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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 3-4】Focus on Escort

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【188】白銀の護衛(後編)

 自機の姿勢を把握する目標物が全く見えない、ホワイトアウトした世界の中を飛ぶライガのパルトナ・メガミRM。


ただし、彼は作戦エリア一帯の地形を頭に叩き込んでいる上、地図をレーダー画面に重ねて表示する機能を使えば視界不良でも行動することができた。


「(サレナの奴、手際が良いな。あいつを連れて来て良かったぜ)」


エアカバーを僚機のサレナに任せているライガの目的地は、護衛対象の"ホワイトストーク"が走るヴォヤージュ市道9号線沿いにあるドライブイン跡地。


その駐車場に護衛対象を車ごと空輸するためのCH-47JBヘリコプター――コールサイン"ボールドイーグル"がアイドリング状態で待機していた。


「ボールドイーグル! 離陸準備はできているか?」

「こちらボールドイーグル、お客さんを乗せればいつでも行けます!」


2基のローターにより生じるダウンウォッシュの影響を受けない位置に軟着陸したライガの問い掛けに対し、CH-47JBの機長を務めるミルヤミ・リンナプオミはコックピットから手を振って答える。


彼女が操縦する"CH-47JB チヌーク"は大型輸送ヘリの傑作機であり、乗用車1台をそのままキャビンに搭載可能な積載能力や飛行性能を買われ本作戦に投入された。


機体その物には特別な改造は施されていない。


「そろそろお客さんが着くはずだ。ロードマスター以外の乗員はヘリに乗り込んでおけ」


レーダー画面でホワイトストークの現在位置を確認したライガは、搭載作業完了後に素早く離陸できるよう必要な人員以外はヘリの機内へ戻るよう促す。


CH-47JBは操縦士・副操縦士・機上整備員の3名で運航できるが、本作戦では貨物の積み降ろしを監督するロードマスター2名と地上待機中に機体の周囲を守る白兵戦要員4名も乗員に含まれている。


「……やっと来たか。ここからが正念場だぞ」


そうこうしているうちに風切り音に混じって車のエンジン音が近付いて来る。


防寒服姿で機内から駆け出してきたロードマスター達を横目に見ながら独り言を呟くライガ。


「(フランシス達を車ごとヘリに積載して、そのまま何事も無く帰ることができればいいんだがな)」


後は護衛対象を乗せたヘリをヴワル市のスターライガ本部に到着させれば作戦は完了する。


だが、サレナと同等のイノセンス能力を持つライガは"見えない不安"を感じ取っていた。



「オーライ! オーライ!」


雪が降り積もった駐車場に入ってきたクロスオーバーSUV――コールサイン"ホワイトストーク"の前に立ち、掛け声とハンドサインで誘導している女性がロードマスターのオルテンシア。


