23.紀の決意
「クッ!!あいつ!!」俺が体育館に足を踏み込もうとした瞬間「蒼!!」俺の肩にシルが手を置いて止める。
「何するんだ!?俺はあいつを!!」蒼は眉にしわを寄せ、歯を食い縛りながら怒り気味に言う。
「落ち着け!!状況を良く見ろ!!!!」
と、シルは蒼の顔を体育館に向ける。
「ッ……!!」蒼は体育館の方を見つめる。
「はぁ…ふぅ…はぁ…」俺は深呼吸をする。
「すまん…ありがとう、落ち着いた」
俺は謝った後落ち着かせて貰ったお礼を言う。
「ふぅ…」危ねぇ…
危うく馬鹿みたいな行動するとこだった。
とりあえず、状況を良く見ろ。
まず、人質は…俺のクラスメイト達全員か…そして積木…後あの黒ローブを被った男、俺の名前を呼んでいた。
てことはこの状況に俺が出れば積木は解放されるはずだ…出るか?いや、ここは状況が変わるのを待つか……?
「クッ!!」どうする!?
何か作戦は…俺と茜でこの状況を打開出来る策を…いや、今は心強い奴等がいる。
「ッ……」俺は振り返る。
シル=バレット、フルエル=スノエッダ
この二人がいるじゃないか…
これなら作戦の立て用はある。
この作戦なら…この四人で出来るか…?いや、四人じゃまだ足りない…自分の存在を大きく見せる事の出来る存在…「ッ……!」蒼はニヤリと笑う。
「いるじゃないか…最高の存在が…」
蒼は何かを閃いたような顔をしながらそう呟いた。
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「まだか!?早く朝倉蒼を連れてこい!!じゃなきゃこいつの命は…」男は銃の引き金を下ろす。
「ヒッ!!」怯える積木、こんな状況を見ていた美姫は我慢できず「つみっちゃん!!!!」声をあげ、男の方へと走る。
だが「イグル」男が竜人の名を呼ぶ。
すると美姫の前に突然と黒いローブを着た少女が現れ「なっ!!」美姫のお腹に重い一撃が放たれる。
黒いローブを着ている少女は美姫の耳元でこう呟いた「ごめんね…」少女の謎の謝罪「なん…で…」美姫が何故謝罪をしたのか、その理由を聞く前に気を失ってしまった。
「美姫!!」積木が動こうとした、けれど「おい、動くな、動いたら殺す」「ッ!!」黒ローブの男に銃を頭に向けられ逆らえない。
「朝倉蒼の居場所なら知っているぞ!!」突然立ち上がり声をあげたのは「風子ちゃん!?」風子だった。
「何?貴様今、朝倉蒼の居場所を知っていると言ったな?」
「あぁ知っている…」
「今すぐ吐いて貰おうか…?」
「いいだろう、だが、積木殿を離してからだ…!!」
風子は眉にしわを寄せて言う。
「そんな交換条件飲むとでも思ってるのか…?」
男はそう言いながら積木の頭にまた銃を置く。
「クッ…!!外道めが…なら…実力行使させて貰う!!!!」
そう言った風子は両手の平を広げる。
「イグル」男はまた竜人の少女の名を呼ぶ。
「《我、風竜の名は、全ての敵を射ぬく的となれ》行け!!朧月!!!!」
風子の放った風の弓は真っ先に黒ローブを着ている竜人の少女に襲い掛かる。
だが「んな!?」あっさりと避けられた。
「クッ!!ならばもう一度だ!!」そう言った風子は再び両手の平を前に持ってきた瞬間「ッ!!」風子のうなじにとんでもない衝撃が走る。
風子の後ろに立っていたのは黒ローブの少女だった。
「グハッ!!!!」そして風子はバタリと倒れ意識を失ってしまった。
「風……子…」それを見ていた紀は何も出来ずにただそれを見て、涙目になりながら両手で口を抑えるしかなかった。
「うう…う…蒼…さん…」紀は涙をポロポロと溢しながら蒼の名を呼んだ。
その瞬間だった。
「……泣かないで…紀さん…」
「ッ!?」紀の耳元で蒼の声が聞こえた。
「蒼…さん…!?」
紀は、蒼の声を聞いた瞬間、何故か涙は止まっていた。
「紀さん…頼みたいことがあるんだ…」
姿の見えない蒼の声が紀の耳元で流れる。
「蒼さん今何処なんですか…!?」
紀は黒ローブの男にバレない程度の声の音量で話す。
「その事は今はいい…紀さんにやって貰いたいことがあるんだ…」
蒼は真剣な声で言う。
「やって貰いたいこと……?」
紀は疑問を持ちながらもその話に耳を傾ける。
「あぁ…紀さんにしか出来ない事なんだ…この作戦には紀さんの力が必要なんだ」
「…………」紀は、蒼のその言葉に嬉しさを隠しきれなかった。
今まで、自分は何も出来なかった。
けど今は、蒼さんが私にしか出来ないと言ってくれた。
これ以上に私の存在を認めてくれた人は居なかった。
そんな蒼さんの言葉を断る理由なんて…今の私には…ない!!
「やります…!!」
紀は、今までになく、頼もしい返事をくれた。
「ありがとう…紀さん……」
蒼はしみじみとお礼を言う。
「それじゃあ…作戦開始だ…」