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なろうラジオ大賞4

天才科学者と幽霊少年

 天才科学者のトラヴィス=デビオンは今日も缶コーヒーを片手に研究に没頭してた。


 実験の結果が出揃うのにもまだまだ時間が掛かるし、それらを検証して一つの論文へと昇華させるのには数年単位の時間が必要なのである。だからこそ凡庸な一日の連続の中の今日になる筈だった。


『コロン』

 聞きなれない音が彼の耳に届き、振り返るとえんぴつが机の上を転がっていた。


「鉛筆? 一体どこから」

 不思議に思う彼の視線の先にはランドセルがあった。これは日本かぶれの友人から土産で貰った鞄だった。元々は日本のスクールバックで、一時期セレブを中心に流行った。貰った当初は困惑したが、意外に使い勝手が良かった為に普通に愛用していた。


「嘘だろ、おい」

 彼の目にはランドセルの隣に立つ半透明の少年の姿がはっきりと見えたのだった。量子力学を専攻している彼にとって目には見えないミクロの世界こそ主戦場であるのだが、幽霊の存在には否定的だった。さっきまでは。


「クソッ、落ち着け」

 首から下げている彼の星座である獅子をモチーフにしたペンダントを無意識に握りしめていた。幼少の頃に母から貰った物だからか安心出来た。


『僕もしし座』

 少年が微笑んだ。異国の言葉の筈なのに何故だか意味は理解出来た。脳に直接意味が伝わったと言う方が事実に近いのかもしれない。


 突如、風景が切り替わった。友人に見せられたことのある日本の夏祭りの風景だった。少年は神社の裏手の方へと歩き出す。

『チェックメイト』

 子供達の声と共に突き飛ばされた少年は咄嗟に生えていたひまわりを掴んだが、支えるのには不十分だった。斜面を転がり落ちていく少年に驚いたのか子供達は蜘蛛の子を散らしたように逃げて行ってしまう。

 二、三十メートル転がり落ちた先の樹に頭を強く打ち付けた少年はそこで一人、亡くなってしまったのであった。


 白昼夢から覚めた彼は、すぐに休暇を申請して日本へと向かった。何故だかそうしないといけないと思ったからだった。鉛筆に刻まれていた住所を検索した所、日本の神社がヒットしたのだ。その鉛筆もいつも間にか消えていた。


 彼は現場へ着くと、樹に貼られているおふだを剥した。瞬間、場面は体育祭に切り替わり、少年が楽しそうに躍動していた。

『ありがとう』

 場面はどんどんと透けて行き、最後に彼だけが現実の世界に立っていた。


 それから二度と少年が現れる事は無かった。その日以来、あのランドセルは屋根裏へ丁寧にしまわれている。

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