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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 2-2】砂まみれの死闘

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【73】ダカール奪還作戦Ⅸ:三羽烏の陣

 三羽烏さんばがらすの陣――。


3機のサキモリが縦一列に並んだ状態で目標に接近し、波状攻撃を仕掛ける"月のケルベロス"ことミヅキ三姉妹による合体攻撃。


単独の敵に対する集中攻撃または敵陣の強行突破に用いられる。


攻撃時のフォーメーションは固定されており、格闘戦が得意な長女フタバが前衛、判断力が要求される中盤を次女ミツバ、そして前二人が怯ませた敵に火力を叩き込む後衛は末女ヨツバが担当する。


彼女たちは"絆"が生み出す津波のような攻撃で数々の戦果を挙げてきた。





「(どうする? 普通の対応では後続に押し潰されることになる)」


死神の列が砂煙を上げながら迫り来る中、セシルは頭をフル回転させて策を練る。


今回は先頭の機体はもちろん、後続機からの追い打ちに対しても警戒しなければならない。


「(攻撃は絶対に避けなければならない。たとえ軽い一撃でも食らって姿勢を崩したら、その瞬間を集中攻撃される)」


まず、大前提として攻撃を食らうことはたとえカス当たりであっても許されない。


少しでも隙を晒せば後続機は絶対に見逃さないはずだ。


「(意表を突いて先頭の奴を飛び越える? いや……アイツらは僚機を踏み台にして飛んで来ることがある)」


あらゆるパターンを頭の中でスーパーコンピュータのように瞬時にシミュレートするセシル。


しかし、計算結果が出力されるたびに頭の中の小さな自分は首を横に振る。


「(どちらにせよ上方向に逃げるのはダメだ。相手には対空射撃ができる奴がいる)」


彼女が最も厄介だと感じていたのは隊列の最後尾に位置している射撃装備の陸戦改造型ツクヨミ。


前2機の攻撃をかわした直後に狙われた場合、理想的な回避運動または防御態勢は取れないかもしれない。


また、インファイターのセシルにとっては単純に相性が良くない相手でもあった。


「見切ったッ! キェェェェェサァ!」


スローモーションだった世界が通常の速度に戻っていく。


目の前には銀色の刃を構え、砂塵のような不可視の"オーラ"を纏うフタバの陸戦改造型ツクヨミが迫っていた。


「(ッ! 右に抜ける!)」


構え方から察するに攻撃モーションはおそらく袈裟斬り。


セシルは実体剣のリーチを瞬時に見極め、刃先が届かず尚且つ斬り返しも当たらない"相手から見て左方向"へ愛機オーディールM3を動かす。


「なッ……ミツバッ!」


必中を期した一閃をかわされたフタバは驚愕しつつも反射的に次女の名を叫ぶ。


「くッ……!」


その声を聞くよりも早くミツバの陸戦改造型ツクヨミは大口径散弾銃を左手に持ち替え、反動で関節部が損傷するのを覚悟の上で二連射していた。





「ッ……!」


散弾銃の銃口が向けられていることに気付いたセシルのオーディールは咄嗟に防御態勢を取り、両腕からビームシールドを最大出力で展開。


至近距離で撃たれた時よりはマシとはいえ強力な連射のダメージを軽減し、機体各部の全スラスターを駆使することで反動による転倒も防ぐ。


「逃がさねえぞ、オイッ!」


これで"三羽烏の陣"は無事凌ぎ切ったかと思われたが、隊列の最後尾に位置していたヨツバはここでホバー移動の特性を活かしたテクニカルな動きを見せる。


スピードと進行方向を変えること無く蒼いMFの方を振り向き、想定とは異なるカタチになったが一斉射撃による追い打ちを繰り出したのだ。


「「隊長ッ!!」」


着弾地点の周囲には大量の砂煙が巻き上がり、セシルのオーディールの姿を視認することができない。


彼女が一斉射撃如きでやられるはずが無いとは思いつつも、スレイとアヤネルは揃って心配げな表情を浮かべる。


「……コード『G-FREE』!」


次の瞬間、リミッター解除の宣言と同時に砂煙の中から蒼いMFが力強く飛び出してくる。


その機体もまた、黒い疾風のような不可視の"オーラ"を纏っていた。


「正面装甲とソリッドサーベルをやられただけだ! 私の心配よりも援護を続けろッ!」


セシルのオーディールは散弾と一斉射撃を受けた際に正面装甲が損傷し、防御効果を期待して構えていたソリッドサーベルも刃(こぼ)れで使い物にならなくなっていた。


だが、性能を大きく損なうようなダメージではなくセシルの闘志はむしろ激しさを増している。


「ミツバねえとオレの攻撃はまともに当たってたんだぞ……悪魔め!」


