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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 3-4】Focus on Escort

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【189】判断ミス

 護衛対象のCH-47JB輸送ヘリ――コールサイン"ボールドイーグル"を狙う敵増援の出現を受け、直掩に就いているライガとサレナは索敵しながら迎撃の手順を練る。


「(敵部隊は――北と西に分かれて出現したか。一人で処理するには距離が遠すぎるな)」


敵影が現れたおおよその方角は北と西。


二点の出現位置は結構な距離があるため、単独で対応すると効率が良くないとライガは考える。


彼の技量と愛機パルトナ・メガミRMの性能ならば苦戦はあり得ないので、移動の方が時間が掛かって大変だろう。


「西に出現した部隊は私が対処する。あなたは北の相手をお願い」

「ボールドイーグルを孤立させるのは不安だが……少し我慢してもらうか」


とはいえ、交戦以前の段階で無駄な時間を費やすわけにもいかない。


積極策による各個撃破というサレナの提案に珍しく懸念を示しつつも、特に反対はせず迅速な意思決定を下すライガ。


「そういうことだ、話は聞いていたな?」

「了解。でも、なるべく早く護衛に戻って来てくださいよ」


彼から"行動方針を把握したか"と訊かれたボールドイーグルの機長ミルヤミは護衛機の判断を尊重するが、それと同時に不安感もポロリと漏らす。


輸送ヘリは極めて脆弱なので敵機に接近されたら死を覚悟した方がいい。


「寂しがり屋め……最善は尽くす」


森林迷彩塗装のヘリに向けて乗機の右手を振ってから、ライガは護衛対象と別れて単独行動へ移行する。


「(ヤンキーだって馬鹿じゃない。本気でオウカ嬢を消すつもりなら、なりふり構わないはずだ)」


ライガはヘリに搭乗している護衛対象の要人が何者なのか当然知っている。


そして、彼女が抱えている秘密の重大性にも薄々気付いていた。



「(この対応を提案した手前、ここで確実に止めないとね……)」


先程意見具申した際に述べた通り、言い出しっぺのサレナは作戦エリア西側に出現した敵増援の迎撃に向かう。


「(敵は2機編隊。ヘッドオンで1機、反転しての再攻撃でもう1機を仕留める)」


相変わらずの吹雪で敵部隊は視認できないが、機上レーダーで捕捉すれば存在と戦力は把握できる。


機種は第一波と同じ"LUAV-01 アーシュラ"で、お互いをカバーするように編隊を組んでいる。


交戦距離が近付く中、戦闘の段取りを頭の中でシミュレーションするサレナ。


「ファイア!」


あらかじめ構えていた試製レールランチャーの射程に入る寸前、サレナは右操縦桿のトリガーを引く。


間合いの長さにモノを言わせた先制ヘッドオン射撃で敵機を一機撃墜しつつ、もう一機の反撃は超高速でそのまますれ違ってやり過ごす。


UAVはボールドイーグルの撃墜を最優先としているのか、それ以外の攻撃目標に付き合うつもりは無いらしい。


「(想定通り! 速度を重視した旋回で背後に回り込む!)」


サレナの愛機クリノス・エグゼは小回りよりも安定性を重視した射撃機。


彼女はE-M理論に基づいた最も効率的な旋回半径で素早く針路を反転し、直接視認できない敵機の位置をHUDコンテナで把握しながら追撃態勢に入る。


スロットルペダルを目一杯踏み込み、フル加速で距離を詰めていく。


「捉えたわよ……!」

「こちらボールドイーグル、針路上に敵増援だ!」


真っ白な銀世界の中にUAVの後ろ姿が僅かに浮かび上がる。


しかし、サレナが右操縦桿のトリガーを引こうとしたその時、護衛対象の輸送ヘリを操縦するミルヤミから信じ難い無線が飛び込んで来る。


「何ですって!?」

「距離は――くそッ、ここからじゃ全速力で引き返しても間に合わん!」


サレナとライガは残りのUAVを処理しながら片手間で索敵を行うが、今からボールドイーグルの所へ戻っても敵増援に先んじることはできないと判明する。


「くッ……私が直掩に戻るわ!」

「失策を償えとは言わないが……頼む、ボールドイーグルを守ってやってくれ」


それでも防御力皆無な護衛対象を放置するわけにはいかない。


自身の提案が招いた窮地を悔やむサレナの心中を案じたのか、ライガは幼馴染を引き止めずに自己判断での行動を認めるのだった。



「マズいな……敵機に捕捉されるのは避けられないぞ」


一方その頃、ヘリコプターの操縦桿を握り締めるミルヤミは険しい表情を浮かべていた。


レーダー画面上の情報から自機、護衛機、敵機の位置及び速度を読み取って大雑把に計算した結果、一番近い未来は"自機と敵機の接触"だと結論付いたからだ。


