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冒険者ギルドを育てよう〜S少女とお人好しニート少年〜  作者: みーちゃん
第一章 領主の娘とニート少年
3/9

ダンジョン攻略 1〜2層


この世界には魔法と言うものがある。ただし一撃でモンスターを倒す様な魔法は存在しない。

武器である剣などに火の属性を付加するとか、ファイアボールの様な牽制に使う補助魔法が殆どだ。


属性は『火・水・風・土・雷』。それと人間世界にない「光と闇」魔法がある。


領主の娘エリーが「水属性」、タンが「土属性」、テルが「風属性」ウィルが「火属性」と綺麗に別れたバランスの良いパーティーと言える。


ただ、バランスは良いのは属性が綺麗に分かれているだけ。戦闘配置はアンバランス。

前衛がチビで軽量級のタンが盾役?太った体格の良いテルが弓で遠距離攻撃?気弱で攻撃には向かないウィルが火属性?


「アナタ達全然ダメじゃない!はー、もう。いいや、私が連携考えてあげるから言う通りにするのよ」

「へーい。好きにして。生きて帰れますように」


「じゃあ、行くよ!突入!」


ダンジョンは一層、二層と地下深く伸びていて地下に潜るほど敵が強くなって行く。一層二層は昆虫型の魔物が中心で所謂雑魚モンスターだ。


少年たちはレベル3。偉そうに先輩面しているエリーもレベル4。雑魚モンスターと言っても少年たちにとって苦戦は必至だ。


「いい?私が1匹づつおびき寄せるから、テルが弓で牽制。両サイドからタンとウィルが攻撃するのよ。囲まれそうになったら一斉に逃げるの。初めは1匹づつ」



遠くに蟻型の魔物を発見。足元に水を飛ばすと1匹の蟻型モンスターが近づいて来る。テルが弓を射ると立ち止まり尻尾を上空に上げ、酸の攻撃をして来た。

この酸の攻撃を浴びれば、初心者冒険者は一発で戦闘不能になる。テルは回避に専念している。


『触覚がヤツの弱点だ』

黒猫がエリーにアドバイスを飛ばす。


「今よ!触覚を剣で切って」


蟻が尻尾を上げたため頭部は下がり、地面にくっ付く。それを見計らいダンとウィルが左右の触覚に攻撃。瀕死の蟻型モンスターの腹の柔らかい部位にエリーが剣を打ち刺し魔物は絶命した。



