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ヒキコモリな炎竜と契約者(コントラクター)  作者: あだち りる
第四章「決闘の果てに」
21/43

20.フルエル=スノエッダ

さぁて…どう来るかな…

たぶん向こうは俺達の事を舐めきってるだろうし、正面から来ると思うんだけど…「茜、残り10秒だ、その間にBランクの竜式術の詠唱をしとけ、遠距離系の術で頼む、そして、俺が合図したら後ろにその術を打て」と、俺は茜に指示する。


「了解《我、竜の名は、遥か先の敵を射ぬく…」

茜は詠唱を続ける。


「10…9…8…」

蒼は数を数えて行く。


「5…4…3…2…」

そして、時が来た。


「…牙となれ》」


「今だ!!」


そして、蒼の合図と共に、茜の術が発動した。

茜は振り返り、術を「ッ!!」放つ。


どうだ…

Bランク術だ。

普通の術じゃ防ぎ切れまい。


術の詠唱文の通り無数の竜の牙のような鋭い斬撃が放たれた。

そして、廊下全体に斬撃の後が残る。


さぁどうかな…

当たればただじゃ済まないぞ…

「…………」

数秒の沈黙。


手応えはまったくない……か。


「ほう…読みはいいではないか」

前から来ると思っていた、シル=バレットとその契約竜は蒼達の後ろから姿を現した。


「そりゃどうも…」

クッソ…あっさりと避けやがって…

出来ればこの一撃で決めたかった所なのに…さすがクラス順位1位ってか?嫌になるぜ。


蒼の読みは完璧と言っていいほど正確だった、にも関わらず、シル=バレットは当たり前かの用に、音もなく、あっさりと避けたのだ。


「茜!いいか?良く聞け…」

と、蒼が改まった声で言う。


「な、何…?」

茜は察したように聞く。


「まぁわかってるとは思うんだけどね…」


蒼はシルがいる方向とは逆の方向に顔を向ける。


そして、蒼はクラウチングスタートの体制になる。


それを、まさか、と言わんばかりの目で見る茜。


「逃げるぞおぉぉぉぉお!!!」


「だよねえぇぇぇぇぇえ!!!」


蒼と茜は叫びながら全力で走る。


「な!?貴様等!!逃げるつもりか!?」


「当たり前だろうがぁぁあ!!!」

作戦も何も考えずにアドリブで1位様に勝てる訳ねぇだろうが!!!!


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

「はぁ…はぁ…はぁ…」

蒼と茜はとりあえず2階に上がり、2‐1の教室に身を潜めている。

ここまで一度も歩かずに走り抜けたせいで、息が荒くなる。


「追い掛けては…来ないよな…」

ふぅ…一安心だな…って、安心出来ねぇ!!どうせすぐにここだってバレる。

この間に、俺が今の茜の事を最大限に活かす作戦を考えなきゃならない…


「ん~…」

頭を抱える蒼。


てか何であの二人は追い掛けて来ないんだ?

俺と茜は足は早い方じゃないはずなのに…いや…もしかしてあの二人…

体力戦は苦手って事か?

それなら作戦のたてようはある。

けどこれは茜次第だな…


「茜!」


「何?」


「お前、ステルス系の術と遠距離系のBランク術、交互に使うとしたら合わせて何回使える?」


茜は蒼の質問に答える。

「ん~…50回くらいかな」


「そんなにか!?」


「うん!炎竜は他の竜人より魔力が倍はあるんだよ!」


「そんなキャラ設定があったとは…」

てことはこの作戦には向きすぎている。

魔力がそんだけありゃ行ける。


魔力とは、竜式術、属性術、を発動する時に必要な物で、竜人の体の中に潜んでいる。

そして、竜式を解放した場合には魔力の量は倍になる。


「茜、これから作戦を説明するぞ…」


「了解…」


蒼と茜はニヤリと笑った。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

「見つからんな…」

と、呟くシル。


「はぁ…仕方があるまい、フルエル」

シルは、溜め息を着きながら、自分の契約竜の名を呼ぶ。


「は、はい!」

フルエルはシルの言ってる事がわかったかのように詠唱をし始めた。


この少女、フルエル=スノエッダは、天才、と言う言葉ほどお似合いな物はなかったのだ。

少女は、竜人の中では1位2位を争うほど術の扱いに長けていたのだ。


「《我、竜の名は、空気を読み取る体となれ》」


何故なら、この少女


「《しては、この風に乗る竜の導きとならん》《我が竜の目は、目的の者を見る目とならんことを》」


術と術の組み合わせ、コネクト、が優位できるただ一人の少女なのだ。

フルエル=スノエッダの名を知る者は多いだろう。


「《ここに、示せ》詠唱終了」

フルエルが詠唱を終了した瞬間。


フルエルの目が竜のような鋭い目に変わる、そしてフルエルの目の前にプログラムのようなマップが現れる。


「発見しました、居場所は、なッ!!」

フルエルは動揺したのと同時に急に後ろを振り返り、シルの服を引っ張り後ろに下がらせる。


「どうしたフルエル!?」

シルも動揺を隠しきれず戸惑う。


「奴の居場所は上です!!」

フルエルは上を向く。


茜が突然とフルエルの目の前に現れ、Bランク術を放つ。


「クッ!!」フルエルは茜の攻撃を右腕でガードする。


「……」

廊下に数秒の静けさ。


「あっれ~…おっかしいな…今のは絶対右腕くらいは破壊できてたと思うんだけど…」


茜がフルエルの姿を見ると。


「無傷じゃん…」

茜が苦笑いをしながら言う。


「氷化……」

フルエルはそう呟く。


フルエルは右腕全体を氷化させる事により茜の術を防いだのだ。


氷化とは氷竜にだけが用いる事が出来る詠唱なしの術だ。

術と言うほどの物でもないが実戦向きな物だ、体の一部だけを氷のように硬く出来る。


「作戦1失敗…かな…んじゃま作戦2と行きますか」

茜はそう言いながら両手の平を広げる。


「《我、竜の名は、空気と混じり合う体とならん》」

茜がそう唱えた瞬間茜の姿は消えた。


「ステルス系の術ですね…シル、私のこの術じゃステルスを使ってる相手は見つけられません」

フルエルは冷静な分析をしながら言う。


「チッ!!なら契約者の方は何処にいる?!」

と、シルは舌打ちをしながらフルエルに問い掛ける。


「それなら探す手間もなく…今私達の目の前にいますよ」


「なんだと…?」


そして、フルエルとシルが前を向くと


「ッ…」

ニヤリと笑いながら蒼がそこに立っていた。


「貴様、舐めているのか?」

シルは眉にしわを寄せながら言う。


「舐めて何かいないさ…こっちは真剣だ」

そう、蒼は至って真剣だった。


これが、蒼の作戦なのだから。


ここからが…俺の出番だ。

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