皇太子との出会い
「お嬢様!このドレスはいかがです?」
「髪飾りはこれかしら?」
「靴は歩きやすいのがいいですよね!」
「髪はどうしましょ!?」
「お嬢様は人形より花束を待っていた方がいいわよね!!」
慌ただしく私を飾ってくれる侍女達。
有難いけど私が着飾ってもどうにもならないのに…
「いたっ!」
「どうしたの?」
「ドレスにつけるブローチの針が刺さってしまって…」
「ブローチに血はついた?」
「いいえ。ついてはいないわ。」
「申し訳ございません。お嬢様。少々お待ち下さい。」
申し訳なさそうに手をハンカチで抑える侍女に逆に私の方が申し訳なくなり
「手を見せて。」
驚いた表情で侍女が私を見つめ返した。
「お見せするようなものでは…お嬢様のお目汚しですわ。」
「いいから。」
「分かりました…」
針が刺さったらいたいわよね…私も…靴の中に入ってて足一面に刺さった時は痛かったから…
「癒せ。」
白い光が指さきを包むと
「キズがきえてる…お嬢様の魔術はいつみても素晴らしいですね!」
「さすがです!!!」
「こんなことしか出来ないから…」
(((こんなことができるんです!!しかってなんですかしかって!!!)))
「奥様!できました!」
「まぁ!可愛いわね!!!どうしましょ!?今日行くのはやめましょう!変な虫がついたら困るわ!」
「大丈夫ですよ母様!俺が着いていますから!」
「兄さんじゃダメです。僕が着いています。」
お母様もお兄様方も心配しすぎだ。私は隅で順番がきたら契約して終わるだけ。契約してくれる精霊さんがいたらいいのだけど…
ガチャ
「お父様…」
「あぁアメリア、今日は普段以上に可愛いな。今日はお父様と遊ぼうな。宮殿になんて行かなくていい。な?」
「ダメです。今日は国のしきたりで、3歳になった貴族は宮殿、平民は教会で精霊と契約をする日ですよ。」
私の家族はあまり私を人前に出したがらない。それもそうだろう。ヒューズリス公爵家の恥である私など出したらどんな噂をされるかも分からない…
((((可愛い…ウチのアメリア本当に可愛い。外に出したくない…))))
「旦那様、奥様、おぼっちゃま方、お嬢様、そろそろお時間でございます。」
「そうだな…、では行ってくる。」
「「「「行ってらっしゃいませ。」」」」
馬車に揺られながら外を眺める。
「公爵家の馬車だ!!」
「お嬢様が3歳の精霊の儀式をされに行かれるんだ!」
「行ってらっしゃいませー!」
ヒューズリス公爵家の領民は馬車が見えたら邪魔にならないように道の脇で手を振ってくれる。
「アメリア、少し窓から顔を出して手を振ってみなさい?」
「はい。お母様。」
「キャーーーーーーー!!!!!!アメリア様よ!!!」
「あぁ…私もう死んでもいいわ…」
「こいつはやべーな…」
ばたっばたっばたっ
ばたばたばたばた…
(そんなにみんなが倒れるほど醜いのかしら…やはりウチの家族が言っていることはお世辞ね。)
((((やっぱりうちのアメリア可愛い))))
「さぁここが宮殿よ。まだ少し時間があるから自由に散策してもいいわよ。」
「しかし、母様、迷ってしまう可能性はないのですか?」
「あら大丈夫よ。あなた達の時もそうだったけど今日のためにロイヤルガードがいたる所に配置されているから。」
「そうなのですね。ではアメリアいこう……!?」
「カルロス様。おひさしぶりです。」
「ソフィア様!そのドレス素敵ですわ!」
「キャー!アレックス様とルーカス様よ!!!」
「ぜひとも挨拶しなくっちゃ!!」
「あ、アメリア!!!」
「僕はアメリアをエスコートしなくて…」
私の家族は美男美女しかいませんもの…
私の様な醜いものがいては場の雰囲気が悪くなりますわ…
「わたくしは散策して参りますわ。」
(ヤバすぎる。なんだこの可愛い生物は!!!)
(可愛い!!!!)