蟻型モンスターは溶ける様に地面に吸い込まれ、小さな魔石だけが地面に残った。エリーは魔石を拾い上げ次のターゲットを探す。


ホッとする少年たちだが、すぐに次の戦闘態勢に移行。ウンザリという表情だ。


順調に数匹狩った後、やっと少年たちに休憩がもたらされた。


見るとエリーが手に擦り傷を負っている。その傷を見ていた黒猫は血が滲んできたのを自然と舐めた。

「あっ、傷が消えた」


黒猫自身も自分の能力に初めて気付いたらしい。

「光属性」である治癒魔法が使える事に驚き、自分は神の使いなのかと誤解をした。



ウィルが黒猫を見ながらエリーに尋ねる。

「エリー。気になってたんだけど、その黒猫ってなに?ダンジョンまでついてくる猫って珍しいよね」

「最近、仲良しになったんだよ。治癒魔法が使える猫みたい。貴方達怪我はない?」


タンの脚が蟻の酸にやられ、火傷のように赤く腫れている。

試しに治癒魔法が本当に使えるか試すことにする。何となく舐めるのはためらい、猫の手でトントンと患部を触ってみた。すると綺麗に赤い腫れが引いていく。



「よーし 。あなたたち!多少怪我をしても黒ちゃんが直してくれる。今度は一人で一体を相手するのよ」

「えーやだよ。怖いし」

「怪我をする事自体がよくないだろう」

「治癒があっても痛い思いするのをするんじゃないの?」


少年達の言い分が正しい。ただ、骨折が治るか試したいが、骨折するような怪我は相当痛いだろう。



「私に斬られたい人は誰かなぁ?じゃあ、まずはダン君。アナタが一人で戦って来て。私達応援してるから」

苦い顔をするタン。エリーにはなぜか逆らえない様子だ。

「まあいいけど。いざという時は助けてくれよなぁ。俺がやられてるのを見てるだけってやめてくれよな」


タンVS魔物戦、開始。


タンは土属性を持つ剣士。チビだけど。

魔物に近づいたタンは目の前に土魔法で壁を作る。さらに土を盛り上げ壁に登りジャンプ。魔物の頭に飛び乗り触覚を攻撃。一瞬で魔物を倒してしまった。



「やるわね。小さいくせに。じゃあ、みんなで魔物の群れに突っ込むよ」


魔物の群れに向かってウィルがファイアウォールを放つ。パーティーと魔物の間に炎の壁ができ、多くの魔物が焼かれて行く。壁の側面を遠回りした魔物を1匹づつやっつけていき一気に魔物を殲滅した。


「やったね。僕達の完全勝利!」



ギルドに戻った少年たちは大いに盛り上がっている。

「弓でビシュって触覚を折った時は気持ち良かったぁぁ」

「僕の魔法で次々と魔物が倒れていった。爽快だったなぁ」



それを横目で追うエリーは満足感とともに嫉妬の様なモノを感じていた。

「男の子っていいなぁ。単純でバカで楽しそうで。でも私には解決しなきゃならない課題が色々あるんだよねぇ」



冒険者ギルドは領主が担っている。領主の娘であるエリーはギルド役員としてその運営に大きく関係している。さらにギルドマスターはエリーの叔父だ。エリーはギルドを発展させなければならない立場だ。


今回、ダンジョンで得た魔石は全部で40個。結構集めたのだがこれでも4000Gにしかならない。魔石一個100G。飴玉並の金額と言われている。これはギルドの責任ではないが冒険者になる者が少ない大きな要因となっている。


龍を倒して1億Gなんて夢のまた夢。殆どの冒険者が挫折してしまう原因が魔石の低料金だった。

そもそも、1億Gなんて大金がギルドにあるわけない。

どこのギルドもお金の事は領主や国に相談する。そのためのギルドマスターだ。


冒険者の教育係をしているエリーにとっても冒険者が集まらない事は大変頭の痛い話だ。さらにギルドへの依頼数激減もそれに歯車をかけている。ギルド運営は前途多難である。


とりあえず問題は先送りにして足取り重く3人の少年たちのもとへ。


少年たちはまたカードゲームに夢中だ。

「魔石を換金して来たけど……ひとり1000G」

「おーそんなに、サンキューそこ置いといて」

「へっ?そんなにって食事代にしかならないのに?」

「拾い集めてくれて換金までしてくれたんだろ。お礼を言うのは当然だよ。俺達沢山やっつけたからそれでいいや。次は3層まで制覇しようぜ」


カードゲームに興じる少年たちにとっては、報酬は二の次らしい。


狐につまられた様子の少女は軽く微笑しながらダンジョン三層の様子を思い浮かべる。再戦に胸を膨らませながらギルドの二階ギルドマスターの元へと向かった。




「叔父様、無事に戻りました」

「おー愛しのエリー。怪我などない様だな」


エリーはギルドマスターでもある叔父に挨拶をしてから早速仕事の話を始めた。

エリーの叔父は国への報告と事務処理がメインの業務。

対するエリーはダンジョンや森の魔物の調査、魔物に対する冒険者への伝達育成、さらに各所クライアント依頼の営業業務もある。


エリーの住むヴィンランド領は平和そのもの。町にも村にも魔物は出ない。魔物が住む森は立ち入り禁止。冒険者が入る場合もギルドの許可が必要だ。


「薬師のエレナ婆さんがエリーが来るのを楽しみにしている。行ってやってくれ。あと、ベント商会にも顔を出してあげてくれ」


魔物討伐依頼が少ないこのギルドの主な任務は薬草採取と商人護衛だ。後は細かいお使いクエストくらいなもので冒険者なら稼ぎの良い首都や魔物狩放題の隣領に行ってしまう。


領主としては平和で領民が安穏と暮らせる事が第一なので現状維持に満足している。ギルドに従事しているエリーと叔父も平和が一番だと思いながら矛盾を感じている。


「じゃあ、エレナ婆さんのとこ行に行って来ます」

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