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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 3-5】冬空の下、理想はすれ違う

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【196】彼女の真意

 融雪システムが作動しておらず、雪が降り積もった屋上――。


 そこに彼女の後ろ姿はあった。


「フフッ……12時丁度、時間通りに来てくれたわね」


 現在時刻は彼女が指定した12時丁度。


 トレンチコートに身を包んだ金髪碧眼の美女――ライラックは人の気配を感じて振り返り、お馴染みの余裕綽々とした微笑みを浮かべる。


「リリー達は連れて来なかったのね」


 ライラックには娘が2人いる。


 一人は先日の戦闘で再会した次女サレナ。


 そしてもう一人は同じくスターライガのMFドライバーだが、現在育児休業中の長女リリーだ。


「あいつら――特にリリーを連れて来ると面倒な事になりますから」


 この屋敷への招待を受けた時、ライガは誰にも報告せず独断で単独行動することを決めた。


 それは幼馴染たちの母親に対する感情を考慮したためだ。


「博士、僕だって暇な人間じゃないんです。用件があるならば手短にお願いします」

「……用件は二つよ」


 家族ぐるみの付き合いをしていた頃の少年"ライガ・シルバーストン"として語り掛けられたことを受け、彼の要望通り早速本題に入るライラック。


「まず、先日の件についてだけど……私からも感謝の言葉を述べさせてちょうだい」


 一つは先日の件――要人O.S.保護作戦についてだった。


 ライラックは戦闘終了時にも礼を述べていたが、この場で改めて感謝の気持ちを伝える。


「あなた達が"O.S."と呼称していた要人――彼女は私にとっても良き友人だから」


 O.S.もといオウカ・サルコウは旧ルナサリアンからオリエント連邦へ亡命する際、ライラックによる手引きを受けたという噂があった。


 彼女の話を聞く限りその噂は事実だったらしい。


「表立って動くことにリスクが付き纏う私の代わりに、彼女を守ってくれてありがとう」


 ライラックという人物は煙に巻くような言動を取ることも珍しくないが、感謝の言葉と気持ちは間違い無く本心であった。



「そして、二つ目は……」


 先程と異なり今度は意味深な溜めを入れるライラック。


「ライガ・シルバーストン、我々レヴォリューショナミーの――いえ、私の同志となりなさい」

「何だって?」


 溜めの後に紡がれた彼女の言葉は予想外の内容であり、ビジネスネームではなく戸籍上のフルネームで呼ばれたライガは思わず目を丸くする。


「そうすればあのも……オリヒメも喜ぶ。彼女の犠牲を無駄にしない、新しい世界秩序を築く足掛かりになる」


 ライラックの真意はレヴォリューショナミーという組織とは別のところにあった。


 彼女は旧ルナサリアンの指導者にして個人的な親友であったアキヅキ・オリヒメの名前を挙げ、今の世界のままではその死が無駄になってしまうと警鐘を鳴らす。


「そうか……世界に戦いを挑んだ真意は、歪んだパズルを一度リセットするためのキッカケ作りだったのか」


 3年前の戦争の最後、その手でオリヒメを討ち死に際を看取ったライガは発言の意図を即座に理解した。


「ええ、その通りよ。私はスズヤが掲げる"理不尽な占領政策に対する抵抗"という目的にはあまり興味が無い」


 前大戦以降の行動から親ルナサリアンと見做されることが多いライラック。


 だが、レヴォリューショナミー創始者の一人にしてアキヅキ家のシンパ"皇道派"を率いるヨミヅキ・スズヤとは革命に求める意義が異なっていた。


「私は彼女を焚き付けて利用し、彼女は私が持つ技術や知識を利用する――ビジネスライクな関係ね」


 お互いを"敬意リスペクト信頼トラスト"の精神で尊重しつつも、相手の持ち味を利用し合う――。


 ライラックはレヴォリューショナミーのツートップの在り方をこう表現する。


「私自身の目的は誤った方向に進みつつあるこの世界を根本的に修正し、純化させること」


 月に駐留する占領軍を全て撤退させるのがスズヤなどルナサリアン残党出身者の目標である。


 一方、ライラックは世界その物に構造的な欠陥があると主張し、それを再構成により改める"純化"を目的としていた。


「そうして生まれた混じり気の無い新世界を導く、始まりの指導者は……あなたのような優れた能力者イノセンティアこそ相応しい」


 彼女がライガを自らの同志として求める理由――。


 それは彼自身のことをよく知っているのもそうだが、彼のイノセンス能力が新時代の扉を開けるカギの一つになると睨んでいたからだ。



「あなたはあなた自身が考えている以上に才能に恵まれた、完璧で究極に近い人間なのよ」


 ライラックがライガのことを極めて高く評価している要因はイノセンス能力の素質だけではない。


「プラチナのように輝かしい血統、母親から譲り受けた美しい容姿と声、周囲の人々を思いやれる優しい心――」


 筆頭貴族の中でも名門とされるシルバーストン家の直系血族という出自に、母レティ譲りの銀髪碧眼と中性的なハスキーボイスは多くの人にとっては努力では手に入らないモノ。


 それでいて普段はライガ・ダーステイという男を演じているため表に出さないが、本質的にはオリエント人男性らしく優しい気性の持ち主とされる。


「それだけじゃないわ。必要であれば何かを守るために戦うことを躊躇わない勇気、その根幹を成す卓越した戦闘技術もある」


 戦闘能力についてはライラックが今更言うまでも無いだろう。


 傑出した勇気と驚異的な操縦技術を以ってあらゆる強敵を倒してきた実績は、"最強の戦士"と呼ばれるMFドライバーを体現している。


「それに加えて、広い世界と未来を見据える視野や人を育てて動かす能力まで持ち合わせている」


 ここまでならフィクションにありがちな完璧超人かもしれない。


 ライガが違うのは未来が不確定な現実世界に生きるからこそ必要な先見性、そして自分以外の人間の力を引き出すことの重要性を理解している点だ。


「人間として必須の基礎部分は元々あるから、できることを精一杯やれば自ずと財産や人脈といったカタチで結果が付いて来る」


 恵まれた環境と才能におごらず努力する姿は人々に好影響を与え、それが"敬意リスペクト信頼トラスト"を得ることに繋がり周囲を良い方向に成長させる。


 与えた恩義が必ず返って来るとは限らないが、幸いにもライガは彼自身と同じぐらい誠実な人々に恵まれていた。


「完璧超人に付け入る隙の無い生き方をされたらかなわないわね……」


 MFの基礎理論を完成させたりバイオロイドを発明したライラックも相当の天才であるはずだが、そんな彼女でさえ肩をすくめるほどライガという人間が秘める"スペック"は計り知れなかった。

敬意リスペクト信頼トラスト

オリエンティア的騎士道精神の根幹を成す概念の一つ。

オリエント人社会では相互に強く結び付いていると考えられており、"相手の信頼を得たければまず敬意を示せ"と言われることも多い。

ビジネスなどでオリエント人と組む時にも重要であり、彼女らは敬意を払うことを知らない相手に対しては冷淡な態度しか取らない。


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