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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 1-6】過熱するテロリズム

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【46】デン・ハーグは灰燼と化した

【2026/7/17追記】

改行の形式を後半のエピソードと統一させるように修正。

初期版から文章を一部修正。

※ストーリー展開自体に変更点はありません

 デン・ハーグ空襲から約半日後――。


「おはようございます、隊長」

「ああ……」


 短距離戦術打撃群旗艦アドミラル・エイトケンの談話室で仲の良い乗組員達と話していたアヤネルは、ついさっき起床したばかりであろう上官セシルを砕けた感じの挨拶で出迎える。


 ここ最近夜間の出撃が多かったセシルは周囲の計らいで丸一日の休養が認められ、今日は珍しく昼過ぎまで寝ていたのだ。


「それはニュース映像か?」

「ええ、昨晩の空襲に関する報道です」


 ようやく目が覚めてきたセシルの問いにアヤネル――と仲が良い乗組員の一人が答える。


 当のアヤネル本人は飲み物を取りに行くため席を外していた。


「ご覧いただけるでしょうか? これがレヴォリューショナミーというテロ集団が招いた惨事です」


 談話室のテレビでは主にオリエント連邦の衛星放送を受信して視聴することができる。


 そして、このチャンネルに限らず世界中のあらゆるメディアが昨晩オランダで起きた出来事について特番を組んで報じていた。


「現地メディアの報道によると、現時点で確認されている死者数は政府関係者を中心に86人。その中にはオランダ首相ロドルフ・エヴェルス氏と同氏の家族も含まれている模様です」


 オリエント連邦の国営放送もオランダのニュース番組を引用して被害の全貌を伝えている。


 あの規模の夜間空襲で86人の犠牲者で済んだと見るべきか、それとも政治的に重要な86人が犠牲になったと見るべきか……。


「現在映っているのが首相官邸などが立地するビネンホフ地区なのですが……爆弾かミサイルが直撃したのでしょうか。地上には深いクレーターが穿うがたれ、建物は完全に焼失して瓦礫の山と化しています」


 続いて映像は空襲から一夜明けたビネンホフ地区の空撮に切り替わる。


 戦闘中はハッキリとは視認できなかったが……酷い惨状だ。


「……」


 あの時、最前線にいながらビネンホフ地区への攻撃を阻止できなかったセシルは握り拳を震わせる。


 地上に巨大な爆弾を落とした敵機――珊瑚色とティールブルーのMFを撃墜し損ねた自分自身の不甲斐無さに怒りを抱く。


「作戦に参加できなかった私が言うべきことじゃないかもしれないけど、あんたが悔しがる必要は無い」


 その姿を見かねて諭したのは紙コップを手に戻ってきたアヤネルだった。


 彼女はコーヒーが淹れられたコップの一つをセシルに渡すと、自身の分のコーヒーを飲みながら上官の左肩を優しく叩く。


「ゲイル隊もブフェーラ隊も――もちろん、オランダ軍の連中もできることは精一杯やったんだろ?」


 防空戦に参加した全ての将兵達の奮戦を労うアヤネル。


 彼女はアイスランド解放作戦で撃墜された機体に代わる予備機の準備が間に合わず、もどかしい思いをしつつアドミラル・エイトケンのCIC(戦闘指揮所)から昨晩の戦闘を見守っていた。


「……ありがとう、少しだけ気持ちが楽になった」


 部下から思わぬ励ましを受けたセシルは握り拳を緩め、普段のイメージとは異なる穏やかな表情を浮かべるのだった。



 翌日――。


「――よし、みんな揃ったわね? それじゃあブリーフィングを始めるわよ」


 アドミラル・エイトケンのブリーフィングルームにはMF部隊の面々が集められていた。


 全員の集合を確認した短距離戦術打撃群参謀のカリーヌ少将は早速ブリーフィングを開始する。


「まずは今のヨーロッパ情勢についてだけど……先のデン・ハーグ空襲を皮切りにレヴォリューショナミーの武力行使は一段と活発化し、ヨーロッパ各地で戦線は激化の一途を辿っている」


