ペン
インクはあるのに全く書けなくなったボールペンを前に俺はどうしようかと悩んでいた。
アンケートを書いて出さなければならなかったのだが、筆記用具に入っていた唯一のボールペンのインクが出ないのだ。
買いに行くのも面倒だし、そもそもインクがあるのだから書ける筈だ!
こうして俺はどこかで聞いた事のあるようなインクが出なくなった時の豆知識を片っ端から試した。
ペン先を暖めたり、振り回したり。
しかし、一向にインクが出ない。
まだボールペンの構造を知らなかった俺は、出なくなったんならペン先を切ってしまえば良いのではないか?と思い付き、はさみやカッターナイフを駆使してどうにかペン先を切り取ろうとした。
ボトボト。
インクは出た。
出たが止まらない。
そして結局文字は書けない。
ボールペンをゴミ箱の中に入れ“なかった事”にして筆記用具を見るが、やはりペンはない。
ないなら作れば良い!
台所から割り箸を1本持ってきてカッターナイフで鉛筆のように削り、習字道具箱から出した墨汁を先端に付けると立派なペンになった。
この一連の行動を見ていた弟は、アンケートを書き終えた俺に不思議そうに声をかけてきた。
「鉛筆じゃアカンかったん?」
「消しゴムで消えへんモンで書けってさ」
「ふーん。じゃあ色鉛筆の黒でもえぇんちゃうの?」
はっ!




