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極真空手との日々

作者: うつつ

喧嘩に明け暮れてばかりいた私のもとに舞い込んできた情報。

ケンカ空手、極真。

キョクシンとは…そこへ入門する寸前までを書いた、20年以上前の古い稿を挙げてみることにする。

うだるような夏も終わる頃

極真空手の門を仰いだのは多感な19歳の時であった。


まず、手始めにそこまでに至った経緯を読者諸兄に伝えたい。

まぁ今となっては照れ臭いものだが、若き日の至りと笑い流して頂ければと思う。


当時の私は何を置いても喧嘩っぱやく、腕にものをいわせていた。

それはそうだろう。世間様ではいい大学に入らんか為に猫も杓子も猛勉している高校時代に「そんなもの何処ぞ吹く風」と、木刀を片手に渋谷駅から千葉の高校まで通い。家を出てから戻るまで「必ず他校生と殴り合う」喧嘩三昧に明け暮れて、遠い記憶にある青雲の志士気取りしていたのだから。

喧嘩も〝粛清〟気取り感覚であった。


今書くと噴飯ものだが。敢えて高校生活の一部を書き記す。


こんなこともあった。

いつものように眠っ怠い授業のなか。

生ぬるくなったコーラを飲みながら、ちょと背伸びした週刊誌を眺めていた。

パラパラめぐっていった週刊誌も読み終えると

後はただひたすらに教師の独り言を眺めるだけの時間でしかない。


…さて、どうするか。と教室のクラスメートたちを眺めまわす。

すると、こちら振り向いてニヤリと含み笑いする親友と視線が合った。

親友。こいつも喧嘩屋だ。


「いくか」と握りこぶしに立てた親指を教室ドアに向ける。


いいねぇ、というよりも既に体素早く立ち上がる親友。

私も応じ立ち親友と一緒連れ、教室のドアに向かった。


音も静かに…なんて野暮なことはしない。

堂々と「ドカッ!」と立ち上がっていくのだ。

そして、一応というか教師に「ちょっと出ていくな」と断わりを入れる。


それまで、ぼんやりと授業を進めていた教師は慌てる。


「ま、待ちなさい!君たちどこへ行くッ!」

教師の立場としては当然の台詞か口ついて出る。

だが、そういうのは私たちとっては〝煩い〟としか感じられなかった。

吐き捨てるように「喧嘩だよ」と背中腰に教師へ言い捨てた。

親友もニタリニタリと笑いながら

「そ、こいつと殴り合うの。分かった、おバカさん」


それを聞いた教師は真っ青になって言った。

「や、止めなさい。な、何が原因なんですか」と私たちの中に割って入ってこようとした。

まぁこれも教師として、至極当然の反応であり行動だろう。

にも関わらず、出ていこうとする我々としては

周りをまとわりつく蠅にしか思えない気持ちだった。

「五月蠅い!こんないい天気に何が悲しくってお経に頭を垂れてなきゃいけねぇんだ!」

すんなり通そうとしない教師にカッとなった。

親友も相変わらずニタ笑いで教師の肩を掴み

「いい天気にゃ、ハートをスカッとさせなきゃね」と拳を教師の顔面に繰り出し、ギリギリで止める。「寸止めだ、有難いだろ。どけ!」

拳を目の前に突き出された教師はもはや制止する気力を喪失し。

口だけで「会議だ!職員会議に取り上げてやる!」と虚しくわななく。

その後。校舎の屋上でトコトンまで殴り合い、授業終わりのチャイムが鳴る頃には

お互い何処かしらアザだらけになって

「ああ、スッキリしたのお!」と肩組みつつ教室に戻る。

もちろん、その後「放課後職員室に来い」と教師に言われるには言われた、が

「ふん、そこで暴れていい」ってか?と低い声で言い返したら

顔を真っ赤にした教師から「明日からもう来るな!」と、その場を放免。


次の日からものうのうと登校したのはいうまでもない(苦笑)


