機中のアフリカ人"有志"たちも感じ取っている。


彼らはアフリカ・ルナサリアンの元正規軍人たちから指導を受け、緊急車両の運用など補助的な任務を任されていた。


「今戻ってきた部隊には負傷者がいるらしい! 事故対応チームは直ちに出動し滑走路脇で待機せよ!」


その時、車内の無線機から管制官による出動要請が聞こえてくる。


「了解、救1発車する!」


救急車のドライバーはヘルメットを被り、シフトレバーをPレンジからDレンジに移動。


先に出発した化学消防車を追いかけるようにアクセルを踏み込む。


自国内に石油資源を持たない旧ルナサリアン製の自動車は全てEV(電気自動車)だ。


「あの機体……ミヅキ隊の機体じゃないか?」

「1機は酷い損傷だな……搭乗者の容態が心配だ」


彼らは緊急車両の待機スペースから滑走路まで遅くとも1分以内に到着できるよう訓練を受けていた。


誘導路を走行しながら乗員たちは滑走路上に停止している3機の陸戦改造型ツクヨミの姿を確認する。


消火作業を必要とするような火災は起きていないが、中央の1機はコックピットブロックが大きく損壊しているように見えた。


「……後は我々が対応します。あなた方は管制塔の次の指示に従ってください」


現場に到着し、救急車から降りたアフリカ人有志は損傷度合いに改めて衝撃を受ける。


だが、自分たち以上に呆然としていたミヅキ姉妹を見つけた彼は冷静を装いながら声を掛け、管制塔に指示を請うことを促す。


それぐらいしかできることは無かった。





「妹のことは任せる……」


翻訳機を持っていなかったので青年の言葉は分からなかったが、気を遣われていることを悟ったフタバはその厚意を受け入れ自身の機体の所に戻っていく。


「……」


地面に座り込んでペットボトル入りの水を頭から被っていたミツバも姉に促されて立ち上がる。


「(肉親が瀕死の重傷を負ったら平然ではいられないだろう。あの人たちの反応は正しい)」


"月のケルベロス"という異名で呼ばれている3人のサキモリ乗りが三つ子であることはアフリカ人青年も知っている。


そして、同じ血を持つ彼女たちが強い絆で結ばれていたことも……。


「ん? あ……はい、了解しました。そのように伝えます」


負傷者の救出作業が開始される中、消防車内で待機していた別のアフリカ人有志は無線の呼び出しに気付き送受話器を取り上げる。


「フタバさん! 管制塔からの伝言です!」


無線の相手は管制塔の管制官だった。


話を聞いた少年は消防車から降り、身振り手振りをしながら今まさに動き出そうとしていたフタバの陸戦改造型ツクヨミに駆け寄る。


「『ミヅキ・フタバ及びミヅキ・ミツバ両名は、帰投次第速やかに司令官サクヅキの所へ出頭せよ』とのことです」


停止してくれた砂色のサキモリに身体能力を活かしてよじ登ると、珍しくヘルメットを外したままのフタバに直接話し掛けるのだった。

【Tips】

アドミラル・エイトケンは既存の軽巡洋艦から派生したふねであり、試作兵器的な意味合いが強かったことから同型艦の建造は計画だけに留まっていた。

だが、ルナサリアン戦争の実戦を通してアドミラル・エイトケンは有用性を証明することに成功。

戦中の損耗分を補うための予算の一部がアドミラル・エイトケン級の建造に充てられ、2135年時点ではネームシップの運用データを反映した2隻が実際に竣工している。

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