一方、手応えのある一斉射撃を浴びせながらもピンピンしている"蒼い悪魔"にヨツバは驚きを隠せない。


当たり所が良く強運に恵まれていたのか、真の悪魔ともなれば守りさえ堅いのか……。


いずれにせよ"三羽烏の陣"が不発に終わったことは由々しき事態であった。





「もう一度仕掛けるわよ! 次は確実に決める……いいわね!」

「了解……!」

「ああ……やってやるぜ!」


末女が攻撃した際に少しだけ乱れたフォーメーションを整えつつ、フタバは妹たちに2度目の"三羽烏の陣"を命じる。


本来はワンコンタクトで決めるための合体攻撃なのでこれは異例の指示だが、ミツバとヨツバは特に困惑すること無く力強い返事で答える。


「援護射撃だッ! 少しでも攻撃タイミングを遅らせてくれればいい!」

「ゲイル2、ファイア!」

「ゲイル3、ファイアッ!」


対するセシルは反撃のタイミングを計りつつ僚機のスレイとアヤネルに援護攻撃を行わせ、時間稼ぎ――あわよくばフォーメーションの切り崩しを狙う。


一応ゲイル隊にも合体攻撃のようなフォーメーションはあるが、スレイ機が損傷している状況ではあまり無理はさせられない。


「豆鉄砲如きで怯むな! 増加装甲を使い潰すつもりで突っ込みなさいッ!」

「くそッ! もっと強気で援護攻撃しろッ!! ああ……チクショウがッ!!!」


死闘の中で両者共にアドレナリンがドバドバ溢れ出しているのだろう。


フタバもセシルも普段の様子からは想像できないほど激しく、明らかに苛立ち気味の口調で僚機に発破を掛けている。


「(同じ回避運動はもう使えない……ならば、頭を潰して受け止め切ってやる!)」


相手はバカではない。


前回と同じ行動パターンはもちろん、ありふれた行動パターンは全て対策済みで確実に見切ってくるはずだ。


幸いにも純粋な機体性能ではオーディールの方に分がある。


セシルは思い切った策に出ることにした。


「これで死ねよやッ! "蒼い悪魔"ッ!」


先程と同じようにルナサリアン式機動兵器用実体剣"カタナ"を構えるフタバの陸戦改造型ツクヨミ。


E-OS(イーオス)ドライヴ、フルパワーッ!」


損傷したソリッドサーベルを投棄し、代わりに左手首からビームソードを抜刀。


お馴染みの二刀流スタイルであえて真正面から突撃するセシルのオーディール。


狂犬と悪魔は全身全霊を以って再びその力をぶつけ合おうとしていた……。





「キェェェェェサァ! ――何ッ!?」


相手は回避すると読んで"カタナ"を振るうフタバだったが、その読みとは異なる行動を取ってきた相手に彼女は驚愕した。


「ぐッ……うおおおおおッ!!」


E-OSドライヴの出力、ビームソードの出力――そして各部スラスターの推力を全て絞り出し、セシルのオーディールは"三羽烏の陣"を真正面から力尽くで押し返そうとする。


「(力負けしている……マズい……!)」


実体剣は良くも悪くも機体本体の出力に左右されにくい特性がある。


そのため、大量のエネルギー供給により一瞬だけ爆発的な攻撃力を得られるビームソードを食い止めることができず、フタバの陸戦改造型ツクヨミのカタナは瞬く間に熔かされてしまう。


それでも残された部分と増加装甲で蒼い光の刃を逸らし、コックピットへの直撃だけは辛うじて避ける。


「姉さん!? きゃあッ!?」


しかし、隊列の先頭が急に動きを止めたことで後続のミツバ機は回避し切れずに激しく接触。


砂埃を巻き上げながら転倒してしまった。


「うおッ!? おいおいおい!?」


隊列の最後尾にいたヨツバは接触寸前で緊急回避に成功したが、鍔迫り合いで押されていたり転倒したりしている姉たちの状況に理解が追い付かない。


「ミツバッ!!」

「1機転倒したぞ! トドメを刺せッ!」


格闘戦の隙を突いて離脱しようとするフタバを徹底的にマークしつつ、セシルは転倒した敵機の処理を部下たちに託す。


「了解! 射線が通るように動いて!」

「悪く思うなよ……ファイア!」


上空を旋回しながら待機していたスレイとアヤネルは速やかに攻撃態勢に入り、未だ立ち上がれていない砂色のサキモリに向けて一斉射撃を放つ。


「くっそおおおおおおッ!!」


ミツバねえが危ない――。


そう考えるよりも先にヨツバはスロットルペダルを踏み抜き、次女を守るように自機を射線上に飛び込ませる。


そして、2機の蒼いMFを迎え撃つべく負けじと一斉射撃を繰り出すのだった。

【Tips】

ビームソードなどビーム刀剣類は機体からエネルギー供給を受ける方式が主流であり、本体側の出力により攻撃力が変化する特性を持つ。

つまり出力を引き上げれば破壊力も向上するのだが、それはエネルギー消費量の増加や発生器の損耗といったリスクとの引き換えでもある。

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