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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 2-4】その扉の向こうに待ち人あり

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【98】機械仕掛けの守り神(後編)

 地下空間を守る機械仕掛けの巨人――ウプウアウトとの戦いは1対5のハンデキャップマッチとなる。


スターライガチームは戦力で勝る代わりにサイズ差は如何いかんともし難く、しかも非武装の護衛対象を撃破されてはならないという"敗北条件"を背負っていた。


「フルールドゥリス、アタック!」


それでも彼女たちは果敢に攻めることで勝利を目指す。


まずはクローネのシン・フルールドゥリスがウプウアウトの後方へ回り込み、その後頸部(うなじ)を大型ビームソードで力強く斬りつける。


MF単機の攻撃力では首を取ることはできないが、繊細な内部構造にはダメージを与えられるはずだ。


「見たところレーザー以外の攻撃手段は徒手空拳だけのようだな」


一方、関節部に精密射撃でダメージを蓄積させていたライガは"巨人"の意外な弱点を見破る。


これまで確認された攻撃方法は単眼型頭部カメラアイからのレーザー照射、右手に握り締めたメイスのような武器、そして左腕による原始的な格闘攻撃の三種類だけだ。


かつて交戦した旧ルナサリアンの超兵器とは異なり、ミサイルやマニピュレータ内蔵のレーザー砲といった小回りが利く攻撃はしてこない。


「だとしたら腕部を無力化すれば攻撃を封じることができる」


ここまでの戦闘で得られた情報からリリカは確信する。


"巨人"の戦闘能力を完全に奪うことは可能だ――と。


「うむ、巨人解体ショーを始めるとしようか」


本来は自身の愛妻が乗るべき機体を託された若者に負けじとルナールも気合を入れ直し、巨大な得物を携えた愛機スードストラディバリウスを加速させる。


「その剛腕を斬り落とさせてもらう!」


黒地に金色のラインが美しいMFは基本性能にモノを言わせた機動力で一気に接近すると、巨大な得物――ギガントソードの構え方を調整しながら攻撃態勢に入る。


大きく重たい実体剣であるギガントソードは適切に扱わなければその切れ味を発揮できないどころか、過度な負担が掛かり刀身を破損させてしまう可能性があった。



「姉さん、私たちが牽制する! 関節部に捻じ込んでやれ!」

「アタック! ぐぅぅ……ッ! このまま叩き切るッ!」


リリカの強化型νベーゼンドルファーの援護を受けながらギガントソードを力強く振るうルナール。


その第一撃はウプウアウトの右肘を斬り落とすには至らなかったが、黒と金のMFは大剣を食い込ませたままメインスラスターを最大噴射。


パワーと推力を活かした力押しを図る。


「先輩ッ! 反撃が来るぞ!」


しかし、"巨人"は自由に動かせる左腕を振り上げて反撃態勢に移行。


この攻撃はさすがに自機を盾にして防ぐことはできないため、ライガは攻撃行動を中断し回避へ徹するよう大声で促すしかなかった。


「やらせるかよッ!」


防げない攻撃が来るのならば、それが繰り出される前にキャンセルさせるまで。


レカミエのνベーゼンドルファー(Vスペック)は遠隔操作型マルチウェポンユニット"グラン・アルブル"を格闘武器のように構えると、上司の機体にも負けない超巨大な光の刃を展開。