「隊長! 何をするつもりだ!?」

「こういう目的で持って来たわけじゃないが、ドアガンがあってよかったな」


無論、貨物室の面々もただ黙って座っているわけにはいかない。


白兵戦要員の一人の声をよそにフランシスは右舷側ドアを開放して使用する機関銃――所謂ドアガンの準備を始める。


「射撃に自信がある奴! もう片方のドアガンに就け!」


慣れた手つきで銃架に機関銃をセットしつつ、逆サイドの脱出用ハッチのドアガンも使うよう指示するフランシス。


CH-47JBはコックピット真後ろの胴体右側に乗降口、左側に脱出用ハッチという構造でどちらもドアガンを使用できる。


胴体最後部の貨物扉にも設置可能だが、高速飛行中の開放は危険なので今回は使用しない。


「誰かオウカさんにイヤーマフを着けてやれ! 予備があるはずだ!」


また、機関銃の発砲時は大音量の銃声に晒されることになる。


それはフランシス達と同じ空間にいるオウカやシュウカも例外では無いため、聴覚を保護するための対策が必須である。


「これを……あ、どっちの耳に着ければ……」


上司の指示を受け予備のイヤーマフ(防音耳当て)を取り出したアンナ=カーリンだったが、ここで彼女はルナサリア人の身体的特徴を思い出す。


ルナサリア人は頭部側面にある地球人と同形状の耳介に加えて、頭頂部から伸びるウサギのような耳という二種類の耳を持つことが特徴だ。


これらは可聴域の違いなど異なる役割を担っており、できればどちらの耳も保護するのが望ましい。


「こうすれば私は大丈夫よ。できればこの子にも耳栓が欲しいのだけれど」


お淑やかな雰囲気からは想像できないほど落ち着き払っているオウカはイヤーマフを取り上げると、地球人と同じスタイルでそれを身に着ける。


ウサ耳の方はヘッドバンドで押さえ付ければ問題無いようだが、このイヤーマフは大人用なので幼児の頭に着けることはできない。


「……申し訳ありません。幼児向けの耳栓は用意していなくて」

「気にしないで。ティッシュペーパーを耳栓代わりにするわ」


あいにく適当な耳栓の用意が無いことを詫びるアンナに対し、オウカはそれを咎めること無く手持ちのポケットティッシュで代用品を作り始めるのであった。



「全員掴まれ! 急降下で加速してこの場を切り抜ける!」


CH-47JBの最高飛行速度は時速約320キロ。


これは大型ヘリコプターとしてはかなりの快速だが、UAVを自力で振り切れるスピードではない。


苦肉の策としてミルヤミは急降下による加速を決断する。


「スロットル開度最大!」


彼女がセンターコンソール部分のスロットルレバーを前に押した次の瞬間、機内に反響するエンジン音が一段と大きくなり機体が加速し始める。


高度計の数値がぐんぐん下がっていき、対地接近警報が作動しないギリギリの高度で操縦桿を少し戻す。


外部からは極めて危険な超低空飛行に見えていることだろう。


CFチャフ・フレア散布!」


しかし、このアクロバット飛行だけでは敵機を撒くことは難しい。


そこでミルヤミは本来ミサイルを回避するためのデコイを意図的に散布。


UAVのセンサー類を撹乱して先制攻撃を封じてみせる。


「輸送ヘリだからって無抵抗だと思うなよ……!」


攻撃行動を中断しヘリの右側を抜けようとする敵機をフランシスは見逃さず、高速ですれ違う見えない機影に向けてドアガンを発砲。


ハッキリ言って当てずっぽうの偏差射撃だったが、奇跡的に胴体に命中しており敵機を戦線離脱させることに成功する。


「くそッ、後方に回り込まれた!」


だが、人生初の敵機撃破を記録したフランシスが操作するドアガンは自機を誤射しないよう射角に大きな制限が設けられている。


自機の後方にいる敵機はどう足掻いても狙うことができない。


「ドアガンの射角外だ! 狙いを付けられるようにしろ!」

「無理を言うな! これはMFじゃないんだぞ!」


フランシスの無茶振りに対しヘリではMFと同じ機動はできないと叫ぶミルヤミ。


ヘリもMFもホバリングやバック飛行はできるが、両者は動力性能に天と地の差がある。


「(早く戻って来てくれ! こっちは逃げ回るのにも限界があるからな……!)」


そして、純粋な機動力ではUAVの方が圧倒的に上だ。


ドアガンを構えているフランシスは心の中では焦りを隠せなくなっていた。

【HUDコンテナ(ハッドコンテナ)】

機上レーダーで認識した航空機、車両、艦船をH.I.S上に捉えた際に出てくる、目標の存在を強調する四角い表示に対する俗称。

フライトシューティングゲームの画面を想像すると分かりやすいだろう。

作中時代においては各種アビオニクスとの連動が標準化しており、敵味方の自動識別による色分けや機種名・艦名の併記といった便利機能もある。


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