(天使だ…)
(本当に3歳なのか!?)
配置されているロイヤルガードが思わず固まってしまうほどの天使は誰も声をかけてくれないので、見事に迷子になった。
「ここはどこ…」
迷ったアメリアがたどり着いたのは知らない場所。
でもどこからか苦しそうな声がする…
この部屋からだ…
「失礼してもよろしいですか?」
「だ…ックれだ!!!!!!」
「精霊の儀式を受けにまいりましたの…」
「……」
「あの…大丈夫ですか…?少し失礼しますね。」
中は真っ暗でベットとたくさんの本。
そのベットから苦しそうな息が聞こえてきた。
「…ックルナ!!」
「もう来てしまいました。申し訳ございません…お詫びにこの花束あげます…」
「ハァハァハァハァ…」
「あ、あの大丈夫ですか…?」
これは…本で読んだことがある。呪いか…初めてみた…顔が焼けただれている…呼吸も荒い…内蔵もやられているのだろう…
「俺に近づくな!!!!ゴホッゴホッ…」
「分かりました。二度と近づきません。しかし一つだけ試したいことがあるのです。」
「…ヒューヒューヒュー…ゴホッゴホッ」
「沈黙は肯定と受け取りました。では、」
本能が告げている。
私なら解呪出来るかもしれない…と
(このモノも救うのか?…やはり優しいな…)
(いいじゃない。乙女ゲームのあらすじも変わることだし。)
(僕の記憶違いじゃなければ例の男爵家の令嬢が光精霊と契約して5歳頃父親について行ってたまたま迷い込んで解呪するんだよね?)
(ああ、そうだ。)
(絶対私たちの愛し子が救った方がいいわよ!彼、将来有望な顔してるわ!)
(乙女ゲームのストーリーだと彼は武術も知力も優れているそうだよ。まぁ武術は解呪してから鍛えるんだろうけど。)
(まぁアメリアには生まれた時からずっと彼がついているから解呪は確実に成功するだろう。)
(そのままあなたの魅力で皇太子なんか落としちゃえ!!)
(確実に落ちるでしょ)
「解呪。」
その時光が溢れた。
俺は生まれてから顔も内蔵も焼けただれているようになっていて、目もあまり良く見えなかった。文字を読もうにもこの顔を気持ち悪がって誰も教えてくれない。母様は俺を産むと同時に無くなってしまったらしい。父様はそんな俺を見捨てず、ずっと宮殿の奥で育ててくれた。本を持ってきて読み聞かせてくれたのも父様。おかけでなんとか、3歳………ここまで…生きてこれた。
今まで呪いが移るからと父様以外誰も訪ねて来なかった扉の向こうから声が聞こえた。
その子は不思議な子だった。
近づくなと言っても近づいてくる。しかも
この国の誰もが解呪に失敗した俺の呪いを解いたのだ。
目が光に包まれながら開いたその先は…
何も見えなかった。それももうだ、俺の目に悪いかもしれないと父様が真っ暗にしているからだ。
「…」
「成功…しましたか?」
「あぁ…」
水分がなくて上手く話せない…
「よかった…それでは失礼したしました。お約束は守りますので…」
「…!?」
お礼も言っていない…
今にも出そうな彼女を引き止めたくても出来なかった…
扉を先から光が漏れ俺にむかって礼をした彼女は…
美しかった。天使と見間違えたかと思った…
顔が熱くなるのを感じた。どこの誰か分からない。しかし俺は…
目が見えるようになって初めに見た白銀の髪ををなびかせどんな宝石にも負けない美しい色彩を持つ紫た青が混ざったような瞳を持つ彼女にただ目を奪われてしまった。
彼女が出ていったあと俺はサイドテーブルに置かれた彼女が持ってきたブルースターの花束をみつけた。
彼女の瞳のような色だった。
(((一瞬でおちた)))
「アメリア!探していたぞ!」
「ごめんなさい…」
「いいのよ。私たちもごめんなさいね。」
「ごめんアメリア。捕まって追いかけられなかった。」
「ごめん…僕がいながら…」
「さぁそろそろ時間だ。行くぞ。」
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