パチンコ
日曜日、両親は2人で買い物に行くのが普通だった。
そして買い物に行く前に1時間ばかしパチンコ店に行く。
そんなデートに付き合わされる子供は、非常に暇である。
真ん中の穴に玉を入れて、数字が揃うと良い。細かいルールは分からずとも、それだけは早い段階で理解は出来ていたので、暇な待ち時間の間は俺もパチンコをしていた。
よし、玉の調達に行こう。
子供だから許されていた暴挙、床に転がっているパチンコ玉を弟と2人でかき集める。
「今日はいっぱい落ちてるなぁ」
と、2人で拾う横には店員が立っていたが、子供のやる事だと黙認してくれていた。
いっぱい落ちているとは言っても20程しかなかっただろう、1玉たりとも無駄にする事は出来ない。
ストップボタンを押しながらハンドルを回し、緊張しつつストップボタンから手を離す。
カコーン、カコーンとハンドルから確実に玉が出て行く振動がして、5発打った所で再びストップボタンを押す。
真ん中に入り、数字が回る。
「持って来たで~」
弟が追加で玉を持って来て、2人で回っているモニターの数字を眺めるが外れ、再び5発ずつ玉を出して行く。
後2発程でなくなるという時、モニターから今までに聞いた事のない音がして、数字が回り始めた。7のリーチが来たのだ。しかもかなり長々としたリーチ演出。
もしかしたら、もしかするかも知れない!当たったら何か買おう!
「お前ら何やってんねん」
負けてしまったのだろう、少々機嫌の悪い母が隣にやってくると、
「玉を拾って遊んでてん」
と、弟が笑顔で説明をする。そして近付いてくる店員。
「子供に打たせないで下さい」
こうして俺はリーチ途中だった台から引き摺り下ろされてしまった。当然、それから2度とパチンコデートには同行させてもらえなくなった。




