1話・久遠京也の失態による恋の始まり
治らない病ならとっとと殺してくれ――。
そう、聖白蘭総合病院の個室で俺は思っていた。
高校二年生の俺、久遠京也は部活サッカーではキャプテンで10番であり、ユースサッカー代表では10番だ。つまり、未来の日本代表のエースという事。
その将来有望な俺は「急性骨髄性白血病」にかかっているようだ。
医者が言うには白血病は血液のガンだ。血液細胞には赤血球、血小板、白血球があって血液細胞が骨髄で作られている時にガンになってしまうらしい。
そのガン細胞である白血病細胞は骨髄内で増殖し、骨髄を埋め尽くしてしまう。
だから正常な血液細胞が減ってしまうので、貧血や免疫系が低下してしまう。それに血液を貯める肝臓の肥大などもあるようだ。
白血病自体は遺伝しないのがわかっているようだが、白血病自体の解決策は抗ガン剤治療などをするようだ。
そんな事はまだ知らず、体調不良ぐらいに思っていた俺は、桜がまだ咲いているのが見える蹴栄学園のグラウンドでサッカーの練習をしていた。四月で二年になり、これからプロになる上でも重要な年になる。
今日もファンの女の子がゴール裏の土手付近で応援してるが、俺は練習に集中している。女に構ってる場合じゃない。六月にはユース日本代表の発表がある。プロへ進み大活躍するには、遊ぶよりも練習するしかないんだ。
俺の身長は180センチ。体重は70キロ。
サッカーのポジションはFW・MF。
点を決める、ゴールに繋がるパスを出す役目だ。
髪型は黒髪で長くもなく短くも無い前髪を下ろしたスタイル。
試合中は自然と分けたスタイルになる。
だが、この日の俺は人生を左右する大きなミスを犯してしまう。
フリーキックの練習でミスキックをしてしまい、野球なら大暴投やホームランレベルのミスをした。
春になると桜が満開になる桜道と言われるサッカーゴールの後方にある場所までボールが飛び、そこを歩いていた女生徒に目掛けてボールが飛んで行く――という失態を犯した。
しかし、そのセーラー服を着たサイドポニーの女子は平然とそのボールを蹴り返し、俺がそのボールの直撃を顔面に受けて病院送りにされてしまった……。
このクラッシャー事件が俺を変えた女との出会いだった。
人間は些細なキッカケで変わる。
良くも悪くも。
そして、俺の常識は他人の常識ではないというのを、これからの人生で大いに思い知らされる事になった。
俺を病院送りにしたクラッシャー女・雪村美波によって――。