ダンジョン攻略 三層 ボス討伐
薬草が育つまで、ダンジョン攻略を目指す。
パーティーはエリーとチビデブガリの3人と黒猫。
前衛は背が小さく軽量のタンが盾役をしながら俊敏さを活かして闘う。中距離から痩せのウィルがヒョロっと加わり、デブのテルが弓でフォローって感じだ。
それぞれの戦闘形態はタンが土魔法で土の壁を作る。単独で斬り込む時は階段の壁を作って壁を駆け上り、上から攻撃。
タンの装備はダガー。将来的にはショートソードが欲しい。
土魔法で剣の硬度を上げ、鋭く硬い刃で攻撃する。
ウィルは火属性の魔法剣士を自称している。火の玉を作り敵に放つ。それと火の壁を作ることが出来る。痩せている見た目通り気弱で怖がりなので接近戦は得意ではない。筋力が少なくレイピアなどの細剣を装備。レイピアに火を纏わせて攻撃するので火力は一番期待出来る。将来的には槍などの長物の武器が欲しいところだ。
テルは風魔法の弓使い。手先が器用で弓矢を自作している。
太っているが、体格に恵まれ力持ちでもある。武器はショートボウを使っている。
今は弓矢に風魔法を纏わせ初速度を上げて弓の攻撃力を補っている。ロングボウと風魔法を合わせれば、痛烈な攻撃が可能だ。
自称オールラウンダーのエリーは指揮を執りながら魔物に留めをさす。美味しいところを持っていく。エリーは領主の娘でもあり当然だと思っているらしい。剣に水を纏わせたり、水の皮膜で身体を覆ったり出来る。半径10m程であれば水を飛ばせる。
武器はロングソードを両手で持つ。幼い頃から兄と剣の稽古を受けていたらしい。
黒猫は攻撃手段をもっていない。最近、治癒魔法が使える事がわかったばかりだ。多分、それ以外にも魔法が使える筈だが記憶が途切れている。
なぜ猫の姿をしているのか記憶がないのだが、失われた記憶を取り戻すためにエリーと行動を共にしている。
そんな訳でエリーを含む4人と一匹でパーティーを組み、魔物を倒して経験値や魔石を稼いでレベルとお金を貯める。
エリーがレベル5になった時は大喜びだった。
「レベルファイブって何故か良い響き。これで電撃使えたら無敵な少女になれるかも!」ってよくわからない事を言っていた。エリーにも記憶障害があるらしい。
ダンジョン探索は続く。
このダンジョンは三層までは初心者でも踏破出来ると言われているのだが、三層毎にボスキャラが存在する。
「三層のボスはキマイラだ。知っておるか?」
黒猫がボス攻略のアドバイスをエリーに授ける。
「ギルドの資料で読んだ事はあるけど、戦った事はないわ」
「頭はライオン、胴体が山羊、尻尾が蛇という魔物が合体したようなボス魔物だ」
「怖そうだけど強そうじゃないね。僕達でも勝てそうだよ」
三層を楽々攻略出来るようになって自信がついたのか気弱なウィルがコトもなげにいう。
「そうでもないぞ。頭部のライオンは噛み付き人間を食べる。尻尾の蛇の毒は猛毒だ」
三層ボスのキマイラは強敵だ。本格的なダンジョンとなる四層へ行く冒険者の試金石となる本格派の魔物だ。
当然、命をかけて闘うことになる。
「弱点はあるのよね」
「当然だ。山羊のツノを折れば弱体化する」
「弱点はツノよ。タン君は正面のライオンを担当ね。ツノをサクって折っちゃって。小さいからパクッて食べられないよう気を付けてね」
エリーは事もなげに言うがタンは顔色が青い。
「尻尾の蛇はウィルが担当ね。毒蛇だから気をつけてね。解毒剤持ってれば大丈夫よ。毒で死んじゃう前に解毒してね」
今度はウィルが青くなる番だ。
「テルはツノに弓を命中させるのよ。失敗したらタンがたべられちゃうからね」
「エリーはどうするんだ?」
「私は胴体の山羊の部分を攻撃するわ」
「なんかズルい」
「エリー。やはり貴様、悪魔のようなひどい娘だ。とても生娘の所業とは思えぬ」
「まあ、とにかくその登竜門に挑戦しなきゃ四層に行けないでしょ。初めは攻撃する必要はないわ。敵の動きを読む事に専念して。その間に私が攻撃するから。あなた達は囮になってネ」
エリーの言うことは最もだがどこか引っかかる。少年3人も渋々納得したようだ。
じゃあ行くよ。
作戦通り3方向に別れて攻撃する。
エリーの攻撃は順調にダメージを与えている。ウィルはファイアボールを使い地味に戦っている。ただし、蛇の動きが素早く近づけない。近づけば噛まれるのは必至だ。
ウィルが苦戦中ではあるが奮闘しているダン。
初めはライオンの噛み付き攻撃を横っ飛びで避けていたが、動きを見極め身体半身で躱せる様になったダンはツノに剣を当て始めた。
ダンの汗が迸る。ダンが肩で息を始めた。かなり疲労が見え始めた。
「ヒュンッ」
テルの弓矢がツノにクリーンヒットした。ツノが折れて崩れ落ちるキマイラ。
「やったか!」
「それ禁句!フラグ立つから」
エリーが自分でもわからない言葉を口にする。
倒れた筈のキマイラが炎を全身に纏い復活した。
「キマイラは三体分。3回倒さないと討伐にならないぞ!」
「それを先に言ってよ。もう。使えね〜」
エリーの言葉が変な言葉使いになっていく。
キマイラは右から左へと炎を吐き続ける。
精魂尽きたのか、スタミナ不足かタンがキマイラが吐く炎を避けきれず大火傷を覆った。
炎の攻撃を受けているタンを治癒魔法で助けようと夢中で炎の中に突っ込む。
すると猫の首輪が七色に光って結界を作り、炎を弾き飛ばしている。
そういえば、猫の姿になってから傷ひとつ負わないのはこの結界があったからだと初めて認識した。
タンの治癒をしている間もキマイラは胴体に火を纏い頭部から火を吐いている。
ただ、エリーは水属性の持ち主。炎との相性が抜群に良い。あっと言う間にキマイラの体力を削り、ラストラウンドに持ち込む。
キマイラはラストの変体で土属性の魔法により表面を硬くした。どうやら守りに入ったようだ。水も火も通じない。
「黒猫くん。ありがとう。もう大丈夫だ」
タンは立ち上がり、土魔法で武器の硬度を最大限に上げた。
土の土台を作ってジャンプ!残っているもう片方のツノを狙って渾身の一撃を振う。
ついにはもう一本のツノも折れ、蛇の尾もウィルが切断した。
討伐され地面に溶けて行くキマイラ。大き目の魔石と虹色の宝石が残った。
「黒ちゃんこの宝石って何?」
『それは精霊の欠片。我が火の魔法を結界で防いだのを見たであろう。10個集めると精霊の原石になる。さらに原石を5つ集めて精霊の塊、塊3つで精霊の証の材料になる』
「随分、気の長い話ね。ポイって捨てちゃうかなぁ」
『馬鹿者、精霊の証さえあれば魔族など恐るるに足らぬという貴重なものだ』