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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 2-2】砂まみれの死闘

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【67】ダカール奪還作戦Ⅲ:戦車の道は敗北に通ず

 対地攻撃――特に戦車のように強固な目標と戦う際のMFのメイン火力としては、やはり対戦車ミサイルのような最適化された爆発物が挙げられる。


熱エネルギーで分厚い装甲をくレーザー兵器も有効だが、動きが遅い敵に対しては少々勿体無いだろう。


「ファイア! ファイア!」


そして何より、セシルの卓越した技量を以ってすればミサイルもレーザーも必要無かった。


彼女のオーディールM3は右肩でMF用無反動砲を担ぎ、2発の成形炸薬弾を敵超重戦車の後部履帯及び砲塔に向けて発射する。


対戦車戦用でより強力なAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)は今回持ち込んでいないため、攻撃力不足はウィークポイントを狙うことで補う必要があった。


「攻撃能力は奪わせてもらう!」


履帯が破損したことで機動力を大きく削がれたうえ、砲塔への直撃弾により腕部を損傷した超重戦車は戦闘能力の大半を喪失。


それでも完全な無力化を目指すセシルは左手首からビームソードを抜刀すると、すれ違いざまに超重戦車の主砲を一閃。


たった1回のコンタクトで超重戦車を沈黙させてみせた。


「まずは一つ……!」

「敵戦車の沈黙を確認。流石の手際だね」


セシルの撃破報告の裏付けを取るようにリリスも敵戦車の無惨な姿を視認し、新兵器相手に全く後れを取らない親友に称賛の言葉を贈る。


彼女の部下が指摘していた通り、このまま順調に行けばワンサイドゲームになりそうな勢いだ。


「くッ……!」


だが、次の超重戦車はそこそこデキる戦車兵が乗っているらしい。


マシンガンの連射速度を活かした対空射撃の前にはセシルも容易には接近できず、チャンスが生まれるまで足踏みを余儀無くされる。


「(射撃武器は軽すぎて効率が良くない。もっと的確に攻撃を加える必要がある)」


そもそもセシルは射撃よりも格闘が得意なMFドライバーである。


彼女は手持ちの射撃武器では攻撃が通りにくいと感じていた。


「(幸いにも敵の動きは熟練の戦車兵ではなさそうだ。今後、あれが他の戦線でも現れた場合に備えて研究しておくか)」


敵超重戦車の動きは悪くないが、旧ルナサリアンの正規部隊や列強諸国との合同軍事演習で対戦する機甲師団ほどではない。


セシルは自身が得意とする格闘戦による対戦車戦闘を真剣に検討していた。





 無反動砲を収めた蒼い可変型MFは一気に超重戦車へと肉薄する。


「ゲイル1が突撃した! 戦車相手に格闘戦か……!」

「懐に飛び込まれると弱い相手に対する、最も一般的な出方ですわね」


少々ハイリスクな戦術に困惑するヴァイルとは異なり、中隊長の実力をよく知るローゼルはその判断を冷静に支持していた。


「スモークを焚いたところで……その後の回避運動が不適切ではな!」


超重戦車はスモークディスチャージャーから発煙弾を発射し目眩ましを図るが、セシルは煙の中に映る影を捉え続けることでこれを見逃さない。


また、攻撃手段は自機が目立たないよう実体剣のソリッドサーベルを選択する。


「敵戦車、全速力で針路を維持しています!」

「はぁッ!」


上空にいる僚機のスレイからの報告で敵の位置を最終確認し、セシルのオーディールはソリッドサーベルを抜刀。


煙幕の切れ目に超重戦車の巨体がハッキリと見えた瞬間、蒼いMFは二振りの銀色の刃で砲搭部分の腕部及び砲身をほぼ同時に斬り落とす。


「トドメまでしっかりと刺させてもらう!」


一連の素早い攻撃で敵戦車の戦闘能力は失われたが、離脱際にレーザーライフルへ持ち替えていたセシルは所謂"振り向き撃ち"に近い姿勢で追い打ちを掛けておく。


「これで二つ……!」

「2両目の撃破を確認!」


セシル機の戦果を上空から視認したアヤネルの声は心なしか嬉しそうだ。


「(次の相手は……ふむ、あれだけ隣接しているなら同時にやれるか?)」


