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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 1-5】It's So Hard

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【35】激流の双子(中編)

 敵増援との接敵に備えるべくエレメント(2機編隊)を組み、レイキャヴィーク空港上空で待ち構えるスレイとアヤネル。

空港敷地内から立ち上る黒煙が目眩ましになることを期待しての布陣だ。

「アヤネル! こっちへ!」

「了解! ハンディキャップマッチで迎え撃つ!」

スレイとアヤネルは隊長セシル不在でもほぼ完璧な連携を取れるまでに成長していた。

しかも、敵機はエースの可能性が高いとはいえ単独。

2対1ならば苦戦はしないと思われたが……。

「来るぞ――2機だと!?」

敵機を視程に捉えたアヤネルは目を見開く。

一塊だったスラスターの蒼い噴射光が突如二手に分かれ、それぞれが複雑な機動を描きながら攻撃態勢に入ったからだ。

「きゃッ!?」

「大丈夫か!?」

敵機たちから放たれた4本の蒼く細い光線がスレイとアヤネルに襲い掛かり、うち2本が前者のオーディールM3に着弾する。

咄嗟にビームシールドを展開したことでダメージは免れたものの、この隙にゲイル隊は敵機の接近を許してしまう。

「こいつはオレが引き受けた!」

「くそッ! ゲイル3、ファイア!」

血気盛んで好戦的なヤツヅキ・ナグモが獲物として見定めたのはアヤネルのオーディール。

上官を彷彿とさせる運動性で間合いを詰めてくる白とえんじ色のMFに対し、アヤネルは両肩に担いだ無反動砲で迎え撃つ。

「遅いんだよッ!」

だが、自信に満ちたその言葉を証明するかのようにナグモのディオスクーロイは軽やかな機動で徹甲榴弾を回避。

同時に背部ハードポイントの鞘に収納されたルナサリアン式実体剣"カタナ"を抜刀し、蒼いMFへと襲い掛かる。

「ッ……!」

無反動砲を担いだまま鋭い斬撃をかわし続けるアヤネルのオーディール。

しかし、無反動砲を安全に使用できる最低射程まで敵機を遠ざけられなかったため、やむを得ず武装を投棄し機体を身軽にする。

「意外とやるじゃん……気に入った!」

レヴォリューショナミーの決起から約1か月――。

これまでの相手は格下ばかりで歯応えが無かったが、今回は予想以上に楽しめそうだ。

ナグモはヘルメットの中で舌なめずりをしながら不敵な笑みを浮かべる。

「お前はオレが倒す! そう簡単に墜ちてくれるなよ!」

白熱した戦いを期待しつつも本気でカタナを振るうナグモのディオスクーロイ。

「(厄介ファンめ……!)」

一方、ビームソードで切り結んでいるアヤネルにはこの状況を楽しむ余裕はあまり無かった。


「マイクロミサイル、シュート!」

敵エースの片割れ――ヤツヅキ・ツクモのディオスクーロイを相手取ることになったスレイはマイクロミサイル一斉射撃でこれに対抗。

ミサイルの弾幕で敵機の動きを牽制し、あわよくば撃墜のチャンスが生まれることを狙う。

「……速い! あんな易々と回避するなんて!」

しかし、妹の機体の色違いにあたる白と紫苑色のMFは驚異的な運動性でそれを全弾回避。

チャフやフレアといった防御兵装すら必要としない回避能力にスレイは驚愕する。

仮に逆の立場だったら万全を期すために確実に使っていただろう。

「V.S.L.C、発射!」

回避運動と並行してツクモのディオスクーロイは適切な攻撃ポジションを模索。

自身ほどでは無いが素早く動き回る蒼いMFとの駆け引きの末、ツクモは機体の腰部に装備されたV.S.L.C――可変速レーザーキャノンによる連続射撃を仕掛ける。

「(しかもレーザーキャノンで正確な射撃をしてくるとは……私、面倒な相手に目を付けられちゃったみたい)」

エースドライバー同士の一騎討ちで理想的な攻撃ポジションに就くことは容易ではない。

事実、白と紫苑色のMFの正確無比な攻撃はスレイのオーディールに防がれていた。

3年前の戦争を戦い抜いた彼女がシールド防御以外の選択肢を取れなかった時点で強敵であることは明らかだった。

「(相手の間合いは最低でも中距離以上。一気に懐へ飛び込めば勝機はある)」

激しい撃ち合いの中でツクモは相手が得意とする交戦距離を見極める。

初手でマイクロミサイルによる間合い維持を試みていたことからも分かる通り、蒼いMFはおそらく接近戦に自信が無いため不利な状況を避けようとしている。