スターライガが輸送ヘリを導入する際に必要人員として雇用した人物で、安全且つ迅速な搭載作業を監督するエキスパートだ。


「このまま前向き駐車でいいのか?」

「今は時間が惜しい。このまま機内に搭載して固定する」


輸送ヘリの貨物室に車ごと乗り込む直前、"ホワイトストーク"の運転手フランシスは窓を開けて確認を取る。


運用マニュアルでは自動車は後ろ向きに搭載することが推奨されているためだ。


そうすれば積み降ろしの際に前進で貨物室から出ることができるが、オルテンシアは積み込み時間の短縮を優先する方針を示した。


「了解。だが、その前にアンナと護衛対象を降ろしたい」


それを聞いたフランシスは先に助手席のアンナ=カーリンと後席に座る要人O.S.及びその娘を降車させ、輸送ヘリの機内に移動してもらうことを伝える。


CH-47JBの貨物室はSUVの車幅よりも少し広い程度なので、子連れだと車から降りるのが大変になってしまう。


一応、フランシスとアンナは窓を全開にすれば開口部から出られないこともないが……。


「オウカさん、こちらへ」


降りるよう促されたアンナは後部ドアを開け、幼い娘を抱きかかえたO.S.――オウカを輸送ヘリの機内に誘導する。


ヘリの方は貨物室側面に人員輸送用の折り畳み式座席が装備されており、飛行中はコックピットクルー以外はこちらに座る。


「よし、これより車をチヌークに積み込む。お前は機内に入って前方の緊締装置の準備だ」

「了解」


自分達以外の着席を確認したオルテンシアはもう一人のロードマスターであるカナロアに指示を出し、車の搭載及び固定作業に取り掛かるのだった。



 日頃から訓練を重ねている二人のロードマスターの迅速な行動により、搭載作業は短時間で完了した。


「カーゴランプの閉鎖確認! こちらボールドイーグル、これより離陸する!」


胴体後部の貨物扉の状態はコックピットのコンソールパネルでも確認できる。


右側の機長席に座るミルヤミがセンターコンソール部分のコレクティブピッチ・レバーを操作すると、輸送ヘリは横風に少し煽られながらゆっくりと上昇し始める。


「風は東南東約25ノット(秒速12メートル)。突風と視界に細心の注意を払いながら飛行しろ」


銀世界では効果が薄い森林迷彩塗装のヘリの離陸を地上から見守りつつ、風向き及び風速の情報を適宜提供するライガ。


秒速12メートルという風速はCH-47JBのサイズならば飛行に支障は無いが、実際にはこの数値以上の突風が吹くうえ視界はホワイトアウトにより劣悪だ。


「パルトナよりクリノス、ボールドイーグルの直掩に戻れ」

「こちらクリノス、了解」


輸送ヘリの離陸完了を確認したライガは追い掛けるように愛機パルトナを垂直離陸させ、周辺警戒に当たっていたサレナ機を近くに呼び戻す。


「向かい風になるのは運が良い。燃料を節約できるな」

「ええ、操縦もこの方が楽になりますからね」


操縦桿を握るミルヤミは副操縦士のベアータと軽口を叩き合う余裕を見せる。


ヘリコプターや飛行機は風上に機首を向けるように飛ぶと揚力を得やすく、エンジン出力を抑えても高度を保ちやすくなる。


「気楽なモノだな。こっちは向かい風になると凄くキツいぞ」

「あなたはシールドを風除けにできるからまだマシでしょ? こっちは風をモロに受けているのよ」


一方、ライガのパルトナやサレナのクリノス・エグゼといったMFの場合は事情が異なる。


MFは非常に軽量且つ人型ロボットという航空力学的に妥協を強いられる形状なので、向かい風は空力バランスの悪化などデメリットが大きいとされる。


クリノスのように風除けに使える実体シールドを持たない機体は特に難しいという。


「だから俺は実体シールド廃止に反対したんだ。ビームシールドとの併用がベストだとずっと言ってきた」


生真面目な性格をしているライガでさえMF談議に気を取られるほど緊張感を失っている。


一応、本人としては集中力は維持しているつもりのようだが……。



 悪天候と最初の敵襲を除けば作戦は極めて順調に進行していた。


それはCH-47JBの機内の雰囲気にも如実に表れている。


「あーうー」

「この子のお名前は? 歳はおいくつで?」


母オウカの膝に抱えられ貨物室を見渡す女児と視線が合ったフランシスは怖がらせないように笑顔を作る。


ブリーフィングで渡された資料に記載が無かったため、オウカの娘の名前は知らなかった。


「名前はシュウカといいます。今日でちょうど2歳になります」


ルナサリア人の特徴であるウサ耳にオウカと同じ空色の髪をしているが、父譲りと思われる紫色の瞳を持つ女児の名前はシュウカ・サルコウ。


戸籍上の生年月日は2133年12月23日の戦後生まれで、奇しくも今日が2歳の誕生日であった。


「これはこれは……誕生日プレゼントにしてはいささか刺激的だったかな」


子どもの扱いには慣れていないのか、幼いシュウカを撫でてあげようとするも思いとどまるフランシス。


敵を倒すことに躊躇が無い"戦闘のプロ"の意外な弱点だ。


「まあ、これ以上ハプニングは起きないでしょう。安心安全なフライトを提供致しますよ」

「あまり気を緩めるなよ。ライガさんにどやされるぞ」


その遣り取りを聞いていたのか機内アナウンスの真似で揶揄からかってくるミルヤミに対し、フランシスは怒ると怖い上司の名前を引き合いに出しながら肩をすくめる。


「(ライガさん――ライガ・ダーステイ。3年前、オリヒメ様を討ったという男……)」


ライガ・ダーステイはオリエント人ならば知らぬ者はいない国民的英雄。


彼が生ける伝説であることはルナサリア人のオウカも知っているが、その名前を耳にした彼女はかつて仕えていた主君の在りし日の姿を思い浮かべる。


「――パルトナよりボールドイーグル、レーダーに新たなアンノウンを捕捉した! 警戒しろ!」


そして、襲撃者もまたオウカの正体を把握している可能性が高かった。


彼女が搭乗する輸送ヘリとランデブー飛行していたライガは所属不明機の接近を確認すると、すぐに気を引き締めて戦闘モードに戻るのだった。

【Tips】

スターライガが運用するCH-47JBは日本陸軍から購入した中古機であり、森林迷彩を引き継いでいるのは塗装パターンの変更が面倒だったため。

一応民間機として再登録されていることをアピールするため、日本軍の国籍マークは塗り潰され防御用以外の兵装は取り外されている。


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