果敢にもウプウアウトの懐に飛び込み、迫り来る左手――その手首部分を一撃で一刀両断してみせる。


「ッ……でやァッ!」


頼れる僚機のおかげで危機が去ったルナールは攻撃を続行。


フルスロットル且つフルパワーでギガントソードを押し込み続け、ようやくウプウアウトの剛腕を切断することに成功した。


「右肘と左手首を一気にやった! まさか、5機のMFで"巨人"を駆逐しちまうのか!?」

「右肩は私がやる! アタック!」


護衛対象の全領域作業ポッドに乗るフランシスが感嘆の声を上げる中、今度はクローネのフルールドゥリスが攻撃態勢に入る。


純白のMFは大型ビームソードを真正面に構えると、縦方向に機体を高速ローリングさせながら突撃。


ウプウアウトの右肩に対して執拗なまでに斬撃を当て続け、その強肩を胴体から斬り落とすのだった。



「縦回転斬りとは……! 俺が指導せずともマニューバの研究を自発的に進めているようだな」


クローネが披露した珍しい必殺技にライガはとても感心していた。


なぜならその技は彼が日頃の訓練を通して教えたものではなく、おそらくクローネ自身が自ら考案して形にしたと思われる技だからだ。


そもそもライガは射撃系のMFドライバーであり、格闘戦用のマニューバに関しては基本的な技しか教えることができない。


「出来の良い教え子には尚更負けられん……!」


クローネと初めて会ったのは彼女が研修生として訓練を受けていた時だったが、秘める才能についてはその頃から確信があった。


それが自分の想像以上に開花してくれたことをライガは父親のように喜ぶ一方、負けず嫌いなベテランエースドライバーらしい強い対抗心も窺わせる。


教え子から"敬意リスペクト"を得続けるためには正しいカタチで強さを証明しなければならない。


オリエント人は自分よりも弱い者、悪しき者には従わない性質があるためだ。


「(俺自身も俺の機体も射撃系だ。強力な一閃をウィークポイントに刺すような戦い方には向いていない)」


心の中でそう独白しながらウプウアウトの関節部に精密射撃でダメージを与えていくライガ。


彼のパルトナ・メガミRMの謙虚さとは程遠い、専用長銃身レーザーライフルによるマークスマン(選抜射手)のような攻撃は着実に効いてくる。


「(その代わり、広範囲に火力をバラ撒くことは格闘機よりも得意だ)」


ライガは彼自身と愛機が得意とする状況の到来を待っていた。


「凄い戦闘効率だ……! ライガの奴、あれで余力を残しているんだから恐ろしい男だよ……!」


力を温存しつつもダメージレースでは決して後れを取らず、勝負に出るタイミングを冷静に待ち続ける――。


豊富且つ良質な戦闘経験値に裏打ちされた"戦い方の組み立て"には、人生の先輩たるリリカも舌を巻いて唸る。


「(さて、クローネが作ってくれた"傷口"を利用させてもらおう。内部構造を破壊し尽くして終わらせてやる)」


仲間たちからの称賛など露知らず、"巨人"のダメージを確認したライガはそろそろ仕掛け時だと考えていた。



「フゥンッ!」


ルナールのストラディヴァリウスの力強い斬撃がウプウアウトの左肩を叩き切る。


この攻撃により"巨人"は確認済みの攻撃手段を全て喪失する。


「ライガ、"巨人"は瀕死だ! そろそろトドメを刺してやるべきじゃないのか?」

「奇遇ですね。俺も今がその時だと思っていたところだ」


思考を見透かしているかのようなリリカの進言に頷くライガ。


彼女の言う通り"巨人"の駆逐を躊躇う理由は無い。


「リリカさんは左肩の切断面に一斉射撃を! 俺は右肩の切断面に攻撃を叩き込む!」


最後の一撃は単純明快だ。


敵機の内部構造を狙える位置にポジショニングするべくライガは指示を飛ばす。


「レカ、クローネ! 私たちはポッドの直掩に戻るぞ! "巨人"からは離れるんだ!」


ここから先は人数は必要無い。


アタッカーを終えたルナールは他の僚機に全領域作業ポッドの護衛に入るよう促し、ウプウアウトが倒された後のことを考えて行動する。


「了解!」

「お二人とも、頼みましたよ!」


その指示に従いクローネとレカミエは後退。


今回のメンバーにおいてツートップの技量を誇る二人にトドメを託す。


「変な気を起こされる前に沈めてやる! "オルファン"、前方に火力を集中!」


6基のオールレンジ攻撃端末を自機の周囲に展開し、専用レーザーライフルを構えた一斉射撃"スタインウェイ・フォーメーション"の構えを取るリリカのベーゼンドルファー。


「降り注げ、星の光……!」


2丁の専用長銃身レーザーライフルと腰部の可変速レーザーキャノン2門を正面に向け、同じく一斉射撃"スターダスト・アレイ"の態勢に入るライガのパルトナ。


「「ファイアーッ!」」


特に差し合わせたわけではなかったが、両者の攻撃タイミングは奇しくも完全に一致していた。

【Tips】

縦方向の斬撃は敵の頭上を狙う攻撃を仕掛けやすく、実体剣の場合は重さとスピードを乗せた強力な一撃を繰り出しやすいというメリットがある。

しかし、横方向の斬撃と比べて連撃を繋げるのが難しく、それを補うべく一撃必殺を重視すると隙が大きくなりがちというデメリットもある。

そのためMFの戦闘訓練では比較的シンプルな刺突を最初に学び、そこから水平斬りや袈裟斬りなどにステップアップしていくことが多い。

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