 最初にデン・ハーグ空襲以降ヨーロッパ地域がどういった状況に置かれているのかを説明するカリーヌ。


 新たな戦争の火種は予想外の勢いで燃え広がり、今や世界中を覆わんとしていた。


 比較的情勢が安定しているという日米やオセアニア地域でも何かしらの動きが起こることは時間の問題だろう。


「先日の戦闘では奴らは内陸部の方へ撤退していきました。ヨーロッパ地域内にレヴォリューショナミーの拠点があるのではないでしょうか」

「もちろん、その可能性を考慮して各国は調査に当たっているわ。それについては有益な情報が出てくるのを待つしかないわね」


 ヴァイルの指摘に頷きながらカリーヌは調査及び情報収集を進めていると答える。


「でも、あなた達を手持ち無沙汰にしない良いしらせがあるわよ」

「どこに向かわされることになっても驚かんぞ」


 微笑む実姉カリーヌに嫌な予感を抱いたセシルは観念したかのように肩をすくめる。


「実はね……さっき言っていた調査の過程でアルプス山脈の山間部に不自然な人工物が多数確認されたの」


 カリーヌの言う良い報せ――それは"アルプス山脈に何かがある"という曖昧な調査報告だった。


「アルプスの山の中に行くのかよ……!」

「衛星画像を詳細に分析した結果、それは建設途中のレーダーサイトであることが判明したわ」


 これまでの経験から全てを察したアヤネルを補足するようにカリーヌは各人のタブレット端末に衛星画像を表示させる。


「こんな険しい場所に資材を運び込んで建設してるなんて……!」


 衛星画像を見たスレイはさすがに驚きを隠せないようであった。



「画像の場所はスイスとオーストリアの国境地帯でね、この辺りの国々を結ぶ空域になっているの」


 続いてカリーヌはブリーフィングルームの真っ白な壁面に衛星画像の場所が含まれた広域地図を投映する。


 広域地図には当該地域を通過する航空路が書き加えられており、トラフィックの多さが一目で分かるようになっている。


「……例のレーダーサイトが完成した場合、空域の安全性が脅かされることになりますわね」


 表示されている航空路は基本的に民間機用のルートだが、現在のような戦時下では軍用機の航行が優先されるケースもある。


 すなわち、当該地域の制空権は中央ヨーロッパの航空輸送と安全保障に深く関わっている。


 もしも制空権を奪われ対空レーダーによる監視網が確立したら、ローゼルの懸念は現実となるだろう。


「その通りよ。だから、レーダーサイトが稼働する前に叩く必要がある」


 それを阻止する方法は"レーダーサイトを建設させないこと"だとカリーヌは述べる。


「いくら空中から資材搬入ができるとは言っても、ああいう場所は輸送コストが掛かる。割に合わないことを教えてあげればレーダーサイトの建設はいずれ諦めるでしょう」


 険しい山岳地帯での建設作業は平地よりも制約が多く大変困難だ。


 クレーン車のような重機は入れられないし、現場の危険性を考慮すると作業員も必要最低限に抑えるべきだ。


 何度も妨害されるなら建設計画は無期限延期にせざるを得ない――それこそがカリーヌの狙いだった。


「アルプス山脈は難しい空域だと聞くぞ。エリアによっては地元の連中でさえ飛ぶのを嫌がると噂されている」

「セシル上級大佐のおっしゃる通り、元々山岳波の影響が大きいことに加えて今の季節は暴風雪も懸念されます」


 任務内容は分かった。


 しかし、セシルとヴァイルは作戦エリアとなるアルプス山脈の地形的特徴について言及する。


 小型軽量ゆえ乱気流の影響を受けやすいMFにとって、大気の状態が不安定な秋の大山脈を飛行することはそれ自体が危険行為だと断言できる。


「普通は航空戦力など派遣せず、巡航ミサイルで済ませるだろう――普通ならば、ね」


 また、MFよりは乱気流に強い戦闘機であっても被撃墜による人命喪失のリスクは常に付き纏う。


 リリスが正論を唱えるのも当然の反応だ。


「私達の国みたいな軍事大国ならともかく、ヨーロッパ諸国は巡航ミサイルを潤沢に配備しているわけじゃない」


 リリスの提案は確かに魅力的だが、何よりも彼女自身がそれは実現困難だと否定的な見解を示す。


「ああ、前の戦争で在庫分をほぼ使い切ったとまで言われているしな」


 セシルが指摘しているように各国は3年前のルナサリアン戦争で兵器を大量消費しており、軍備再編が進められているとはいえ戦前の水準に戻っているとは言い難い。


 元々国防予算が限られているヨーロッパ諸国の場合は尚更だ。


「まずは限られた巡航ミサイルで粗方掃除して、それでも撃ち漏らした分を私達が潰しに行けってことか……」


 ヨーロッパ諸国から面倒事を押し付けられたことを悟ったアヤネルは軽いタメ息をくのだった。

【山岳波】

山岳地帯で発生することがある乱気流の一種。

山を伝うように気流が上下する過程で増幅され、それに起因する突風は時として航空機を空中分解させてしまうほどの破壊力に達する。

航空業界では可能な限り回避すべき現象とされる一方、グライダーの運用においては滑空距離を伸ばすために利用されることがある。


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総合評価ポイントが増加すればランキング入りする可能性が増え、より多くの人の目に留まる機会を得ることに繋がるので……。

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