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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 1-5】It's So Hard

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【31】アイスランド解放作戦

 目標地点への移動を急ぐ短距離戦術打撃群航空隊の前にレヴォリューショナミーの防衛戦力が立ちはだかる。

「戦闘力では劣っていても時間稼ぎぐらいはできるはずだ……!」

国際共同開発のヨーロッパ製MF"サイクロン MGR.1"を筆頭に雑多な機種で構成された部隊を率いるドライバーは戦闘力の差を認識しており、自分たちの戦力で迎撃することは難しいと考えていた。

「この……馬鹿野郎! 勝てないと分かっていて戦うつもりか!」

それは彼らと対峙するセシルも同じ考えであり、時間稼ぎを目的とした姿勢に眉をひそめながら毒を吐く。

普通に戦えばセシルたちの勝率は100%以上だ。

「ゲイル1、こいつらは私の小隊が引き受ける! 君たちは空港に向かえ!」

勝敗は分かり切っているのでどうでもいい。

リリスは目の前の敵部隊を圧倒できることを前提としたうえで、中隊長セシルに移動の優先を促す。

「数はそこそこ多いぞ……やれるのか?」

「フフッ、この程度の戦力ならば問題ありませんわ」

短距離戦術打撃群航空隊が運用するオーディールM3よりも個々の戦闘力では確かに劣るかもしれないが、無人戦闘機LUAV-02を連れ回している敵部隊は手数で攻めてくる可能性がある。

しかし、アヤネルの懸念をリリスは鼻で笑いながら一蹴する。

ルナサリアン戦争を戦い抜いた自分たちの実力に絶対的な自信を持っているようだ。

「……先制攻撃で敵部隊を撹乱し、その隙に一点突破を図る」

この場は親友が指揮する小隊に任せていいと判断したセシルは提案を受け入れ、敵陣を抉じ開ける一斉攻撃を行うために部隊を動かし始める。

「ゲイル各機、しっかり付いて来い! 行くぞ!」

「「了解!」」

セシルのオーディールが一気に前に出る。

そのアグレッシブな動きに追従するようにアヤネルとスレイも乗機を加速させるのだった。


「ターゲットロック! ゲイル1、シュート!」

バックパックのウェポンベイのカバーを開き、マイクロミサイルを発射するセシルのオーディール。

それに合わせて僚機たちもミサイル攻撃を行い、濃密な弾幕による押し潰しを狙う。

「くッ……回避ブレイク! 回避ブレイク!」

馬鹿正直に真っ向から攻撃を仕掛けたのもあるとはいえ、レヴォリューショナミー航空部隊の実力は決して低くはないようだ。

隊長機の指示と同時に各機は回避運動へ移行し、大量のマイクロミサイルを確実にかわしていく。

「よし! 敵部隊のフォーメーションが崩れた!」

「フルスロットル! ここは通してもらうぞ!」

不幸にも回避し切れなかった数機しか撃墜できなかったが、回避運動を強要された敵部隊は一時的に連携が乱れる。

ヴァイルたちの協力で切り開かれた進路が塞がれる前にセシルは愛機オーディールの推力を上げ、ゲイル隊各機が付いて来ているのを確認しつつ敵陣中央を最大速度で突破する。

「逃がすな! 反転して追撃!」

「お前たちの相手はこっちだ!」

包囲網の再構築に手間取るレヴォリューショナミー航空部隊に今度はリリス率いるブフェーラ隊が襲い掛かる。

「被弾した! 推力低下――墜落する!」

リリスのオーディールの素早い射撃を食らったレヴォリューショナミー所属のフランス製MF"LH95 メルセネール"は瞬く間に炎上。

市街地への墜落を避けるべく最期の力を振り絞った末、開けた空き地に叩き付けられるように墜落してしまう。

「速い! 行動に迷いが無い!」

レヴォリューショナミー航空部隊とブフェーラ隊を分かつ要因は挙げればキリが無い。

一方的に押される苦しい戦いの中、サイクロンのドライバーが最も脅威と感じたのは"意思決定の速度と正確性"であった。


「ブフェーラ3、アタック!」

牽制射撃で敵機を翻弄しながらヴァイルのオーディールは人型のノーマル形態に変形。

防御態勢を崩すため攻撃タイミングを意図的にズラしつつ、右手首からビームソードを抜刀し斬り掛かる。

「クソッ! パワーが違い過ぎる!」

「パワーもスピードもこちらが上だッ!」

ライオットシールドで辛うじて斬撃を防いだレヴォリューショナミー所属の"サイクロン MF.1"だったが、出力差で押し切られ堪らずバランスを崩してしまう。

その隙を見逃すこと無くヴァイルは一気に前へ踏み込み、鋭く素早い刺突で敵機の胸部を貫いてみせた。

「UAV……! カバー頼む!」

「了解! ブフェーラ2、ファイア!」

戦闘は混戦の様相を呈しつつある。

UAV(無人戦闘機)が攻撃の後隙を窺っていることに気付いたヴァイルは僚機に援護を要請。

それに応じたローゼルは機体下面に装備されている攻防一体シールドシステムを構成するユニット"連装式小口径レーザーキャノン"の照準を大雑把に合わせ、至近弾でも撃墜できると判断し操縦桿のトリガーを引く。

