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コーヒータイム

作者: 963special

「人生ってヤツはカーレースみたいなものらしい」


くたびれた男は

そう言いながらコーヒーカップに

優しく角砂糖を入れた


そしてゆっくりゆっくり

スプーンで混ぜながら話を続ける




「1番じゃなくても

周りが認めてくれる程度の成績でゴールしたい


途中でコースアウトしても

すぐ戻ればいい


全力で走って完走すれば

結果はついてくる


そして

レース後のパーティーには参加できる


そんなところだ」






コーヒーを一口飲むと

男はさらにひとつ角砂糖をコーヒーカップに入れて

ゆっくりかき混ぜる






「でも俺の考えは違って

人生ってヤツはあてのない一人旅に似てる


トラブルのたびに頭かかえる


下手すりゃ死ぬこともある


そしてどこに行っても

結局またどこかを目指して旅をする」




そばで聞いていた

眉間にシワを寄せたネクタイの男が

不愉快な空気を感じさせるが

くたびれた男は続ける




「競い合う人生が楽しいなら

それが幸せで


旅みたいな人生が楽しいなら

それも幸せ


簡単なんだよ

表彰台を目指して走るのも

目的もなくただ走るのも

走るという行為は同じ


それなら自分が楽しめるほうを選ぶべきなんだ」




そう言ってくたびれた男は

コーヒーを飲み干すと金を置いて席をたつ




「どうしようもないクズだな」




どこからかそんな悲しい言葉が投げかけられると

男はニヤリと笑う




「俺は疲れたけどまだ続けるつもりさ

楽しまなきゃな


でも完走狙いの走りは誰が見てもつまらないし

自分自身だってつまらない

せめて周りが応援出来る程度には走りなよ」





ヨロヨロとした足取りで

男は店を出た




コーヒーの香りに包まれた店内には

苦々しい顔のヤツらがいる



きっとコーヒーが苦すぎたんだろう


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