……つまり、接近戦に持ち込めればオールラウンダーなツクモが優位に立てる可能性は高い。

「ファイア!」

「発射!」

レーザーライフルから蒼い光弾を連射して弾幕を形成するスレイのオーディール。

腰部のV.S.L.Cをライフルのように振りかざして蒼く細い光線を放つツクモのディオスクーロイ。

反射速度に関して言えば後者の方がまるで未来予知していたかのように僅かながら上回っていた。

「くッ……!」

狙い澄まされた射撃の連続にスレイは反撃へ転じることができず、ビームシールドで耐え続けるしかない。

「(左V.S.L.Cをスキャッターモードに設定、近距離射撃で封じ込める!)」

それをイノセンス能力で察知したツクモは左腰側のV.S.L.Cのみ低収束率レーザーを散弾のようにバラ撒く"スキャッターモード"に切り替え、特性が大きく異なる攻撃による畳み掛けを図る。

「ッ……!」

「教本通りの模範的な防御態勢ね……!」

右腕でレーザーライフルを構えたまま左腕からビームシールドを展開するという、スレイのオーディールの基本に忠実な動作にツクモは感心する。

この堅いディフェンスを切り崩すのはなかなか大変だ。

「でも、右半身の防御が甘いのよ!」

だが、それはあくまでも並のMFドライバーから見た場合の話。

ツクモはビームシールドの範囲外――蒼いMFの右半身側に狙いを定めていた。


「発射ッ!」

ツクモのディオスクーロイのV.S.L.Cから2種類のレーザーが放たれる。

「ぐッ……!」

予測しづらい攻撃にもスレイは咄嗟に反応しビームシールド左右同時展開で対抗するが、右腕側のシールドでカバーし切れなかったレーザーライフルは蒼い光弾に撃ち抜かれ破壊されてしまう。

これによりスレイのオーディールは中距離戦における有効な攻撃手段を失うことになった。

「"蒼い悪魔"! あなたはもう墜ちなさい!」

蒼いMFは固定式機関砲の斉射で間合いを取ろうとしてくるがもう遅い。

終わりの無いディフェンスを続ける敵機に今度こそ直撃弾を与えるべく、ツクモは左右操縦桿のトリガーに人差し指を掛けたまま攻撃チャンスを待つ。

彼女のイノセンス能力はまだ"今がその時だ"とは囁かなかった。

「(姉貴ッ!)」

タイミング合わせに集中していたツクモの脳裏に妹ナグモの声が奔る。

この双子は優れたイノセンス能力により言葉を直接交わさずともある程度は意思疎通が行えるのだ。

「ッ!?」

操縦桿のトリガーを引く寸前まで来ていたツクモだったが、妹からの警告を受け即座に攻撃行動を中断し回避運動へ移行。

その直後、白と紫苑色のMFがいた場所を一発の大口径弾が通過していく。

これが命中していればレヴォリューショナミーの新型機と言えど無傷では済まなかったはずだが……。

「あ、アヤネルッ!」

そして、この大口径弾の使い手をスレイは知っていた。

大口径弾を発射できるMF用アンチマテリエルライフルを装備しているのは、同僚のアヤネルが駆るオーディールだけだ。

「てめえッ! 姉貴の邪魔しやがってッ!」

苦楽を共にしてきた大好きな姉を狙ったことに対する怒りか、あるいはそれを自分との対決中に片手間で行ったことへの不満か――。

ナグモのディオスクーロイの攻撃がより一層激しさを増す。

「邪魔するだろうがッ!」

「対物銃を振り回して格闘戦とは生意気なッ!」

武器を持ち替える余裕が無いアヤネルはアンチマテリエルライフルの銃身で斬撃を弾こうとするが、ナグモの卓越した剣技よりあっと言う間に一刀両断されてしまった。

「ちぃッ……!」

ライフル諸共両腕を斬り落とされたアヤネルのオーディールは残された脚部で反撃を試みるが……。

「バラバラに切り裂いてやる!」

無情にもナグモのディオスクーロイの二刀流滅多切りが蒼いMFの両脚を一方的に破壊し尽くす。

「クソォッ! 私が先に戦線離脱するなんてな……!」

文字通り手も足も出せなくなったアヤネルにできることは、不時着時の被害を最小限に抑えるダメージコントロールだけであった。

【ルナサリアン式実体剣】

旧ルナサリアンは地球よりも優れた製鉄技術を有しており、その代表とされるのが機動兵器用実体剣である。

ルナサリア語で"カタナ"と呼ばれたこの武器は装甲を容易く切断できるほどの切れ味を持ち、またルナサリア人にとっては単なる武器以上の意味合いを帯びた神聖な"魂"でもあった。

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