時は流れ…

高校も3年生になった。

その頃クラスメートは〝少しでもいい大学や就職にあり掴ん〟と、勉強に一心不乱になっていった。

だか私はその波の主流にはのらなかった。

そんな事をしてる暇があれば、昔から気になっている記憶を辿る為のと『益荒男』を探し求める方が大事なことに思えた。

それを求め、九州は鹿児島まで通っうようになった。

そこでは『示現流』という薩摩独特の剣術に没頭した。

東郷重政先生を師に抱き、私からの申し出の「3年間蜻蛉撃ちだけやりますので、それを教えてく下さい」に、先生は快く教えて下さった。

もちろん最初はあまり相手にしてはくれなかった。

しかし通う度に認めて下さるようになったのか、ついに「樫の木刀で蜻蛉はもたんだろう。柚子の太かの何本も持っていっていい」と沢山の太い柚子の棒を下さった。

私の示現流の稽古はこういうものだった。

最初こそは枯れ木や細木などを相手に撃ち込んでいった。が

やっていくうちに、さるすべりの木や松の木などの。それもしゃくれ立ってるものを選んで撃ち込むようになった。

柚子の棒を頂くまでは幾本ものの木刀が折れた。

柚子の棒を頂いてからの撃ち込みでは木を何本も枯らしてしまった。という事も一応に書き添える。

最後の鹿児島稽古では、撃剣撃ち込む道場の立ち木からい辛い煙がたち匂うまでにはなった。

東郷先生から「段はやれないが、立木稽古だけなら立派だ」とお言葉を頂き、鹿児島を後にする。


もちろん、その間もストリートは欠かさなかった。

後述する極真空手にも入門していて、拳を鍛えたりしてる時期でもあった。

渋谷、六本木、横須賀と喧嘩相手を見つけ出しては『示現流』仕込みの断間ない殴る蹴るで相手を押しつぶす。

ボクシングだろうか、柔道だろうか、米兵だろうか。正直言って大抵は勝てた。

なかには「やるな」と、その後一緒にBARへ行って飲んだりもした。


話は戻る。

学校を卒業して自由の身。

示現流稽古にバイトに、そして喧嘩に。と毎日を過ごしている私にある友人か「空手バカ一代」という漫画を持ってきて「君なら楽しめるのではないか」としきりと勧めるものだから「そんなら」と借りた。

だがそれが運命の大きな舵取りとなった。

人生の分岐点、というのはこういう事をいうのだろう。

「セイヤァ!」の掛声とともに空手着を着た中背中肉の男が、それこそ倍もあろう大男をバシン!と回し蹴りで叩きのめし、地面に這いつくばらせてしまう。

「これが極真空手だ!」蹴った男はビシっと言った。

それを読んで、私の心に「キョクシンカラテ」という言葉が深く刻みこまれてしまった。

ズルズルとなし崩しに深淵へと引きずり込まれてった。


だったら、次の日にさっさと極真空手に入門すればよかろうものを

何と私は…土壇場で踏ん切りつかず、もたもたと決断しあぐねた。

「空手バカ一代」の境地に達するまでは聞くも恐ろしい地獄のしごきに揉まれなくってはならない。

あそこまでやれるようになるまでに〝何度身体が壊れる〟のだろう…ぶん殴られても「押忍、有難うゴザイマシタ」と言わなきゃならない…金玉を蹴られたりもするのだろうか…などと悩みだし、きりない無限地獄へと憂いが落ちる。


それでも恐る恐ると蒸し暑い夏の陽射しの中、池袋駅の裏側を公園縫って『極真空手総本部』に来てみた。

本部が近くになるにつれ、心臓の鼓動が早くなる。

フラッシュたくような、銀色の期待感と沼底に沈むヘドロ色の恐怖が胸へ頭へとぐるぐる駆け巡りはじめる…そんな情けない自分に活を入れる。

「ちッ、くだらねぇええ!」と大声で怯える自らを鼓舞し、本部道場へ足を進める。


本部まで数10メートル、という所まで来た時。

本部の会館玄関から、ドドッと男が二人飛び出し、こっちに走ってくるのが視界に入る。

いつもの常として、反射的に二人の戦闘力を推し量…否。

「勝てない!」と本能が赤い警報を鳴らし始める。

こいつら、米兵なんかより強いッ!と、そう本能的に察した。


恥ずかしい限りだが、出方を変える事にした。

めいいっぱいに「私、敵意ないです。友達ですともだち」と笑いかけながら

「あのう、ちょっとお聞きし…」と尋ねかけたとたん。

駆けてきた二人男のうち一人が「なんだッ、お前は!」と大声で私に威嚇してきた。

…もう一人は、と横目に追うと

そっちの方は何と既に空手の構えに入ってい、臨戦態勢に。


漫画そのまんまじゃないか。

と、思いつつ尚も「いや、見学に」と、こちらの意図を伝える。


「嘘つけェ、さっきの大声はなんだァ!」と

まるっきり、警戒を緩めてくれない。


この騒ぎが道場内に入ったのかどうか

何人か新手がやってくる。中には後に有名になった外人もいた。

取りあえずは、目の前の二人。

この二人を何とかしないと、と思考を巡らせる。

少し冷静さを取り戻せた眼で改めて二人を見る。

二人とも筋肉がすごい。縫い目までもボロボロになったTシャツがはち切れんばかりに太い胸板と両腕。

では…と、彼らの拳をみる。

「!」こちらも凄まじい、の一言に過ぎた。

空手でいう、拳ダコなんていう生易しいものではなかった。

確かに拳ダコはある。だが、その拳ダコが幾重にも重なり潰れている。

黄緑色の膿すらもみえる…

ここまでくると、私もだいぶ落着きをとり戻してきた。

彼ら二人の顔をそれぞれみる。真っ青な顔に唇はカサカサ。

眼には青黒いクマがでている。


…どういう鍛え方をしてきたんだろう。

思わず、ゾッ!とした。


改めて「どうか落ち着いて欲しい」と頼み

向うにも私に〝敵意〟がない、と理解してもらえると


「失礼しました!」と詫びてくれる否や

腹に響く大声で押忍ッ!と、空手の紋切してくれた。

軍隊や警官などが敬礼するのと同じような、空手でならばの敬意を伴なった挨拶である。

後に、親しくやり取りできる仲になった。とはこの時はまだ想像もいかなかった。


以上、この話を実話とするかどうするかは読者諸兄に任せるものとする。


尚、この稿は二十年前に書いたものを上梓したため

未完成とする。

稿をこちらへ書きこんでいて、うわぁ…悪い奴だったんだなぁ

としか、観想が出てこない。

あの頃に鍛えた身体もすっかりの鈍らになってしまいました。

少しは身体を引き締めよう。と思った、夜更けでした。


徒然だらだらと書いたものを最後までお読み下さって

本当にありがとうございます。


フィクション、と変えて読んで下さったなら有難いです(;^ω^)

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