おやつの時間
その日、俺は母にしこたま怒られて大号泣していた。
理由は兄弟喧嘩をしたからである。
当時、お菓子は俺と弟の2人で1袋のスナック菓子だった。
大体はうすしお味で、俺も弟も始めは仲良く食べているのだが、量が少なくなってくると徐々に険悪なムードになる。
少なくなったお菓子の取り合いが始まる訳ではなく、弟の食べ方に問題があるのだ。
俺は人間の体液的な物が苦手で、歯磨きの時に口の中に溜まった歯磨き粉でエズける器用な子供だった。そんな俺の隣で弟は菓子の袋の中を舐めるのだ。
まだ中身が残っていようとも、袋に付いた塩を、舐めるのだ!
「またそんな食べ方するやろ!」
「もうほとんど中身ないねんからえぇやんか!」
こうして始まる喧嘩は、お菓子のある日は毎回繰り広げられていたので、喧嘩して仲直りする所までがおやつの時間だった。
その日、いつもより早めに帰ってきた母。俺達はその時おやつの時間で、いつものように喧嘩をしていた。
母は食べ方の事で喧嘩をしているのではなく、お菓子の取り合いで喧嘩をしていると勘違いしたのだろう、いきなり俺の頭を叩き、
「年上やねんから我慢し!」
と、怒鳴った。
食べ方の事で喧嘩している、そう説明しようとする度「言い訳すんな」「年上の自覚ないんか?」「まだ言うか!?」と突っ込みをいれてくる母。
全く話を聞いてもらえない事に泣けて来た俺は、親父が帰ってくる時間になってもまだ泣き続けていた。
「何で泣いてんのや?」
親父の疑問に答えるのは母で、当然
「ケンとお菓子の取り合いしててな、我慢しろって言うたんや」
と、勘違いをそのまま告げた。
違うと言っているのに全く信じてもらえていないのが悔しくて、悲しかった。けど、もしかしたら親父なら話を聞いてくれるかも知れない。
そう僅かな望みを持った瞬間、
「泣くな!」
大声で怒鳴られ、俺は弁解する事を諦めた。そしてただ泣き止む事だけを考えた。
それから数日後、テーブルの上にはお菓子の袋が1つ。
「全部やるわ」
俺は弟に全てを譲る事を覚えたのだった。




