ケニーの工房にて武具発注
ボスキャラのいた部屋には地上に帰るポータルと宝箱があった。
エリーは宝箱を見ながら中身に期待を込める。
「ロングソードが欲しいな。出来れば綺麗な宝剣とか」
エリーはどこまでも自分中心の考え方だ。黒猫は一緒にいるニート少年達にに同情してしまう。
エリーがワクワクしながら宝箱を開けると女性用の赤いベストと赤い槍が入っていた。
エリーは落胆して「両方ともウィル君にあげるわ」と言った。
確かに槍もベストも火属性を帯びているからウィルには相性が良い。ただベストは胸の部分がカップになっていて男性が着たら胸に隙間が出来ておかしい。いや、胸の小さいエリーが着てもスカスカだから欲しくないんだと少年達は覚った。
「ほら、ウィルこっちに来て!私が着させてあげる」
「女性用なんてヤダよ。僕、男だし。小さくて着られないよ」
「つべこべ言わず、きなさい」
エリーがウィルに強引にベストを着させた。
「まあ、似合ってるわ」
((ウソだ!))
「キツイよ。これ」
「痩せなさい」
元々痩せているウィルに無茶を言う。
「テル君とダン君の武器を新調しなくちゃね。ケニーが武器屋を作ったから相談してみるわ。ウィル君はすっごく良いアイテムが揃ったから良かったネ。ネッ。良かったよね」
強引なエリーに何も言えないウィル。かわいそうに。
ポータルを使って地上に戻った後、エリーはケニーの商会に寄った。
「ケニー。ショートソードとロングボウの失敗作とかない?」
「おいおい。職人さんに失礼だから、工房では絶対言っちゃダメだよ。確かに試作品があるからエリーには譲るけど。決して失敗作じゃないんだからね」
「わかったわ。私のパーティーの子に大切に使うよう言うから。それと軽くて素早く動けるブーツとか有れば助かる」
「うーん。サイズを合わせて作ると良いと思う。無料って訳にはいかないけど、材質となる軽くて丈夫な革が必要だと思うよ。魔物退治の時に上手くドロップすれば良いけど。いくら領主の家族でも森には入れないんでしょ」
「うん。父上の命令は絶対よ。気長にドロップを待つか、材料を買うわ」
「魔石を溶かす方法があれば、ブーツとか防具にも風魔法を付与出来るんだけどネ」
『出来るゾ。魔石を溶かすなど我なら簡単に出来る』
「今、黒猫くん、出来るって言った?」
「うん。どこまでも生意気ね。猫の姿のくせに」
『エリー。魔石をだせ』
エリーから投げられた魔石を飴玉のように舐めてからポイっと口から出す。猫の唾液で魔石が液状化しだした。
「飴玉並の金額だけど、飴玉じゃないんだからね」
「いや違うよエリー。これは大発見だよ。黒猫君。魔石代は充分に支払うから、大量に溶かしてもらえないか。そうすれば、君のパーティーに魔法が付与された防具を提供出来る」
質の高い魔石ほど魔法効果が上がる。職人は下層のダンジョンで獲れる珍しい鉱石が欲しいらしい。
当分先の話だがケニーは採掘依頼や魔石収集依頼としてギルドに依頼をするらしい。
エリーにとっては、ダンジョン下層に入れるようなレベル上げが必要。ケニーの依頼に合わせて下層に挑戦する準備を着々と進めなければならない。
それと他の冒険者たちやこれから冒険者になる人の事も考えなければならない。
資金が出来たギルドでケニー工房に武器を注文してはどうかと考えた。ケニーが冒険者のためにわざわざ開いてくれた工房だ。大切にしたい。
冒険者は資金不足で食べていくのがやっとの状態。新しい武器を買える者は少ないし、初心者なら尚更武器の用意が出来ない。
エリーはギルドマスターと相談してケニー工房から武器を購入。新人や武器を喪失して困っている冒険者に武器の貸出を始めようと思っていた。
冒険者が活動出来るようにしてあげるのもギルドの役目であり、エリーの望みだ。
「コレで冒険者が増えるわね。きっと。よしよし」
安易なエリーだったw