「敵機撃墜!」

ローゼルの甘い照準で放たれた2本の蒼い光線が無人戦闘機LUAV-02の真下を掠めていく。

しかし、搭乗者の安全を考慮する必要が無く装甲が極端に薄い無人戦闘機はこの攻撃にも耐えられず、錐揉み状態に陥ったまま地上へ墜落する前に爆発四散していた。

「"蒼い悪魔"の片割れですらこの強さなんて……!」

「もう片方はもっと強いって言うのかよ!」

元より勝算が低い戦闘だったとはいえ、たった3機で戦力差を容易く覆してくる"蒼い悪魔"にレヴォリューショナミーのMFドライバーたちは戦慄する。

特に前者は元オリエント国防空軍所属の女性ドライバーであり、同胞の実力をよく知っていたにもかかわらず――だ。

どうやら、最後に見聞きした時よりも更に強くなっているらしい。

「単独戦闘は避けろ! 互いにカバーし合いながら戦え!」

縮まっていく戦力差と元々絶望的な実力差を少しでも補うべく、連携の徹底を促すサイクロン MGR.1のドライバー。

「敵部隊の連携は既に崩れ始めている! このまま押し込むぞ!」

好調なペースを維持して戦うように指示を飛ばすリリス。

「(ダメだな……この程度の戦力では話にならない)」

淡々と戦闘を続けているヴァイルの心中は敵に対する憐れみか、それとも……。


 レイキャヴィーク空港――。

市街地に程近い場所に位置するアイスランドにおける主要な空港の一つ。

アイスランド東部のエイイルススタジル空港よりも設備が整っていたためか、レヴォリューショナミーによる侵攻時は真っ先に占領されてしまい、現在は司令部などを擁する重要軍事拠点と化している。

もしこの空港を多国籍軍が奪還できれば、アイスランド解放に大きく近付くことができるだろう。

「緊急発進急げ!」

「出撃準備を終えた部隊から順次市街地に展開せよ!」

レイキャヴィーク空港に進駐しているレヴォリューショナミーは多忙を極めていた。

駐機場では大型トレーラーを改造した車両からLUAV-02が絶え間無く射出され、それと並行して安価な戦闘車両を中心とする地上部隊が続々と市街地へ向かって行く。

「(あえて真っ昼間から仕掛けてくるとは……"蒼い悪魔"、恐るべしと言ったところね)」

レヴォリューショナミーの誰もが"多国籍軍は夜襲を仕掛けてくる"と予想し防衛戦の準備を進めていた。

実際にはその予想が外れたため、夜間戦闘機のような漆黒のカラーリングの専用機ナイトエンドを駆るクロエも急遽出撃することになってしまった。

「(セオリー通りの夜襲だったらあいつらと一緒に防空戦に参加できたんだけど、仕方が無い)」

じつはアイスランドに駐留しているレヴォリューショナミーのエースはクロエだけではない。

レイキャヴィークから50kmほど離れたケプラヴィーク国際空港という施設もレヴォリューショナミーが占領しており、その場所はクロエが"あいつら"と呼ぶ2人のエースが拠点としていた。

「アーベント、ツラナミとツラナギが到着するまではお前が防衛線を支えてくれ」

「あの双子が来る前に厄介な奴らだけは排除しちゃうんだから! コントロールタワー、離陸許可を!」

レヴォリューショナミーのエースたちの一部は互いに対抗意識を抱いているらしい。

管制官から"あいつら"到着までの戦線維持を求められた瞬間、クロエは露骨な対抗心を見せて本気モードのスイッチを入れる。

SNSの裏アカウントで炎上案件を煽って楽しんでいる時とは全く異なる、戦闘のプロに相応しい真剣な表情そのものであった。

「前方の機体が離陸完了次第、滑走路への進入及び離陸開始を許可する」

「了解! アーベントよりコントロールタワー、離陸を開始する!」

先行機の離陸を確認した管制塔から許可が下りると同時にクロエのナイトエンドは滑走路へ進入。

迅速な離陸を行うため滑走路上で一時停止する事無くそのまま推力を上げ、他の機体よりも明らかに高い速度に到達してから一気に機首を上げ雲一つ無い青空を翔け上がるのだった。

【ライオットシールド】

機動隊が使用しているような防護盾をMFサイズに拡大した物。

サイクロン系列機が装備するシールドはポリカーボネート製の透明な見た目が特徴で、一般的な実体シールドよりも軽量且つ防御中も対象を視認できるというメリットがある。

ただし、シールド自体の耐久性や純粋な防御力は低いとされており、装備を酷使することが多い軍用機での採用例はあまり無い。

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