25.化け物
「ハァ!!!!」セルスは監視の男の頭を回し蹴りする。
「ガハァ!!!!」監視の男は気を失う。
「まったく…手こずらせてくれる…」
セルスはうんざりしながら言う。
「さて…私は、この術の壁をどうにかしなくてはな」
セルスは腰に手を当てながら言う。
「いるか、ナルミ」
セルスがその名を呼ぶと「何かようか?」姿は見えないが何処からか少女の声が聞こえた。
「言わなくてもわかるだろ…」
クルスはニヤリと笑う。
「まぁな…」そしてその声もちょっと笑っているように聞こえた。
「では行くとするか」
セルスがそう言うと廊下を突っ走ってった。
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「…………」
体育館に静けさだけが残る。
体育館の中にいるのは、蒼、茜、シル、フルエル、黒ローブの男と女だ。
「フルエル!!氷化は後どれくらい持つ?」
シルはフルエルに訪ねる。
「恐らく残り1分が限界です…」
と、フルエルは答える。
「1分……」蒼はそう呟く。
先程の動きを見る限りあの黒ローブの女の子は相当の手練れだ…だが、俺と茜、そしてシルとフルエル、この四人で戦えば勝てない相手じゃない…大丈夫だ…落ち着け…
「あぁ…朝倉…蒼いぃ…」
黒ローブの男はゆっくりとゆらゆらと立ち上がる。
「ッ…!!」シルは後ろに下がり、蒼、茜、皆身構える。
「ここからはアドリブかよ…」
アドリブ…一番頼りたくない手段だけど仕方ない…やるしかないんだ。
「朝倉朝…朝倉蒼…お前を…殺す!!」
男はそう叫んだ後ポケットから何か薬のような物を出し、それを一つ飲み込んだ。
「グッ!!グアァァァァァァア!!!!!!」男はとてつもない絶叫と共に自分の心臓を抑え、苦しみだした。
「何だ……あれ」
蒼のひたいから汗がポタリと一滴流れた。
蒼達の目の前に居たのは先程の男とは別人だった。
そこにいたのはまさに、恐怖、だった。
男の姿はもはやなく、身体中に目や足、口などが付いている化け物だった。
「おいおいおいおい!!嘘だろ!?冗談やめてくれよ!!!!こんなの聞いてないぞ!!」
蒼の動揺は頂点にまで上がって行った。
「ああああ朝倉朝倉朝倉ららららぁ…蒼いぃぃぃぃい!!!!」
化け物は不気味な声で蒼の名を連呼する。
「蒼…どうやら冗談ではない見たいだぞ…?」シルは顔をひきつらせながら言う「そみたいだな…」蒼も同様。
「ッ!!」怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!
何だよこれ!!ただの化け物だろう!!てかこんなのいていいの!?
蒼が怯えているとフルエルの方に異変が「…」フルエルがじっと蒼の方を見ていると、いつのまにか氷砂化は解け「んな!?」黒ローブの少女の姿は消えていた。
「どういう…?いや、今はシルの身の安全を確認するべきですね…」そしてフルエルはシルの元へ。
クッソー!!戦いたくねぇ!!いやまぁ…
「やるしかないんだけどね…はは」
「マスター!!行くよー!!」
「あぁ!!」
蒼と茜は化け物に突っ込んで行った。
「おい蒼!何の策もなしに行くのか!?」
シルは蒼に言う。
「考えてる時間何てないよー!!」
蒼はそう言いながら突っ込む。
蒼と茜は化け物の横に突っ込む。
蒼は右に、茜は左に。
「茜ー!俺がこいつ転ばすから術を打てー!!」
「マスターそれ可能!?」
「やってみなきゃわかんないさっ!!」
蒼は化け物の足を思いっきり回し蹴り。
「ッ!!!!痛ッたぁぁぁあ!?」無理でした。
蒼は右足を押さえながら一旦シルの方へと戻る。
「何だあいつ硬すぎるだろ!!!!」
蒼は涙目になる。
「うわぁ…マスターの右足だけすんごい腫れ方してるよ…」
茜は顔をひきつらせて言う。
「はぁ…蒼…お前は頭が言いようで馬鹿だな…」
シルは頭を抑え、溜め息をつきながら言う。
「俺のハートのダメージ計算しながら貶してよ!?」
蒼がそんな事を言っていると「あ…あ…《わ、わ、わ、わ、わ、我、罪人は、は、は、は、天を裁く、闇となれ、れ、れ、れ、れ》」化け物は何かを言っていたがうまく聞き取れない。
ただ蒼にはわかってしまった。
これは、術だと。
その瞬間、蒼の体はとてつもない恐怖に襲われた。
「クッ!!!!」これは…不味い!!!!
「皆伏せろー!!!!」
蒼がそう叫んだ後四人とも体を伏せる。
そして、それは一瞬だった。
「ッ…!!!?」蒼は後ろを振り返りその光景が目に入ってきた。
その光景は、さっきまで蒼達の後ろにある物が全て、木っ端微塵に粉砕されていた。
「クッ!!こんなのに…どうやって…勝てってんだよ…」
この日蒼は身をもって知った。
これが本物の化け物だと言うことを。