見晴らしの良い上空に移動したセシルは敵航空機と戦う僚機をサポートしつつ、自らが叩くべき敵についても吟味を行う。


彼女が目をつけたのは連携するように行動している2両の超重戦車だった。


「お前の重装甲と重量、逆に利用させてもらう!」


超重戦車の特徴は分厚い装甲と限られた地形でなければ運用できないほどの超重量。


極めて端的に表現するならば、バカみたいに頑丈でしかもクソ重い鉄の塊だ。


そこに"武器"としての可能性を見出したセシルは素手で接近戦を仕掛ける。


「セシル姉さま!? 一体何をなさるつもりで!?」

「オーディールの瞬間的なパワーならば……!」


今回ばかりは彼女を信奉するローゼルでさえ驚愕する中、セシルのオーディールは超重戦車に取り付くや否やこれを容易に持ち上げてしまう。


MFの動力部であるE-OS(イーオス)ドライヴは一瞬だけなら核融合炉に匹敵するパワーを絞り出すことができる。


「ふぅんッ!!」


ただし、フルパワーが許されるのは閃光のように一瞬であり、しかもMFは非常に軽量なため重い物を持ち続けると押し潰されてしまう。


バランスが崩れ始める前にセシルのオーディールは投擲とうてき体勢に入ると、両腕で持ち上げた超重戦車を別の戦車めがけて思いっ切り全力投球するのであった。





 衝撃波が発生するほどの勢いで投擲とうてきされた超重戦車は狙い通り別の戦車に激しく衝突。


ぶつけられた方は凄まじい衝撃で車体が文字通り分断され、投げられた方の戦車もその反動で空中へ舞い上がった後、破片を撒き散らしながら空港敷地外に落下し大爆発を起こす。


「う、ウソでしょ……」

「あー……もうメチャクチャだな、こりゃ」


超重戦車には超重戦車をぶつける――。


野蛮で原始的だが強烈な攻撃を目の当たりにしたスレイとアヤネルは、感心というよりも困惑に近いリアクションを示す。


彼女たちの目には地上に佇む上官セシルの蒼いMFが悪魔のように見えていた。


「ん……おい、あれを見てみろ!」


だが、そんなことはどうでもいいと言わんばかりにヴァイルのオーディールはマニピュレータで地上を指し示す。


「撃破された戦車から乗員が脱出していますわ。足を負傷している者もいるみたいですわね」


ローゼルの視線の先には少し前に無力化された超重戦車から脱出し、負傷者の肩を抱えながら退避していく戦車兵たちの姿があった。


「いや、こいつらルナサリアンじゃない! 男だ! 有色人種が乗っていた!」


しかし、部下よりも近い距離で人影を確認することができたリリスはその事実に驚愕する。


戦車兵たちの体型は明らかに男性であり、しかも肌の色が黒かったのだ。


「何だと!?」

「現地人を徴用して戦闘に駆り出してたのかよ! 許せねえ!」


これには冷静沈着なセシルも流石に驚きを隠せず、早とちり気味のアヤネルに至っては戦争犯罪に対する怒りを露わにしている。


「(それが事実であれば、敵戦車の動きの悪さも納得がいく……しかし)」


一般的に徴用兵は志願兵よりもモチベーション・能力共に低くなりがちだと指摘される。


その理屈にのっとった場合、確かに超重戦車のような"量産型超兵器"は到底扱い切れないだろうとセシルは考える。


「(知らなかったとはいえ、同胞であるはずの地球人を手に掛けてしまったな……)」


職業軍人として上層部の命令に従い戦っている以上、テロリストと同義のルナサリアン残党にくみする者たちを倒すことに躊躇いは無い。


もちろん、本音を言えば犠牲は最小限に済ませたかったが……。


「あの、セシル姉さま。作戦の進行状況に関して一つ気になることが……」


物思いにふけっているとローゼルのオーディールが隣に降り立ち、何やら不安げな面持ちで話し掛けてくる。


「どうした?」

「艦隊の進軍が遅れている模様です。最終WP(ウェイポイント)の通過が確認できていません」


セシルに発言を促されたローゼルは味方艦隊の進軍が順調ではない可能性を報告するのだった。

【Tips】

オリエント人及びルナサリア人は白人にも有色人種にも該当しないとされており、そのためか"無色人種"――侮蔑的な表現としては"色無し"と呼ばれることもある。

ただし、オリエント系であっても先天的に小麦色の肌を持つ有色人種は少ないながら存在する。

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